見出し画像

ボーダータウンの思い出


今から15年以上前、初めて新宿区内に住んだ。東日本大震災もそこ在住時に経験することになるんだけど、その場所は住所で言うと大久保2丁目。勤め先から徒歩20分強。明治通りと大久保通りの交差点そばのマンションの3階。お隣りさんは、若いコリアンカップル。とりあえず、明治通り沿いの低層階なので、騒音と排気ガスを考えたら、ベランダの窓を開け放つことは無理な環境。

管理人室に入居時の関係書類を提出しに行ったときにいろいろ聞いた。

ここの住人の3分の1は外国人。3分の1は飲食業の人、残りの3分の1がリタイアした高齢者。

どうやら、当時のオレはひさしぶりの「昼間勤務の日本人会社員」だったらしい。全然普通ではなかったけどね。

新宿区は、世間的に歌舞伎町のイメージが強いけど、西口の都庁のある高層ビル街に、日本有数の大企業の本社を多数抱える事情もあるため、実は税収が潤沢なのです。

そんな予算事情から、子育てや高齢者支援の行政の手厚さも都区内では上位のポジションにあります。

それとは別に、さらに多文化共生の理念も掲げている関係もあり、在住外国人も多い。平日、歌舞伎町にある区役所窓口で待つ人の半分は外国人かもな感じ。

オレが住んでた地域も、コリアンタウンと呼ばれるエリアの外縁にあたります。

冬ソナの後だから、土日の昼間は、観光客が大久保通りの歩道に溢れ、地元の人は生活のため車道をバイパスする始末。

住むまでオレにとっての大久保は、あくまで江戸の百人隊だったり小泉八雲記念館だったし、世俗的な部分で言えばバブル期のいんちきブロンドの南米系の立ちんぼと韓国牧師の福音派教会のイメージ。

それが、オレのいたその頃にはもう、さらにボーダーレス化が進み、東南アジアやらムスリムとかのお店も人も多かった。

それにしても、在日のオモニって顔見知りになると、とてつもなく愛想とサービスが良くなるのよね。

表通りの一見客向けの店は観光地価格だからあまり行かなかったけど、昔からの小ぢんまりした終日営業の飲み屋にはよく通った。明るくなる頃行って「おばさん、来たよ。あまり持ち合わせてないけど飲ませてくれる?」って声をかけると「ツマミは今あるモノは全部出してあげるけど、今日はそれ以上の料理もサービスもしないよ。飲み物は自分たちで出してね。それから、ワタシ今から少し奥の机で寝るから、帰るときは店の電気消して、表のドア閉めといてね」だってさ。

仰せの通り、ひとしきり韓国焼酎を大量の突き出しの山で飲んだ後、テーブルにあるだけの千円札を置き、足音を忍ばせて消灯して退散した、それもいい思い出。

オレが個人的に思うに、半島も大陸の人もいったん個別で仲よくなると、いきなり身内の距離感で接してくれる気がする。

と、ここまでいいことメインで書いてきましたが、実は大久保は歌舞伎町で働く人のベッドタウンの側面もあるので、治安の面でヤバい雰囲気も確かにありました。よく観察すれば、反社の匂い漂う貧困ビジネスの現場もあるしね。

まあ、オレもまだディープなエリアのご案内はそれなりにできると思うので、ご入用の際はお気軽にお声掛けください。

https://gentosha-go.com/articles/-/28219


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?