Diary 2

 梅雨が明けるの待っているんだと思う。どうしようもないことだと諦めていれば、予想通りって顔をして余裕ぶっていられる。イヤホンをなくしたら不安になった。聞こえすぎるのがいやで、聞こえなくなるのもいやだった。アイスを買って帰ると食べる時にはいつも溶けている。夏、すべてがおかしくしくなってしまう。怖いなあ、弱いなあ、辛いなあ、って眺めていたら浸潤していた。

 どんなことも間違っているから不安にならない。でも慣れていくことが間違いだったらどうしよう、自分が思っているよりすごく馬鹿だったらどうしよう。サイレンが恐くて、白黒の服を着て、友達じゃないかって両手を広げる。窓越しに助からないよって誰かが呟くのを見ていた。おかしいのは俺だった。

 天気予報を信じることにした。傘が要るんだと思うことにした。外に出ると地面がキラキラと濡れていた。傘は捨てていいよと言われて、ちょっと泣いてみようとして、潰れるくらいに強く目を覆ったら長い欠伸が出た。目を開けた時にいちばん悲しくなった。

 ご飯を食べる。鍋で作るヌードル、コンビニのスイーツ、トマト、ありもので作るペペロンチーノ、麦茶で溶かしたお茶漬け、ミスタードーナツ。ベタベタと身体におちていくのを感じる。気を抜くと、目の前に無いものやいない人が現れたり消えたりして気持ち悪い。この場所で起こることはこの場所で終わる。今食べたものが俺になる。かぼちゃの人がいて、二郎系ラーメンの人がいる。現れたり消えたりしている。目が覚めたら終わっていますようにと願って、起きたらまた違うものを食べている。

 書いていないことを書かなくちゃ、考えたくないことも考えなくちゃ、やりたくないことをやらなくちゃ、そんな気がしてクルクル飛び回っていたら、「やりたいことをやればいい」なんてコケにされる頃には宙へ浮かんでいて、どこに降りればいいのか分からなくなっている。いまここで窓をぶち抜いて格好よく跳んでいけば良い、死んでも構わない、とか素っ頓狂な妄想では死んでも死にきれない、命は惜しい。あなたをあいしたことを忘れて笑うことも、くだらないまま摩耗していくことも、品のないまま美しくなくても生き続けるって決めたことすら、承知できていない。笑うのがつらい。泣くのはこわい。怒鳴るのは他愛ないことだけれど、どこかさみしい。笑ったり泣いたり怒鳴ったりして、元気よく壁をボコボコ殴って苦しい、けれども歩く。俺は手を握っている。眠くなるような温かさ、夢であえたとてしんどいよ。二郎系ラーメンの顔、怖い虹みたいにパーって誘われて断る勇気が出た。冷えた揚げ鶏が好き。俺は生きるのが好き。


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