ファール・ゲーム
「なにも悪いことしてませんよ」という顔をすると人生は得だと、初めて俺に教えた大人は超みっともなかったんだろうけど今となっては感謝している。不正に慣れていくのが悲しい時期もいまや懐かしく、暴力によって無理やり全てが解決していくことに妙な安心感を覚えている。やあこんにちは、と紳士みたいな挨拶をしてみたい。優しく誰かを見つめていたい。でもなにか資格が必要なのだとしたら、別にいいや。これ以上何かを求められても、何も差し出せないよ俺は。
武庫川が好きだという気持ちを、ペットボトルを踏み潰したときみたいな気持ちを、顔を上げたら空はいつも予想を超えて青いあの時の気持ちを伝えたい。陸と陸の狭間にある小川をぴょんぴょん飛び越えていくみたいに生きていたい。振り抜いたバットで空はひび割れて、遠くで風を切るあの音が心を奪い去っていく······そんな不安はどこにでも転がっているんだろう。だから、守ろうとしてはいけない。落とした分を稼いで、稼いだ分また落としていけばいい。俺はそういう残酷で途方もないマッチポンプをふざけていくために生きているはずだから、"ふざけるな"と誰か俺に言ってくれよ。死ぬ気でふざけるよ。
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