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あのたび -諸子百家とビリヤード台-

 前日東ティモールのディリにたどり着き1泊後、朝起きてフランスパン風4個+たっぷり紅茶で1$は良し。ゲストハウスには諸子百家という日本語の本が置いてあった。老師や孔子の言葉を解説した本だ。驚くことにこの本の出版年が1961年。およそ40年前の日本の本がこんな所に。自分の文庫と交換させてもらった。

 旅行中暇つぶしで本を何冊か持っていることはある。読み終わった本は宿に置いてある本と交換してまた新しいものをもっていくという文化が昔はあった。そうして読んだことが無い新しい本と出会うのも楽しみだった。まさか東ティモールでも日本語の本があるとは!

 独立して1年ちょいのこの国にも日本大使館があると聞き歩いていくが遠い。新聞等の情報を期待するが無いとのこと。

 街から東へ行き海沿いに約20メートルの巨大なキリスト像がある。これがこの国の唯一の見どころである。それ以外に何もない。帰る道すがら、小さなコンビニ風商店があった。飲み物やお菓子などが並んでいた。この独立直後の何もない国で、おそらく輸入品であろう品物が陳列されていることが驚き。店自体がまだ無いのだ。働いているのは中国系の人だった。さすが中華ネットワーク。世界のどんなところでも商売をするんだ。トマトジュース50¢。パン2個50¢。

 昼はリヤカーのような車を押している少女からナシ25¢とピサンゴレン2個10¢。衣がおおすぎて中身がほぼ無い。おそらく農業で食料を生産するのもままならない状態なのだろう。

 翌日、日本から東ティモール研究が目的という学生が訪れる。これで会った日本人は3人目だ。ディリだけ見て去るというのもどうかと思い、ミクロレットというバンに乗り2$で東へ100キロメートルほどのバウカウ(Baucau)という町へ。ここからは本当に情報が全く無い。

 高台の店でナシアヤム1$。食べ物はインドネシアと変わらないようだ。違いは米よりもパンをよく見るくらい。営業していなそうなキレイな建物で宿泊代を聞くと30$だと。とても無理だなと悩んでいると親切な青年がただでバイクでホテル前まで連れて行ってくれた。しかしそのホテルポロロはさらに高い55$

 誰がこの国のこんな高いホテルに泊まるんだよ!インドネシアではだいたい1泊3$~5$くらいの所に泊まっていたというのに。

 ふと考える。ここはまだ国連軍が治安維持のため駐屯している国だ。おそらくその国連職員さんの偉い人が訪れたときに泊まるホテルなんだろうな、と。

 高いホテルの職員に安いホテルロロサエを紹介されて向かうが10$。さらに5$のスディマリアがあると聞き、歩き回るが廃墟病院しか見つからなかった。もういいかこの廃墟の中で寝かせてもらおうかなと悩んで座っていると、声をかけられた。

 そのおじさんは親切にも、うちに泊まれノープロブレムだと言う。

 夕方と夜ごはん2食いただき、ドラム缶のような水瓶のそばで体まで洗わせてもらった。なぜか家にはビリヤード台があり、その脇の小さなベッドに寝かせてもらえるのかなと思うと、隣りにある豪華ホテル並みの部屋を提供してくれてふかふかのベッドで寝てよいという。

 悪い人ではないらしい。むしろ気前が良すぎるくらいのおじさんだ。翌日何ドル請求されるか怖いなと思ったがこれだけのもてなしにはいくら払ってもよいだろう。

 ちなみにビリヤード台は700$したという。その金はどこから来たというのだろう。おそらく食べ物にも困るこの国の生活水準で娯楽に当てる余裕があるのだろうか…?

東ティモールルート

(つづく)


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