流星と宝石

「美しいでしょう」
宝石商の男が取り出したのは、たしかに美しい宝石だった。研磨のみでカットされていない裸石だ。漆黒の空に輝く金や銀の星々、そんな夜空をそのまま閉じこめたかのようだ。
「美しいだけじゃなく、ひとつ曰くがありましてね。石の中で輝く"星"が、ごくまれに流れ星のように動くことがあるというんです。その瞬間に願い事をすればどんな願い事も叶うとか」
セールストークにしては突飛な話だ。
渡されたルーペで石を眺めていると、深宇宙の星雲を目の当たりにしている気がしていつまでも飽きない。そのとき、"星"が本当に流れたように見えて、とっさに願い事をしていた。この石が欲しい、と。
「いかがですか? この世に二つとないものですよ」
購入を勧められたが断った。もし願いがほんとうに叶うなら、買わなくても自分のものになるはずだから。



ろきせの今日のお題は「流星」「宝石」
https://shindanmaker.com/981568

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?