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2023年に聴いた音楽・マイベスト10

聴いてきた音楽の方向性がかなり違う友人のベスト10(https://hifumijus.hatenablog.com/entry/2023/12/31/175105)に影響をうけ、やはり作ってみることにした。
残してさえおけば、思い返して「あの頃これ聴いてたな〜」となって結構良かったりするし、「今聴くと全然良くないな〜」というのもオツなものである。

2023年は車に乗るようになって、音楽に触れる時間がそうとう増え、まあまあdigった。最初は10曲埋まるか不安だったが、作り始めたら瞬殺でした。

10曲すべてYoutube Musicにあります。まとめたプレイリストはこちら。
https://music.youtube.com/playlist?list=PL8hd8p2EcXoae9NjBtFX7kCOtpUgNOSum&si=p3Gp4oNR_91EKBMr


10位 Leony 「Somewhere In Between」

ジムに通ってなければ聴くことがなかったであろう曲。なぜかジムのBGMで繰り返しかかっていて結構気に入ってしまったので、そのジムに通うのをやめた今でも聴いている。良くも悪くもZeddぽいというか、おそらくフォロワーなのだが、EDMのシンセの音は嘘くさいくらいが好きなので10位にランクイン。

9位 レオタード・ブタとヤギ・ハイレグ「舌打ち」

ヤギ・ハイレグのラップが良すぎるためランクイン。このアルバム全部良くて、「yeah?」もかなり好き。レオタード・ブタのVTuber裏話的なラップもリアルで良いんだけど、ヤギハイが自然体っぽいラップをするので、あざといというか逆に狙い澄ました感じに見えてしまい、なんかレオブタがだいぶ損をする構図になっているような気がする。

花見プールや紅葉スキーでおれもさ
良い日送りてえのに
なぜか眠たい昼下がり
俺が俺に金縛り

「舌打ち」

ヤギハイのリリックは上記のような感じで、大したことを言っているわけではないのだが、それがかえって等身大に聞こえ、良い。

8位 Sencha 「Blue Skies」

自動再生組。時間さえあれば無限にdigれてしまう時代に生まれてほんとうに良かったです。こんなんなんぼあっても困りませんからね。詳細は不明だが、Senchaという名前に反して日本人ではなさそう。

このような音楽は一般に「Lo-fi Hiphop」と呼ばれているのだが、うっすらノイズが乗っているぐらいの感じの方がいろんな音が出る場所のBGMとしては使いやすいし、だいたいどんな曲でも聴きすぎるとおかず感が出てきて飽きてくるのだが、これくらいよくできていれば毎日聴いても飽きがこない。

7位 Önigirisu 「Filofobia」

自動再生組。「Blue Skies」同様、Lo-fi Hiphopをひたすらかけてくれるモードで再生されたので、Lo-fi Hiphopとして作られた音源であること以外の詳細はマジで不明なのだが、このアルバム(『Toi et Moi』)がめちゃくちゃに良く、全曲おすすめできる名盤。名前がÖnigirisuだし、「みどりいろ」というアルバムも出しているので日本人な可能性も考えたが、これも違いそうである。

このアルバムはチルなだけじゃなく、ちゃんとテーマを持って作られているっぽいので、シチュエーションを選ぶぶん、出力もでかい。また、似た系統のSenchaはアルバムがなく、こちらはアルバム全体のクオリティが高いので、通して安定しているこちらを上位に。

あとこの曲のタイトルが好き。

6位 Woodlock 「Quick Hands」

これも自動再生組。これはジャンルも不明。例に漏れず詳しいことは何も知らないのだが、Wikipediaによるとどうやらオーストラリア・メルボルンのアーティストらしい。めちゃくちゃ気に入ってしまって、この冬はずっと聴いていた。音作りとコーラスの入れ方、ギターのノイズを使った展開のさせ方がうまい。アコースティックギターの生音がよく聞こえてくる曲なので、生活音にも強くBGMとしての性能も高い。

5位 ずっと真夜中でいいのに。「あいつら全員同窓会」

誰もが知っているポップソングではあるが、初めてちゃんと聴いたのは2023年だった。街中やヒットチャートとかで流れるのを聴いた時の印象と、1曲通して聴いたときの感想がそうとう違ったので5位にランクイン。

てかほぼサビしか聴いたことなく、サビがあまりにもポップすぎるので勝手に苦手意識を持っていた。具体的に言うと、「身勝手な僕でいい」のところとかでボーカルを追っかけるストリングスがポップすぎて嫌いだった。あ〜売れ線ポップスね、と一線を引いてしまっていた。

しかしこの曲のキモは、サビが「ちゃんと」売れ線ポップスになっていることにある。ここが売れ線ポップスとしてキマってないと、「あいつら全員同窓会」という曲は腰砕けになってしまう。

どうでもいいから置いてった
あいつら全員同窓会
ステンバイミー自然体に
シャイな空騒ぎ
ねばった戦績 飛んでった
なりたい自分に絡まる電柱
ぼーっとして没頭して
身勝手な僕でいい

「あいつら全員同窓会」

集団に馴染めない、等身大のルサンチマンを映しだす歌詞とは裏腹に、音楽の耳触りはきわめてポップで、これを大衆迎合的、あるいは嘘くさいと私は最初思ったのだった。だがこのギャップには意味がある。

フル尺でこの曲を聴くと、AメロBメロとサビの間にも同様のギャップがあることがわかる。サビ前のギターギュイーンまではダウナーな印象を受けるサウンドだし、歌詞の内容も「パッとしない日常」を感じさせるものだ。しかし、その凡庸な日常を「売れ線ポップス」へ昇華させるために、アーティストは格闘する。「あいつら全員同窓会」のこの振れ幅は、ACAねの飛翔の距離だ。

元から「綺羅キラー feat. Mori Calliope」はよく聴いていて、これは好きだなあ^^とか思っていたのだが、「あいつら全員同窓会」の深みを理解したら一気にずとまよのファンになってしまった。

4位 tofubeats 「RUN REMIX (feat. KREVA & VaVa)」

なんで聴いてなかったんだシリーズ。やっぱ夏はトーフビーツだよなあ^^とか言いながらYouTube Musicにあるやつ全部聴いてたら当たった。

これは短距離走 なおかつ長距離走
辛い道 無くすなよ希望と理想
ちゃんとしろ 走れ その足で
ダビデみたいに考えるホモサピエンス
走らされてる ヤツらから今日も
吐き出されてく ため息まじりのco2
大丈夫?
これは一生ずっと続く終わりの無い勝負
失速するヤツら 気づけば run away
俺またスプリント 響くファンファーレ
誰かがささやいてる 苦しそう
でもまた加速してる不死鳥

「Run Remix (feat. KREVA & VaVa)」

ここの押韻がマジですごく、とくに「その足で」「ダビデ」「ホモサピエンス」はやばい。意味的にも、もしかして『サピエンス全史』読んだ? みたいなところまで射程が伸びていて、押韻によって短文の中に深みを生み出している。

「co2(シーオーツー)」「(だ)いじょうぶ」「一生ず(っと)」「(終わりのな)い勝負」「失速」と畳み掛けるところも素晴らしい。ここで「iou」で流れを作っておいて、「苦しそう」「不死鳥」とずらした「uio」で落とす。ヴァースの構成がテクすぎる……。

3位 SKRYU 「超 Super Star」

5位の「あいつら全員同窓会」より音楽的に優れてるから3位というわけではなく、「アーティスト」というフィクションとリアルのギャップを見せるアプローチって本質的にヒップホップ的なものだよね、という筋論に基づいてこちらを3位に。

もう言わせないぜ What's your name
広大な世界な隅っこで
誰か俺に気づいてくれって
叫ぶのも野暮なくらい
もう言わせないぜ What's your name
今さらいい顔したってあっかんべー
誰にも履き潰されない
正真正銘 Super star

「超 Super Star」

How Many Boogie」が当たってから、SKRYUはほんとうにスターになりつつあるように思う。おそらく現実のスターはこの曲に歌われているようなものではない。そうだとしても、その嘘を一旦は信じてみることで初めて可能になることがこの世界にはたくさんある。「どうでもいいから置いてった」のだと宣言するからこそ、身勝手に足を踏み出せる。「誰か俺に気づいてくれ」という切実な本音は、「もう言わせないぜ What's your name」というアーティスト然とした言葉にいつか覆い隠される。SKRYUという新星を支える嘘は、ひとまずこの曲だと言える。

2位 クラムボン 「Lush Life!」

クラムボンはマジで良くて、高校生のときに友人に音源を借りて6thアルバムの『てん 、』を聴いてから結構好きだったのだが、店内BGMをdigる過程で再発見した。

シンプルな構成の上に特徴のあるボーカルでアクセントを作る手法は、クラムボンの定番パターンなのだが、この曲はその極地みたいな曲。Aメロ部分はピアノ・ボーカル・クラップのみで、ボーカルのキャラクターがよく伝わってくる。抑えたAメロのあと、サビで入ってくるスラップベースがかなり好き。

歌詞も良くて、まあかなり刺さっている。SCRAP ナゾビル吉祥寺、ずるい。

1位 haruka nakamura 「少年の日」

音楽は好きすぎると書くことが思いつかない。haruka nakamuraは私が修論が書けなくて悩んでいたときに知り、当時はアルバム『スティルライフ』を聴きながら進まない原稿と延々向き合っていた。

『スティルライフ』もたぶん大概のサブスクサービスで聴けるので、ぜひ聴いてほしい。ミュート・ピアノで録音された、鍵盤の戻る音が心地いい。ピアノという楽器と、それに向き合う演奏家の持つ固有の時空間を丸ごと閉じ込めたようなアルバムで、たぶん一生聴き続けると思う。

「少年の日」は、ラップが聞こえてきそうなトラックなのだが、ラップは入っていない。そのことがかえって、存在しない若いMCの荒削りなフロウを想起させるような感じで良い。「不在」があるタイプの音楽がやっぱり好きだ。全曲最高なのでぜひフルアルバムを聴いてください。THE NORTH FACE Sphere、ずるい。

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