Love××××

 そういえば、っていえば狡くないような気になれた。新しい夜を更新中、黙って見るには大体叙情に欠ける月と星、街明かり。目が腐れましたって言い訳するから見たくないんだろうと冷ややかに笑うけれど、俺も同じ気持ちだって、素直に言えるように練習したこともあったな微笑ましいことに。 
 あなたが怒っているんじゃないかと震えていたら、案の定あなたは白い目で真っ直ぐ突き刺して、でも誰も彼もあなたみたいに強くはいられないんだって、あなたは笑わないだろうけれど、困ったような顔をして、もっと強く答えてみせたんだろう。卑怯なんかじゃないあなたを許せない俺は間違っている。やっぱ格好良かったよ。なんて口に出来なかったのがずっと悔しかった。
 月に突き立てられたのが星条旗じゃなくて、クラスに馴染まないまま居なくなったあの娘に送ったやる気のない寄せ書きだったら、人類はもう少し神妙な面持ちで空を見上げるようになったかもしれない。叙情を気取っていればサボってやらなかった諸々のことを有耶無耶にして生きていけるかもって、舐めたこと考えてる間に知恵が錆びついていく。わざと、って祈りなんだなってあなたを見てるとしみじみ感じたんだ。また怒らせてしまうだろうけれど、言えたら良かったな。生まれた街が違ったせいで、永遠になった距離を埋めるように。
 冷蔵庫の冷えたハイネケンが爆弾じゃなかったら、彼を脅かさなかったら、退屈なままだったかもしれない。それが勝手に幸せになるってことでしょう。やまない雨はないから、明けない夜はないから、いつか幸せになれるから、それでいいってことなら、あんたが認めなかった、あんたに捨てられた不幸の数々は、幸福に黙殺された純然たる感情は、なかったことになるんだろう。なんせ漂白剤をのみほして、半端に死んでみたかっただけ。だって汚れることを拒むわりには、小綺麗な衣装を着て歩く。
 約束を破らないために、約束しないと約束してほしい。運命とかに唆されても少しも揺らがないように、お別れ以外の挨拶でお別れをしよう。この星が半分なくなったら、どちらかが消えてしまう距離まで走って、そしたらそれ以上遠くには宇宙しかないから、多分また会えるってこじつけを言ってみる。最終回もいつもと同じように、デフォルメされた地球の上をクルクル走るファンシーなエンディングを流すよ。あの夜に咲いたユーモアは奇跡みたいに輝いていた。架空のアルバムを作ったことも、覚えていないと思うけれど、いつか、相対性理論の世界では、ヒットチャートに載ったんだと思う。

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