日進月歩帝国賛歌【NYYプロスペクト】
来るMLB Draft 2021の2日前,Fangraphsが「Farm System Rankings」を更新。シーズン開幕前のランキングから直近の選手成績等を反映し,アップデートしたものになる。
NYYの順位は堂々の第7位。NYY贔屓臭いFangraphsだけにOverratedの感は否めないものの,2019年同時期のランキングでは第21位であったことに鑑みると大きく跳ねた印象だ。「未だにDeivi GarciaとClarke Schmidtが2,3位を張ってる雑魚傘下」「どうせFCLで数試合しか出てない18歳のガキを持ち上げてるだけ」と笑う方もいらっしゃるかと思うが,そんな雑音を押しのけるかのように今季のファームは活気に満ちている。中でも成長著しい有望株らを数人触れていく。
◎投手陣
先述のGarcia,Schmidtは不振と怪我で今季全くといっていいほど評価を伸ばせず。特にSchmidtはFangraphsの取材でも語ったように,変化球の回転数や変化方向を入念にデザインして2021年シーズンを迎えようとしていただけに,開幕前の怪我で筆者も大きく落胆した。
そんな中で評価を上げたのが昨冬のウィンターリーグで別人の様な投球を見せたLuis Medina。ヤンキース傘下に多い荒削りのパワーアーム右腕という印象だったが課題のコマンドが安定を見せると16.2イニングでERA0.54 32K/6BBという快投を披露した。今季High-AでもERA2.67 K/9=13.78の結果を残し,2Aへ昇格を果たした。その後1試合6四球2暴投の炎上などもあってスタッツは散々なもののK/9=13.26と昇格前とゾーン内の球は変わらずに通用していることが伺える。今年のFuturesGameにも出場を果たし,出場全選手の中でも最速となる101mphを計測するなどナ・リーグの有望株らを相手に2三振を奪った。フォーシームとカーブのコンビネーションはマイナーでも随一なだけに,冬に見せたような安定感を持続できるかが鍵。
奪三振で言えばGlenn Ottoの話題は避けて通れない。Medinaとは異なり既に25歳と円熟味を増して迎えた今季。65.1回を投げて103K/14BBで脅威のK/BB=7.36を記録。5月20日の試合では衝撃の「5.1回 14奪三振」の大快挙。190cm超の巨躯から95-6mphの直球とカーブが主体のピッチングに,スライダー系のボールも織り交ぜたことで効果的に空振りを奪えるスタイルへ。ERA3.17と比較してxFIP=2.47という数字も高水準。1年この成績を継続できれば来季中のMLB昇格もターゲットになるか。
最後に触れるは左腕のKen Waldichuk。ストレートにスライド系の動きを付けたことに加え,今春は緩いカーブの代わりに高速スライダーを修得したことで支配力を上げた。また,緩い球が絞られたことによる相乗効果として,バルカンチェンジが更なる武器となっている。WaldichukはHigh-Aにてシーズンを始めると30.2回を投じてK%=16.14 被打率.120 極めつけはERA0.00。早々に2A昇格を果たした。近年のNYY支配下では猛烈な左腕不足に悩まされており,Paxton獲得時に放出したJustus Sheffield以来の左腕有望株として期待したい。大卒投手だけにどこかの階級で躓くことなく昇格してくれるとチームにとっては心強い。
◎野手陣
2019年,up-and-downはあるもののアスリート型有望株として一定の評価を得ていたEstevan Florial(BAのプロスペクトランキングでは最高38位を記録)がHigh-Aで大コケすると他球団ファンの笑い者に。同年にIntFAにて記録的契約を結んで入団したJasson Dominguez以外の話題はあまり見受けられなくなった。
シャットアウトを挟んで迎えた2021年シーズン。コロナ禍以前の状況が嘘のように野手有望株が元気だ。最初に注目したいのが2020年にドラフト指名を受けたAustin Wells(C),Trevor Hauver(2B),同年ドラフト外で契約したElijah Dunham(OF)の3人だ。
Wellsはドラフト1位で指名された後,今春のキャンプにも招待されるなど打撃力の完成度をアピール。Low-Aで5月にデビューすると50試合で.278/.414/.492を記録。ここまで7HRにBB%=16.9 と長打力と選球眼は前評判どおり。捕手として35試合288イニング出場しているものの盗塁阻止率は.102(68-7)と猛威を振るっているだけに1B/RF/LF/DHに落ち着くと思われる。
ドラフト3位のHauverもLow-Aのデビュー戦から1試合2HR含む5試合連続本塁打と大爆発。その後は40試合ほど本塁打を記録できなかったものの,54試合で7HR .299/.460/.503 164wRC+と打撃力は傑出していることが分かる。K%=24.2と荒さは否めないがBB%=23.0とNYY傘下トップクラスの選球眼も有していることは確か。ドラフト時は外野手として入団したものの今シーズンは主に二塁手としてプレー。
同じくDunhamもLow-Aでシーズンを迎えると23試合で4HR OPS.941を記録するなど予想以上に適応。その後,WellsとHauverを差し置いてHigh-Aに昇格を果たすとそこでもOPS.907 146wRC+と文句無しの成績を収めている。Low-AではBB%=19.7,High-AではBB%=11.5と数字が大幅に動いているものの,同様にK%の下降と打率の上昇が見られていることからあまり心配はいらなそう。先ほどの二人とは違い,ここまで18盗塁を残すなど走れる外野手としての価値も上々か。
3名の共通点は左打者であること。MLBレベルの選手の中では元来左打者の層が薄かったヤンキース。Didiの移籍後は拍車がかかり,今ではGardnerとOdorがラインナップにのさばる始末。3名それぞれが異なるポジションで活躍しているだけに1年でも早くMLBに到達してほしいと願うばかりだ。
同じくヤンキースが選手起用にとりわけ頭を抱えているのが遊撃手だ。かつてはNYY傘下で堂々の№1プロスペクトとして君臨したGleyber Torresも,2019年に38HRを放ち新時代を予感させたのもつかの間,ここ2年は攻守ともに不振にあえぎ平均以下の成績に留まっている。
そんな曇り空を吹き飛ばす勢いで傘下の遊撃手たちが熱い争いを繰り広げている。
まずは2019年にドラフト2位指名のJosh Smith。今年はLow-Aで11試合に出場すると.333/.480/.795 6HRというぶっ飛んだパフォーマンス。この間に記録した225wRC+という数字は失禁モノ。すぐさまHigh-Aへ昇格を果たすも変わらずテイクオーバー。26試合で.344/.452/.625 189wRC+で規定に到達すればOPSもHigh-Aのトップに躍り出ると思われる。BAの記事によれば今シーズンに107mph台の打球速度を計測していることからも,ここまでの成績がマグレではないことを物語っている。
Smithが指名された2019年のドラフト1位であるAnthony Volpeも記録的なシーズンを送っている。若干20歳ながらも今季Low-Aにて.302/.455/.623 12HR 21SB 185wRC+を記録。一番の注目はBB%=19.8 K%=16.7という数字であり,ContactツールはNYY傘下屈指の域に。因みにMiLB内にて「15二塁打&15盗塁」の全てを満たしているのはVolpe含めてわずか7名だけであり,かつ10HR以上を記録してるのはVolpeのみ。先述のFlorialのような選手を無理矢理「将来の30-30候補!」とはやし立てていたのがアホらしくなるくらいの急成長である。このAllStarの最中にHigh-A昇格を果たしたとの一報もあり,今後はSmithとの定位置争いに期待がかかる。
「15二塁打&15盗塁」をクリアしている選手が7名という話しをしたが,その内のもう一人がNYY傘下で最も評価の高い遊撃手であるOswald Peraza。2016年のIntFAで入団を果たしたPerazaの武器は守備走塁であったが今季はHigh-Aの28試合にて5HR OPS.918の好成績を残し,早くも2Aに昇格を果たした。昇格後は.276/.344/.422とやや成績を落とすも,7月に入ってからは打率.317を残すなど今後間違いなく2Aクラスの投手へ順応していくと思われる。
その他,韓国の期待星Hoy-Jun-Park(2B)が3A階級トップのOPS1.070を記録すれば,2AではDiego Castillo(2B)がリーグトップのOPS.981 162wRC+の好成績を残すなど2B/SSを守る選手の活躍が止まらない。
○おわりに
今年もNYYのドラフト指名が巷をドギマギさせていますが,近年の指名選手がなんとか頑張っている様子をみると1%くらいは信じてみても良いかもしれませんね。僕は一切信じていませんが,活躍し始めた途端手のひらを返す準備をしています。
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