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D&D5版 二次創作のしおり


免責事項

筆者はなるべく事実に基づいてこの記事を書いていますが、弁護士でも司法書士でもありません。運用に際して問題が発生した場合、責任を負うことはできません。

いろんな二次創作の方法

D&Dの二次創作にはいくつかの方法があります。無料のものもあれば、有料でもいいものもありますので、目的に応じて使い分けることができます。この記事では、適切な二次創作の種類とその利用方法について詳しく説明していきます。

この記事を読み終えた頃には君も二次創作ができるでしょう!

ファン・コンテンツ・ポリシー(無償配布・限定収益可)

一番広まっている二次創作方法です。WotCの有している知的財産をそのまま自分の作品に組み込んで公開できます。以下の規約に従っている限り、WotC社(D&Dに限らず、MTG等のブランドも対象)のあらゆる知的財産を使用できます。

規約

  • 無料で配布している。
    お金を求めるだけではなく、登録、購読、ログインを求める場所もNG。

  • 以下の文またはそれに類似したものを置く。
    ◯◯はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。©Wizards of the Coast LLC.

  • 他社やWotCのイメージを傷つけない。
    わかりにくいですが、誹謗中傷の目的で使うのはもちろんNG。また、「権利的に傷つける行為」であるロゴの使用やWotCとは関係ないゲームを紛れ込ませることです。(例:ソード・ワールドのD&Dサプリを出す等)
    ただし、ロゴの使用は時事ネタや報道という体であればポリシーとは関係ない日本の法律的にOKになる場合があります。

  • 収益化や投げ銭はOK
    例えば、YoutubeやTwitchのパートナー(収益化)で収入を得るのはOK。販売サイトで「投げ銭用」を展示するのもOK。お金を支払うのが完全に任意であれば大丈夫です。

使用例

  • オリジナルシナリオを作成して、D&D Beyondからモンスター画像を同封して配布した。

  • D&Dの配信で、D&Dの公式モンスター画像を使用した。

  • 映画「アウトローたちの誇り」のキャラクターのファンアートを描いてX(旧Twitter)に投稿した。

  • オリジナルのクラスを作成して、「ザナサーの百科全書」にある呪文「ゼファー・ストライク」を取得呪文として記載し、配布した。

例外

ファン・コンテンツ・ポリシーに明記されていないにも関わらず、ポリシーの一部として一般的に利用されているものもあります。グレーというより、「みんなが堂々とやってるけど、WotCも特に取り締まってないからええやろ」の精神なので規模が大きい場合は適切な法律の専門家を訪ねてください。

  • ログインが必要なTwitterやDiscordで配布する。
    おそらくNGとしたい対象が有料のブログやサイトであり、一般的なSNSはログインやアカウント作成が必要であっても見逃されています。(ここを不可としたらWebの構造上どこにも配布できなくなる)

  • ダンジョン・マスターとして、有償でセッションを回す。

  • ゲームショップの店員としてD&Dのセッションを提供する。

  • コンベンションを開いて、入場料を受け取る。

  • 同人誌即売会等でD&Dのオリジナルシナリオ、グッズ等を販売する。

注意事項

ファン・コンテンツ・ポリシーを使用すれば、誰でも作者に報告無く、自由にそのコンテンツを使用して良いことになります。
ただし、作者人格権と著作権は存在します。ファン・コンテンツ・ポリシーであっても、以下のことはNGです。

  • コンテンツをコピーして自作発言をする。

  • コンテンツを使って作者の名誉を傷つける。

提示する必要は無いのだけれども「この人の物を同封しています」と開示するのが海外のファン・コンテンツではトラブルを避ける上での一般的な礼儀となっています。

System Reference Document(有償可、表記制限有)

わかりやすく説明すると、D&Dのシステムの根幹となる、能力値、ダイスの判定方法、セーヴィング・スローのルール、呪文の発動、クラス、サブクラス、特技、背景等など……そのシステムを形作る骨格のみを配布しているものです。
これをSystem Reference Document(システム参照ドキュメント=SRD)と呼びます。なぜこれが生まれたのか等は最後に紹介する動画を御覧ください。
いずれにせよ、これの中身を参照し・派生させ、オリジナル製品を販売すれば有償で自由に売る事ができます。

現時点では2つの種類があります。

Open Gaming License版=OGL
https://media.wizards.com/2016/downloads/DND/SRD-OGL_V5.1.pdf

Creative Commons版=CC
https://media.wizards.com/2023/downloads/dnd/SRD_CC_v5.1.pdf

Open Gaming License版の規約

OGL版のSRDには1~2ページ目にOGLというものがついています。このOGLついていますは規約に従っている限り、このSRDを使って良いよを少し法律混じりの言葉で書いてます。

以下は大雑把に1~2ページの要約です。

  • このライセンスはこのまま使用すること
    勝手に追記したり自作発言しては行けない。

  • 使ったらこのライセンスに同意したものとみなす

  • ライセンスに準じている限り、君の作品は君のもの
    WotCが勝手に作品を取り上げることはできないし、WotCにロイヤリティを支払う必要は無い。

  • 君がこのライセンスで出版するものは、君のオリジナルのものか、許可をもって出版していなければならない
    画像素材などを入れた場合、ちゃんと入れて良い規約のものを使う必要があるし、別途素材ごとの規約も守らないと行けない。

  • 2ページ目のCOPYRIGHT NOTICEにあるように、自分の著作権文を書く必要がる。
    例:「これは◯◯が権利を所有ものである~」
    ◯◯には自分の会社名などが入る。

  • 我々(D&D)の固有ブランドは使えない。リストは1ページめに列挙されている。
    D&D、Mind Flayer、Red Wizard of Thay等の固有名詞・ブランドは使えない。

  • 君の出版物の中身で他人が使用して良い場所を明記する。
    例えば、OGL作品である「クトゥルフの呼び声」では「商標、登録商標、台詞、プロット、ストーリー、場所、キャラクター、アート、およびトレードドレス」以外は全てOGL品となっています。つまり、モンスターデータ、クラス、特技などの文面は自分のOGL作品で引用が可能になります。

Open Gaming License版の使用例

モンスターデータブロックの書き方を参照して、独自のモンスターデータ集を作った Tome of Beastsシリーズ。

D&Dのシステムそのものを拡張して、ラヴクラフト風のモンスター、データ、狂気ルールなどのフレーバーを大量に追加した「クトゥルフの呼び声TRPG」(sandy petersen's cthulhu mythos)

上記の規約に則って、「データ部分」のみであれば引用可能、さらに、それを自分で訳したり配布(有償・無償可)しても良いです。

Creative Commons版の規約

Creative Commonsとは、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません。」という意思表示をするためのツールです。(CCの説明文より引用)
SRDも騒動を経て、ユーザの強い希望によりCreative Commons版がリリースされました。

規約はたったの二つです。

  • 以下の文章またはそれに類似したものを必ず提示する。

This work includes material taken from the System Reference Document 5.1 (“SRD 5.1”) by Wizards of
the Coast LLC and available at https://dnd.wizards.com/resources/systems-reference-document. The
SRD 5.1 is licensed under the Creative Commons Attribution 4.0 International License available at
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/legalcode.
  • 上記以外の表記でWotCまたはD&Dについて作品内に提示しないこと。
    これは「ダンジョンズ&ドラゴンズで遊べるものだぜ!」と作品内に入れることはできません。

「D&D」使っちゃダメなの…?

OGLもCCも共通して、作品内にD&Dの商標や固有名詞を含めることができないです。どこまでが固有名詞なのかはOGL版では1ページ目に明記されています。CC版ではそれが無いので「商標」や「著作権」があればアウト、なければセーフです。

頭がフクロウで体が熊のアウルベアは高確率でアウトになるかも知れないが、頭が熊で体がフクロウのアウルベアは言い逃れができます。中央に大きな目、完全に浮遊していて、目の触手が生えている目玉モンスターをビホルダーって言ったらアウトです。でも、手足を生やしてビホルダーとすればまだ言い逃れができます。ちゃんと弁護士と相談してね。

D&Dが使えないとどうやって配布するの?

アメリカではD&Dが人気ありすぎて「第5版」って言えば誰もがD&D5版のことだってわかります。なので、OGLやCC製品は「第5版対応です!」とだけ書いて、後はユーザが察する状態です。

日本風に言うと「ダンドラ」とかが一番近いかも知れませんね。ローマ字だと「DnD」が使えます。ユーザげ明記するのはダメだけど、ショップ側が「D&Dタグ」で検索させるのは現時点では問題になっていません。

ただし、OGLやCCは英語を想定しているので、日本語ではどこまでが適用されるかは実例が無いです。例えば、カタカナの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」は日本で商標登録されているので、カタカナだからセーフというわけでも無いです。

ショップや作品内でD&Dとして提示はできないけど、「この商品を使ってD&D遊ぼうぜ!」は普通にできます。また、作者とは関係ない人が「これD&Dで使えるね!」も問題になったことは無いです。

三次ライセンスは自分で決めて良い

いずれを使うにせよ、ライセンスに従ってさえいれば、他人にどこまで開示し、どのように配布・販売しようが勝手です。

10万円で売ります!
逆立ちができる人のみ利用可能!
両右手の男専用!

など、自由にして良いです。(過激な例ですが、要はそれ以降の配布方法は自分で決める必要があります)

このときに、日本市場で配布するお勧めの場所はBoothとDLSiteです。

もちろん、コミケやゲーム・マーケットで販売してもOKです。商業を目指すのであればこれが一番早いです。

Dungeon Master's Guild(制限少、ロイヤリティ有)

いわゆる、海外のBoothみたいなサイトが、D&Dの販売場所をおいて、ついでに特別なライセンスで販売して良いところです。これがDungeon Master's Guild=DMsGuildです。

こちらでアカウント登録をして、商品を追加すれば特別なライセンスで販売が可能です。

DMsGuildの規約

規約が二つあります。DMsGuild用のD&D製品を売るための規約と、統括会社となっているDriveThruRPG(One Book Shelf社)の規約。

DMsGuildの規約

  • D&D公式設定の固有名詞が使える。
    上のOGLで使えなかったものが全部使える。マインド・フレイヤーにビホルダーに自由に出す事ができる。

  • ショップが「D&D5版用」としてピックアップしてくれる

  • 将来の公式コンテンツになるチャンス!
    (あまり行使された例は無い)

  • 売上の50%を持っていかれる。
    厳密には、販売する人が設定した価格の50%をロイヤリティとして販売人に渡す方式です。

DriveThruRPGの規約
長すぎるので、一番注意が必要な二つだけをおいていきます。

  • 一度ここで登録した商品を、別のショップに登録する場合は数日以内に行わないと行けない。
    例:D&Dの固有名詞を使ったDMsGuild版と、それらを無くしたBooth版を出したい場合は同時公開が好ましいです。

  • 同じ商品を別のところで安く売っては行けない。
    上記と同じで、Booth版を出す場合は、DMsGuild版より安く売ることはできません。

D&D Beyond(無償配布のみ)

D&Dの電子書籍を販売しているBeyondでは、ユーザがオリジナルデータを投稿できます。ここに出したデータは一般公開され、他のユーザがコメントしたり、評価できます。

https://www.dndbeyond.com/

こちらの動画で取り上げています。

扱いとしてはファン・コンテンツ・ポリシーの置き場所です。将来的にはユーザがDMsGuildと同じレベルでシナリオなどをも出せるようになる計画があるようなので、慣れておくと良いかも知れません。

結局どれが良いの?

目的によります。以下にいくつかのケースを紹介します。

新規の日本ユーザをターゲットにしたい

  1. ファン・コンテンツ・ポリシーを用いて、BoothやDLSiteで無償配布する。その際に、投げ銭版を置く。

  2. 頑張ってCreative Commons対応にして、「ダンドラ」タグでBoothやDLSiteで配布する。

既存のD&Dファンをターゲットにしたい

  1. 売上を気にしない場合はDMsGuild一択です。UIが英語なので新規ユーザは遠ざかりますが、古くからD&Dを遊んでいる人であれば英語の抵抗が無いでしょう。

  2. 売上を気にするのであれば、やはり頑張ってCreative Commons対応にして、「ダンドラ」タグでBoothやDLSiteで配布する。

そんなことより、君の考えを聞きたい

筆者の場合は自分の作品を知ってもらいたいのでファン・コンテンツ・ポリシーで配布していることが多いです。「人が実際に使えるもの」を目指しているので、購入して思ったものとは違った……となってほしくないからこちらがメインです。
ショップはCoCなどで一番親しみがあるBoothを使っています、これからD&Dを遊んでいく初心者をターゲットにしているからです。
気になる場合はこちらをサンプルケースとして参考にしてください。

最後に

見ての通り、ファン・コンテンツ・ポリシー以外はだいぶドロドロで分かりづらい状態です。気になる点がありましたらコメントで教えてください、適宜修正します。筆者もここで書いたことを全部できているとは限りませんので、ご容赦いただけると幸いです。

ちょっと古いですが上の内容を図解した配信をぜひ御覧ください。

なぜOGLがCCに別れたのかの経緯を追いたい方はこちらのシリーズがお勧めです。

以上です!この記事が役に立ちましたらぜひチャンネル登録やフォローをお願いします!

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