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BROOM 2020

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#青春小説

ラヴレター

                             美栄靖奈  コンビニでのバイト終わり。家に帰ると、いつもはチラシやらセールスのビラでいっぱいのポストに真っ青の封筒が入っていた。水道代の請求だろう。ポストから引っこ抜いたそれは、水道局からの通達ではなかった。  深い青色の封筒に、銀色の文字で『今井智様』と書かれていた。何でもオンライン上でこなせる時代に手紙とは、古風な人もいるなと思った。裏を見ても、差出人の名前はなかった。俺の住所も書いていない。何で差出人は俺の住所

友情登竜門小話

                             屁理屈太郎  寒々しい朝に私は身を震わせた。布団は働きを放棄し、くしゃりと足元に丸まっているようであった。少しずつ昇るのが早くなった太陽の光は、部屋を照らしている。きらきらと白っぽい埃が光の筋に浮いている。 普段ならば、当たり前のように目が覚めないのに、水でも掛けられたようにすっきりとした寝起きだった。  壁にかけたブレザーを見た。緩んだボタンが太陽光に反射している。ふと、だらしなく着崩した奴を思い出す。続いて、今日

限りある今の過ごし方

                              人間 越 「誰もが等しく享受して消費しているのに、底が尽きないもの、なんだ?」 「……何だ、いきなり」  突然の問いかけ。声の方向に顔を向けると思わず顔をしかめた。  吹き込んだ風がカーテンを押し上げ、窓から注ぐ太陽の光が僕の顔目掛け押し寄せてきたのだ。 「うーわ、不機嫌そうな顔。そんなに私に話しかけられるのが嫌?」  そしてそんな僕の表情を見たらしい問いの主――唯原悠美は不満げな声を上げる。 「違うよ」  僕はそ

甘々は青春也

                              冬乃月明  一週間で彼女に振られた、ハルとジュンの短くも、甘い恋の話。  中3冬、僕は彼女に振られた。交際期間わずか1週間。クリスマス前に付き合って、正月に振られたのだ。あまりにも早かった。交際期間が短いせいか、引き留めることもなかった。好きという感情がなかったわけではない。ただ、彼女からの淡々とした別れ話に、引き留める気持ちも薄れてしまったのだ。 「ハル、ごめん。新しく好きな人ができた。」  そう、LINEで言