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Road to glory

 雨天決行。僕はコンビニのイートインでぷちり、ぷちり、ちぎれたり、契ったり、天使、とセンチメンタルを気取って呟きかけている。お守りに君の髪をちぎって持っていきたい傷つけたことを覚えていたくて、痛くて、なんて言いたくはない、ただ、傷みかけの言葉を文句つけないで食べられるようになりたいだけ。屋上を思い描いた真昼間の空はもちろん青いよ、白々しいくらいでちょっと退屈。それを詩と呼んでしまうのは春だからって越権だ。記号的多目的トイレ、記号的ラブホテル街、記号的大学生、大阪梅田駅前、打ち止めを告げ、ここから飛び降りてしまえばどこからどこまで嘘になる?
 雨天決行。アマノジャクの当て字、甲斐のない抵抗を誰も認めない場所でびしょ濡れになっても続けられる。王様になるか、神様になるか、選択の余地を放棄して大人になった怒りと焦燥を誤魔化した、明日と、明後日と、百年後の自分へ、打ち込まれた鉛の弾丸。明日世界が終わるらしい、職員室の窓ガラスを割ったあの少年の仕業らしい。彼はとても純粋で、好きなことなんてほとんどなくて、ただアメリカの、どこへ繋がるともなく真っ直ぐに伸びている土色の国道を愛していたらしい。草木を踏み鳴らし、海を干上がらせ、動物や人を沢山殺してしまうあの子がくれた遊戯王カード、地割れって名前の魔法カード、財布にしまっていたのだけれど、いつの間にかなくしてしまっていた。屋上を思い描いた空、曇りなき白昼の空、のように、僕らは走ったり、叫んだり、美しく、刹那的で、凶暴だ。強盗を迎え撃つ妄想をした窓辺、いじめがあった排便まみれのトイレ、ガムテープで補修された職員室、山田と佐藤が性交した体育館裏.....消えろ消えろと願う気持ちで、彫刻刀を握りしめて立ち竦む。好きです、付き合ってください。彼は三月十四日に海で死んだ。それで、足りないものを数えて見つけた、煤けた地面に引かれた轍。

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