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あのたび -死体博物館とウイイレ屋-

 死体博物館。がカオサン通りから少し歩いて渡し船で川を越えたところにあると聞いていた。死刑囚の実際の体が薬品に漬けられて展示されているという。建物の中は薄暗く人は少ない。バンコクには他にも見るべきものが多くあるのにココにわざわざ来るのは、暇なバックパッカーくらいだ。

 でっかい牛乳瓶のような中に液体につけられた人体の体が漬けられている。中には、輪切りや縦切りのようにされ中の内臓までもが見えるようにしているのもある。囚人だけかとおもいきや赤ん坊の標本まで陳列されている。ぱっと見、本物には見えない。が正視に耐えないのですぐに出る。

 ちなみに死体博物館というのは旅人による異名で、正式にはシリアート病院内の法医学博物館という名称である。興味がある御仁は行ってみるといい。そのあと食欲がなくなるのは否めない。

 カオサンでは、メイン通りから一本路地を入って何回か曲がった薄暗い宿に泊まった。狭く暑くエアコンはなく扇風機だけまわっていて2段ベッドが並んでいるドミトリーだ。2003年当時200B(≒600円)くらいだったと思う。

 怪しげな宿には怪しげな方たちが集うもので、ドラッグパーティに来ないかと誘われる。日焼けして髭面のボクがそういった人物に見えたからのようだ。マリファナよりも高級なネパールの王室御用達のものらしいドラッグ。胃の中に飲み込んでタイに持ち込んだらしい。パーティの部屋内は煙たく香りだけでもむせるほど。国籍はまばらな明らかな怪しそうな中東系の人や黒人なんかもいる。さすがに旅初心者の自分にはハードルが高すぎるパーティだ。

 すみませんと辞退して帰る。怖い世界だ。もちろん2003年当時は違法で警察にみつかれば牢屋行きはまぬがれない。カオサンでは毎晩のように事件の噂が流れてくる。イラン人が宿に忍びこんで強盗を働いたとかそういった話だ。ボクはココに長居はできそうもない。

 他にバンコクをバスで周ったり歩いたりして目にしたのは、ウイイレ屋だ。ちいさな部屋にテレビとプレステ2を置き、なぜか若者がみんなウイイレ(サッカーゲーム)をプレイしているのだ。私設のゲームセンターのようなものだろうか。ちょうどこの旅行の前年の2002年に日韓共催のサッカーワールドカップがありアジアでもサッカーが盛り上がっていたからだろう。まだネットはほとんど通じていない時代の話だ。

 サイアムスクエアの伊勢丹にも行く。日本のマンガはタイ語に翻訳されて売られているが、日本の価格の約2倍もする。誰が買うのだろうか。この伊勢丹も2020年に閉店したようだ。

 それから古本屋でロンリープラネットのインドネシア版を探す。インドネシアを旅行するなら日本のガイドブックは役に立たない、ロンプラを買うべきだとミツオさんにアドバイスされたからだ。不要になった本を売り、替わりに買ったはいいが分厚い。約1000ページもある。全部英語。旅の隙間の時間つぶしにポケット辞書で訳しながら読むのもよいだろう。おやじにはまけてもらえず750B(≒2300円)!高い。だけど2ヶ月近く船だけでインドネシアを横断するには非常に役に立った。

 3泊ほどして大都会のバンコクから逃げるようにカンチャナブリへ行くことにした。

タイルート

(つづく)


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