見出し画像

【NYY】Aaron HicksがDFA【Short】

時にヤンキースの選手であっても苛烈なブーイングを浴びせることで知られるNYの野球ファンでありますが,ここ数年,そのターゲットとされていた選手がいました。2019年開幕前に7年7000万ドルの長期契約を結んでいたAaron Hicksです。”やはり”というべきか,契約直後から怪我体質や守備指標の悪化が顕著に見られ始め,とても中堅手としての役割を望むことは出来ずにいました。
唯一の砦であった打撃においても,かつて27HRを放った長打力は鳴りを潜め,Hicksの代名詞であった出塁能力も急降下。
そして一昨日,残り2年4ヶ月の契約期間を残してHicksをDFAにするという決定が下されました。今回はこの件にフォーカスしていきます。

①在りし日のAaron Hicks

元々はミネソタ・ツインズのプロスペクトであったHicksは,マイナー時代から突出した出塁能力を見せており,2012年に2Aで残したOBP.384に加えて13本塁打32盗塁という成績は評価を大幅に上げることとなります。下地として強肩を武器にした中堅守備もあったことも大きいでしょうか。
一方で,MLBデビュー後にはBB%は堅調であったもののGame PowerやRunツールがなかなか発揮されず,花開くまであと一押しという若手選手という立場。そして2016年シーズンを迎える前には同じような立場であったJohn Ryan Murphy とのトレードによってヤンキース移籍が成立します。
2016年当時のヤンキースといえば,シーズンに見切りを付けると,高齢化に歯止めをかけるべく夏前に主力を放出し若手を確保。一方でGary Sanchezの衝撃的なデビューや,現在キャプテンとなっているAaron Judgeの昇格,優勝を支えたA-RODとTeixeiraの引退など,ヤンキースの歴史でみても小さくない転換期といえたでしょう。
そのチームの中核を担ったのは生え抜きGardnerでありましたが,安打製造機のCastro,遊撃の名手Gregorius,そしてHicksといった外様三人衆の活躍はなかなかにインパクトがありました。特にHicksでいえば105mphの捕殺で一躍有名になりましたよね。何を隠そう私も,当時のヤンキースの面々に惹かれてファンになった人間です。

翌2017年には故障もあったものの僅か88試合で15HR&51BBという打撃成績を残し,守備においてもDRS12という屈指の好成績を残してrWAR3.9を記録。Judgeの影に隠れていたものの,単純計算で年7.0WARを稼ぐことのできる選手に成長したことはヤンキースにとって嬉しい誤算でありました。
2018年は主力の故障が相次ぐ中,27HR-90BBといったチーム内トップの成績を残してrWAR4.4を稼ぐプライマリな活躍を見せました。Gregorius同様に2019年オフFAとなる予定であったものの,当時エースであったSeverinoと共に契約延長の提示が成され,Hicksは7年7000万ドルのエクステンションに合意することとなりました。

近年の不振や大ポカでバカにされがちなHicksですが,当時はリードオフに関してはリーグ最高の能力を持った逸材であり,「前年からの守備指標の悪化」を加味しても,年平均10MMという負担額はなかなかに評価できる契約とされていました。

契約が発表された日の助手ちゃんも,懐疑的とはいえそこそこ喜んでいた気がします。残念なことに,この評価が覆るには時間はかかりませんでした。

②別れまで

円満な7年間を始めるに当たって,最初のSTでまさかの負傷離脱。5月には復帰を果たしますが前年の活躍を取り戻すことができないままにシーズンを終えると,オフにトミー・ジョン手術を決行。この時点で相当焦げ臭くなっていましたが,幸い2020年シーズンはパンデミックの影響で開幕が7月までずれ込んだことによってHicksが無事復帰。スモールサンプルながらBB%でいえばアリーグトップとなる19.4%を記録して復調を匂わせます。

しかし不運は続くもので,2021年は5月に左手首の怪我を負ったことで早々にシーズン全休。エクステンションの3年目はわずか32試合の出場に終わってしまいました。
2022年は久々に大きな怪我を負うことはありませんでしたが,絶好調であったチームにおいては攻守で穴となっていた印象は否めませんでしたよね。HicksがイマイチであったことでBenintendi獲得に動かざるを得なかったわけですし。もちろんGalloが一番の原因ですがね。

そして今季,本人も予感はしていたでしょうが,遂にDFAという決断が下されました。恐らく彼を獲得する球団はいないと思うのでこのままFAとなるでしょうか。
なんにせよ,球団もHicks自身も辛い契約延長となったことは間違いありません。

③Hicksに対して

Hicksは好きだったか?と言われたらそりゃ好きな選手でしたよ。あれだけ四球がもぎ取れるスイッチヒッターで,クラッチなホームランを打ってきた歴史もありますし。2019年でいえばミネソタとの14-12ゲーム抜きには語れません。リアタイで発狂していたのを覚えています。Sanoに再逆転HRを浴びた後,某マイナーリーガーが2OUTから四球をもぎ取り,Hicksが逆転HR。直後にキューバ危機が同点に追いつかれて延長に突入するも,2点を勝ち越し。しかし10回裏に2死満塁とされるとKeplerの打球が左中間へ。誰もが逆転サヨナラと思いましたが,Hicksの華麗なダイビングによって試合終了。情緒ぶっとびましたわ。

あとは昨年のHOU戦で9回裏に放った同点3ランですよね。当時からブーイングの対象となっていたHicksでしたが,あの瞬間だけは誰もがHicksを讃えていましたよね。

この試合は当企画でNYY担当をされているKZillaさんがたまたま現地観戦をされていたのですが,本当に持っているな~としか言い様がないですよね。

もちろん長期契約に応えられなかったことは残念でなりませんでしたが,WAR換算でいえば年10MM程度の活躍は果たせた年もありますし,スケープゴートにされていた感は否めません。
少なくとも,彼がヤンキースにこれだけ長く在籍してくれたことに感謝しています。まだ年齢的にもリタイアには早いかと思うので,他の球団でもうひと踏ん張りしてほしいですね。お疲れ様でした。

絶対信じてないやつ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?