D&D2024年版 「グレイホーク」の世界
こちらは、10月18日に配信された「Greyhawk | 2024 Dungeon Master's Guide | D&D」の内容を日本語でまとめたものです。必要な解説も中に交えて説明するので、初心者も読みやすいです。
キャンペーン用の世界設定とは?
今回の動画で紹介されるのは、長期のセッションを遊ぶための設定・世界観の一つである「グレイホーク」です。2024年版のダンジョン・マスターズ・ガイドに含まれていて、これから広大な世界でD&Dを遊びたい人のための情報源となります。
D&Dを長く遊んでいる人であれば既にご存知の世界ですが、D&Dを初めたばかりの人であればなぜこれが動画に取り上げるほどの重大ニュースかはピンとこないと思います……ので簡単にまとめます。
D&Dは元来、決まったシナリオではなく、プレイグループのキャラクターに合わせたストーリーを作りながら遊ぶのが一つの大きなプレイスタイルです。(いまの日本の主流とは全くの真逆)
公式シナリオでも意図的に創作的な「穴」が多く残されていて、DMとPLが一緒に作り上げていきます。
DMが全部作ると大変なので、ネタとマップを多く用意してくれるのがこの2024年版DMGに含まれる「グレイホーク」。最近クトゥルフ神話TRPGにでてきた「七伏市」のように、様々な人達が独自のシナリオを繰り広げるための拠点となっています。
以下本文です!
今回は、ダンジョンマスターズガイドに収録されている「グレイホーク」について話そう。これはD&Dで最初に作られたキャンペーン設定だ。D&Dの50周年にあたり、このDMGには懐かしい要素が散りばめられているが、その中でも最大の見どころがグレイホークの設定だ。
2024年版のDMGを考案したとき、キャンペーン設定を入れるべきだという意見が出た。
これまでDMGにキャンペーン設定を入れたことはなかったので、抽象的な説明よりも実際の例を示す方がいいと感じた。
D&Dの核心を押さえつつ短くまとめられるものとして、グレイホークが最適だと思った。
グレイホークは長い間公式で取り扱いされておらず、新しいプレイヤーたちにとってはまだ触れる機会がなかった。グレイホークは、キャンペーン設定をどう作るかをベテランの人々に教えてくれた最初の設定でもある。だから、自分で作るキャンペーンについて学ぶための一例として、この設定をDMGに含めるのは理にかなっている。
この設定は、D&Dの創設者の一人であるゲイリー・ガイギャックスが1970年代に自分のホームキャンペーンのために作ったもので、1980年に初めて製品としてリリースされた。当時の製品は薄いフォルダーに32ページの本とポスターサイズの地図が入っていた。現在の大規模なキャンペーン設定に比べると、非常にシンプルなところが魅力的だった。
グレイホークの魅力
詳細に縛られず、DMが自由に世界を作り上げる余地を提供する。
地図と場所の名前が与えられ、簡単な説明のみが付随している。
ウォーゲーム好きのために軍隊の数や武器の情報も含まれているが、必須ではない。
我々は、このシンプルさを「DMがキャンペーン(長期卓)を作る方法」として取り入れた。
まずキャラクターが冒険を始める場所として、グレイホークの街やその周辺地域に少しだけ詳細を加えている。
第4章のサンプルアドベンチャー(シナリオ)も、街の外での冒険が進行する形式になっている。
街から遠ざかるほど、詳細は曖昧になるが、各自が創意を働かせるにはそれがちょうどよいバランスだ。
地図の更新
さらに、グレイホークの地図を更新する機会があったのも嬉しかった。元の地図に忠実でありつつ、少し手を加えている。
また、グレイホークの街を「キャンペーンの拠点」として紹介している。これまでDMGではキャンペーンの拠点をしっかりと提示したことがなかったが、今回は街の地図や、魔法のアイテム屋、図書館、酒場などの場所についての説明を含めている。
今回のキャンペーン設定は、50年前のグレイホークを基にしているけど、現代のD&Dプレイヤーにも合うようにリメイクしている。NPCの多様性を反映させつつ、すべてのD&Dキャンペーンに共鳴するような対立やテーマを取り入れて、バランスを保ちつつ忠実に再現している。
キャラクター背景を活かす方法
街の各場所に、キャラクターの背景と関連するフック(シナリオの導入)を設定している。
たとえば、「兵士」の背景を持つキャラクターは、グレイホークの守備隊に所属していたという設定が簡単に作れる。
DMはキャラクターと街を結びつけ、背景をキャンペーンにどう取り入れるかを考えやすくなっている。
グレイホークの設定
ダンジョン・マスターズ・ガイド全体がグレイホークの設定というわけではないが、多くの詳細が含まれている。
街の各地区に関する情報、アドベンチャーフック、深い歴史的な背景などがしっかりと盛り込まれている。
「Unearthed Arcana(魔法道具の店)」の存在理由についても触れており、モリー(Morley)の話が登場する。
*モリーは1980年代の子供向けプロモーション商品に登場した魔法使いで、Unearthed Arcanaはモリーが営んでいる店です。後にUnearthed ArcanaはD&D公式のルールのプレイテストを行う時の名称として採用されています。
新旧プレイヤーに役立つ内容
D&D初心者にも、古くからのD&Dファンにも対応している。
十分な情報を提供しつつ、プレイヤーが「自分で内容を作り出せる」という感覚を与える工夫がなされている。
キャンペーン内で作り出せる対立や、街の場所の例を基に実際に冒険を構築できる。
街の外の場所も紹介
街周辺の地域の地図もあり、インスピレーションを得やすい。
例として、ケルンヒルズでドワーフの墓所を探しながら、アイウーズの下僕に追いつかれる前にアイテムを手に入れる冒険が作れる。
グレイホークの素材は、圧倒的すぎない形でうまくまとまっている。一般的なキャンペーン設定は320ページもの情報を覚える必要があるかもしれないが、ここには32ページしかなく、軽く目を通すだけで十分にインスピレーションを得られる構成になっている。
街や周辺地域に関する詳細な情報はあるけれど、街から離れるほど内容はあいまいになる。それぞれの地域について、「何が起こっているか」「どんな冒険ができるか」が示されている。たとえば、東部では、大王国が反乱国家に領土を奪われながらも何とか持ちこたえている。
どんな冒険ができるか
反乱軍が邪悪な帝国と戦う戦争キャンペーンが展開できる。
グレイホークの街では、大王が悪魔と取引をしているため、超自然的な恐怖に直面する冒険ができるかもしれない。
エルディ海や諸島領では、海軍勢力が争う中で海洋冒険を繰り広げることができる。
グレイホークの設定の整理
グレイホークの神々がリストアップされ、簡潔に説明されている。
支配者についての簡単な情報もあり、約30ページという分量ながら深く掘り下げられている。
情報が不足していると感じることなく、コンパクトにまとまっている。
主要な三つの対立
アイウーズの対立: 地図上に「魔王」であるアイウーズが植え付けられており、彼が国々を征服しようとするのをキャラクターが阻止する必要がある。邪悪な軍勢を持つ彼を倒すため、強力な同盟を結ぶこともできる。
元素邪霊の物語: 密かに活動するカルト集団が、ダンジョンの奥深くに閉じ込められた原初の存在やデーモン・ロードを解放し、世界を原始的な状態に戻そうとしている。複数のカルトが独立して活動するという設定。
ドラゴンの対立: 悪のドラゴンが大陸で何をしているのかが、この対立の種になる。「ダンジョンズ&ドラゴンズ」という名前を持つからには、ドラゴンを中心にした対立を設けた。
三つの対立はそれぞれが異なるテーマを持ち、プレイヤーが異なる冒険を楽しむことができるようになっていて、さまざまな冒険が展開可能となる。
グレイホークの世界について詳しく知る必要はない。設定用語集に世界について学べるセクションがあり、キャンペーンを通じて触れることができる。
ダンジョンに入るたびに「ここは何の場所なのか?誰が、なぜここを作ったのか?」といったミステリーを解き明かすことも醍醐味だ。
この章のグレイホークのセクションの主な目的は、本全体、特にキャンペーンの章で話してきた内容を具体的に示すことだ。グレイホークの説明は、ほぼすべての段落が冒険のフックのように感じられる。
読んでいると「こんな冒険ができそうだな」と思ったり、「このクエストをやってみるのも面白そうだな」と考えさせられる。きっと他の人も同じ反応をするだろう。
カスタマイズの容易さ
グレイホークを自分のものにするのは簡単で、何千ものDMがすでにそうしてきた。
この愛されてきたキャンペーンを再導入することで、新しい世代のプレイヤーにも楽しんでもらいたい。
グレイホークのアイコニックな要素
ファンタジーのキャンペーン設定の「定番」要素がすべて詰まっている。
最初のキャンペーン設定である強みは、当時はすべてが新しかったこと。この設定が「定番」を作り出した。
探索、社交的やり取り、戦闘など、D&Dの柱となる要素がすべて揃っている。
ダンジョン、戦争状態の国、平和な国、ドラゴン、そしてモンスター・マニュアルやDMGのすべてのモンスターやマジックアイテムが、この世界に居場所を持っている。
名を成した人物たち
D&Dの歴史に登場する名高い人物たちも、すべてここから来ている。
モルデンカイネン、ターシャ、オティルーク、ビグビーなど、D&Dの歴史に刻まれた人物たちの出自はグレイホーク。
この世界は、彼らの世界であり、彼らが築き上げたものに、多くの英雄たちが続いてきた。
D&Dやグレイホークが成功している理由は、そのクラシックでアイコニックなD&Dの感覚を持っているからだ。D&Dの基本的な要素がすべて詰まっていて、キャンペーン設定のマップを眺めるだけでもワクワクする。
キャンペーン設定のマップの魅力
マップを眺めて、どこに行けば何が見つかるかを想像する楽しさがある。
今回のマップには、D&Dの歴史に関連する場所が多数載っている。
例えば「白羽山」や「恐怖の墓所」、「ツォジカンスの失われた洞窟」、「The Ghost Tower of Inverness(幽霊塔インヴェルネス)」など。
長年のグレイホークファンは、マップに「恐怖の墓所」が載っているのを見て、懐かしさを感じるだろう。
D&Dの過去を掘り下げるきっかけ
これらの場所は章の中で詳細に扱われていないが、D&Dの過去を掘り下げるきっかけになる。
「白羽山」は『大口亭奇譚』で詳細が扱われており、「防壁山脈」もグレイホークに存在していた。
グレイホーク関連の冒険
多くのグレイホーク関連の冒険が、D&D5版の冒険集に収録されている。
代表例:「大口亭奇譚」、「Tales from the Infinite Staircase(無限階段の冒険)」、「ゴースト・オブ・ソルトマーシュ」。
ソルトマーシュ自体も、グレイホークの設定に登場する場所。
古い要素も残している
1970年代のファンタジー世界では、独自の曜日や複数の月を持つ設定が流行っていた。
そうした古い要素も、このグレイホークの設定に引き継いでいる。
昔からのファンタジー要素が好きなら、きっと楽しめる設定になっている。