甲子温泉(かしおんせん)『大黒屋』
夏の終わりに甲子温泉(かしおんせん)『大黒屋』へ行ってきた。素晴らしい湯と秘境温泉らしい山奥のロケーションのみならず、伝統ある湯宿の矜持を感じさせる品格ある応対に感じいった。
奥甲子にある大黒屋の湯は、白河藩主松平定信公が好んだという由緒正しい湯である。
至徳元年(1384年)、州安和尚が白河の山奥で日夜修行に励んでいたところ、ある老翁が現れ「この山峡に霊泉あり。病患ある者にこれを教え、救われよ」と告げて消え去った。老翁が示した地へ行ってみると確かに湯が滾々と湧き出ていたという。至徳元年が甲子(きのえね)の年であったことから『甲子温泉』(かしおんせん)と名付けられたと伝えられる。
[走行データ]
ルート 高原ホテルバス停(新甲子温泉)→甲子温泉大黒屋→新白河駅
距離 24.7 km
最大標高差 550 m
平均斜度 全体 -1.7 % 上り 6.2 % 下り 4.4 %
獲得標高 上り 305 m 下り 716 m
新白河駅からは8時発の福島交通バスで終点の高原ホテル下車、そこから自走である。今日は天気に恵まれた。
甲子山(左)と大白森山(右)だ。大黒屋の湯は甲子山の山懐にある。
路上にも秋の気配。
険しい山道が続く。相当ばててきた。
ガードレールの向こうは断崖絶壁である。
急坂の続く崖路を辿って漸く到着した。
渓流を渡った向こう岸にある大岩風呂へと急ぐ。
湯屋に入り、源泉となっている大岩とそこに祀られた鳥居にまず驚く。 崖の大岩がむき出しになっており、そこから湯が注ぐ。また、源泉の湯口には鳥居が祀られている。
そして『子宝石』とある。
見ると、湯船の中央には「子宝石」らしき大岩が鎮座ましましている。触れると子供に恵まれるという霊験あらたかな岩である。湯船の深さは1.2メートルはありそうだ。
最初はご老人おひとりだったので、お願いしたところ快く撮影を許して頂けた。但し、最初の一、二分だけ。そうこうしているうちに老若男女が大勢やってきた。それからは子供たちの声が響くなかで、冗談を言いあったり連れと語らったり湯殿についての蘊蓄を傾けたりの和気あいあいとした雰囲気となった。
伝統ある秘湯で、久しぶりに和やかな混浴を楽しむことができた。