終電のがして新宿駅でホームレスの方々と夜明かしした話

ある寒い冬の日、渋谷で行われたトークイベントを観に行きました。そのあと主催者の方々の打ち上げに誘っていただき、女優の木内みどりさんや、ジャーナリストのおしどりマコさん、その他の素敵なみなさんと楽しく過ごしていたら、時間が遅くなってしまいました。「たいへんだ、新宿発の終電に乗れなくなっちゃう!」 急いで山手線に乗り、新宿へ。でもそのあとの終電にはギリギリ乗れませんでした。

さてどうしようか。
タクシー乗り場は長蛇の列で、寒い中を長時間並んで待ちたいとはまったく思えませんでした。
行列が短くなるまでちょっと散歩しようかなと思って歩き始めたとき、駅構内にホームレスの方たちが休んでいるのが目に入りました。

(画像出典:ファミリーマート http://www.family.co.jp/goods/omusubi/0410069.html_)
わたしはそのまま地上に出て、コンビニへ向かいました。
おにぎりとホッカイロを1万円分買いました。
新宿から自宅までのタクシー代とそう変わりません。
おにぎりとホッカイロが山ほど入った3つのレジ袋は、持ち手が指の内側に食い込んで痛い重さでした。

それを持って新宿駅の方向へ歩く間にも、ビルの前にダンボールで一人分の囲いを作って休んでいるホームレスの方が何人もいました。
そのダンボールの囲いの中に、おにぎりとホッカイロをそっと差し入れしながら歩きました。ときどき起きている方がいて、「おぅ、ありがとー!」と明るい声が返って来ました。「どういたしまして〜!」こちらも明るく返事を返しました。

さすが新宿、深夜でも通りは明るく、人通りもそこそこあります。
とあるビルの入口階段のところに、ひとりのホームレスの男性がダンボールの風除けもなしに腰掛けていました。
わたしはその方に「ここ座っていいですか?」と声をかけて「いいよ」とOKいただいたのでとなりに座り、ささやかな差し入れをして、しばらくおしゃべりしました。
そして「お話たのしかったです。ありがとう、駅に行きますね。」と言って立ち上がり、駅の地下構内へ行きました。

一応、帰宅しないと家族が心配するかもしれないな、と思って、上の息子(当時大学生)にiPadから「あのね、終電なくなっちゃったからホームレスのひととしゃべってる。始発で帰るね。」と連絡すると、すぐに息子から、「ママらしいね、気をつけて。」と返信が来ました。

駅構内のホームレスの方の人数はさっきよりも増えているように見えました。
これは終電から始発までの短い間だけは乗客がいないので、路上生活者の方が短い睡眠を取るために集まって来るからです。

駅構内で休んでいる方々の枕元にもおにぎりとホッカイロをそっと置いて回って、すべてなくなったとき、いったんまた地上のバス乗り場付近に上がってみました。
するとそこに、スーツ姿にリュックサックを背負った初老の男性がいて、何をするでもなく、時間をつぶしているように見えました。
目が合ったので、「こんばんは」と挨拶し、少し雑談しました。
「寒いねー。何してるの?」
「終電なくなっちゃって。ははは。」
「そうなんだー。ははは。」
「これからどこかへ行くんですか?」
「んー、いや、まぁ、朝まで時間潰してるんだよ。」
「新宿駅、ホームレスの方たくさんいらっしゃるんですね。」
「うん、そうだね、いつも50人くらいいるよ。」
その方もホームレスのようでした。お名前はワタナベさん。

手持ちの物資は底をついていたので、訊いてみました。
「お腹すいたねー、朝ごはん買いに行きましょう!」
ふたりでコンビニに一緒に行って、「ワタナベさん、何食べたい?」と訊いたらワタナベさんはキリンラガー500ml缶とチーズ鱈を選びました。
「ひとつでいいの?明日の分は?」と言ってもうひとつずつ取ってもらい、それだけじゃ栄養足りないよねと考えておにぎりとサンドイッチも一緒にカゴに入れてわたしがお金払わせてもらってコンビニを出ました。
ワタナベさんが「ここ座れるところあるよー」とスタスタ進んだ先に、2人掛けのベンチがあり、そこに並んで座って早い朝ごはんを食べながら、ワタナベさんの故郷の町のお話を聞きつつ、始発を待ったのでした。
途中からまったく眠気も飛んで、会話を楽しみました。
そして、駅に朝がやってきて、駅員さんが改札を開けました。
ワタナベさんとは「元気でねー」とハグして別れ、始発で家に帰りました。

「道で寝てると声かけてきて千円札くれたりするのは外国人の観光客の人が多いんだよ。日本人はそういうことあんまりしないね。」
というワタナベさんの言葉は印象的でした。

わたしがJRの駅の設計担当なら、冬はどこか決まった場所(壁ぎわとか)に床暖入れてあげたいな、と思いました。ホームレスで駅で休む人たちのためにも、始発待ちの人たちのためにも。

ぜひ、ホームレスのひとには親切にしてあげてください。
お金に余裕があったらお金をあげたり、ハンバーガーやお弁当をひとつ余分に買ってそれを差し上げて、横に座っておしゃべりしたりするのもいいと思います。
誰だって同じ条件が重なればホームレスになる可能性があるのです。
当たり前ですが、ホームレスのひとはわたしたちと同じ人間です。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
よい1日をおすごしください!

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