見出し画像

あのたび -旅の洗濯-

 長期旅行者がめんどくさいと感じることのナンバー1は、洗濯だ。

 長旅だとリュックに荷物を入れて歩くことが多いので衣類は極力少なくしたい。
 ボクの場合はパンツ3枚、Tシャツ3枚、長袖1枚と真っ赤なGパン1本(≒個性を出そうとした)とタオル2枚くらい。シェムリアップのタケオゲストハウスの玄関で靴を脱ぎっぱなしにしていたら失くなってしまったので靴下は不要になって捨てた。東南アジアは毎日暑いのでサンダルで十分だった。

 着替えがこれだけだと3日に一度は洗濯しなければならなくなる。が日本と違って清潔天国ではないし周りの人も気にしない。ので何日か同じパンツやTシャツでも気にならなくなる。

 それでも埃や砂にまみれ汗もかくので洗濯しないといけないことはやってくる。もちろん日本のようなボタンを押して終わりなんていう自動洗濯機は2003年当時のアジアにはない。都市ならばコインランドリーはあったかもしれないが利用したことはない。あとは宿かその近くにあるランドリーサービスを使うことだ。1キロ1$とかで衣類を預けると翌日洗って乾かして返してくれる。

 その裏側をのぞくと、結局は洗濯おばちゃんがたらいと洗濯板を使ってゴシゴシと手で洗ってくれているだけなのだ。まるで昭和の世界だ。気候が良いので一晩干しておけば乾くのだろう。

 それだったらと結局自分で洗うことにした。宿でシャワーを浴びるときに脱いだパンツとシャツを石鹸で一緒にゴシゴシと洗う。洗剤も荷物になるので持ち歩いていない。坊主頭にしているのでシャンプーもいらない。洗うまではいいが脱水ができない。雑巾のように絞ってもなかなか水気が取れず、干しても乾かすのに時間がかかる。そろそろ次の町へ移動したいのに洗濯ものが乾かなければそうもいかない。それがめんどくさいのだ。

 安宿はまあ干す所はないので、部屋にビニール紐を張って干す。エアコンがない宿でもだいたい天井にファンが回っているので、一晩干しておけばたいていは乾く。

 困ったのはGパンだ。着ていて暑いし洗いにくいし重い。どんだけすすいでも泥水が出てくる。旅にGパンはおすすめしない。

 ここビエンチャンのRDゲストハウスの良い所は、3階建ての建物に屋上があり干すこともできる所。

 日本人は、早く乾いてほしいのでめっちゃ絞って干すのだが、韓国人はまったくしぼらずそのまま干している! びちゃびちゃと洗濯物から水が垂れまくっている。これが文化の違いか。それでも乾くのが東南アジアの気候の良い所だ。

 男子の場合はそんなんでいいのだけど、女子は服や下着の量が増えるしひと目につく所に干すわけにもいかないから大変そうだよなと思う。

 ある日本人の女の子はオーストラリアでバスタオルを干していたら盗まれたという。女性モノ目当ての泥棒ではなくただ単にタオルが欲しかっただけらしい。犯人は同じ宿に泊まる外国人だった。翌日堂々とそのタオルを使用して堂々と干していた。ので女性は取り返した。
 すると、なぜ盗むんだ? と逆に詰め寄られた。自分のモノだから取り返しただけだと答えた。相手はオレが使っていたんだからオレのものだと譲らない。そんなバカなことはあるか私のタオルじゃない? と他の人に相談したところ、
 「それは君が悪い。例えどんな状況があろうとも君が盗んだという事実には変わらない」のだという。目には目を歯には歯をという理念は通らない。あまりにも悔しいのでそのタオルは結局捨てたという。

 日本では自分のモノはどうあろうと自分のモノだ。取り返すのは正当な行為として認められる。オーストラリアでは盗むという行為そのものを見て非難されるということか、それとも盗まれるような危機感のない人が悪いというのか、あるいは主張したものが勝ちなのだろうか。それが価値観の違いというものだろうか。

 自分が女だったら一人旅には出ていなかっただろう。

ラオスルート

(つづく)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?