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読書譚(3) 「今のことばで覚える 初めてのくずし字」

キーワード:読書譚。どくしょのーと。その3。上の画像は「いらすとや」。

感想

くずし字をなぜ学ぶのか、思わず「そこにくずし字があるから」とマロリーのように言いたくなってしまうが *1、単に文字が好きだからである。ひらがながどのように漢字から発生し、変化したのか。わくわくする。この本の著者は高校の先生で、「邪道」と言いながらもとても覚えやすい方法を示してくれている。くずし字を覚えたい人にとっては良い本だと言える。
*1 冒険家「そこにエベレストがあるから」と言ったとされる。

この本について話るときに、我々が語るべきこと。

実はこの本以外に、筆者が好きな本がある。それは今野真二著「図説 日本語の歴史」(河出書房新社)である。今回のこのくずし字の本を取り上げた経緯については、この日本語の歴史について語る必要がある。

上記の本の何が面白いかというと、さまざまな時代の文書が写真入りで載っている点である。例えば古今和歌集冷泉家時雨亭文庫蔵の嘉禄2年(1226年)の文字を見ることができる。もちろん、国立国会図書館のデジタルコレクションでも閲覧可能であるが、これだけでなく、他の例えば日本語とポルトガル語の辞書である「日葡辞書」なども掲載されており、さまざまなテキストも見て夜のひとときをニヤニヤして楽しむことができる(実際、にやにやして読んでたら、変人だと言えるが、変人になってしまう。あああ)。

ところが、である。実はこの中に1877年の漢語の番付である「漢語和解一覧かんごわげいちらん」がある。これは相撲の番付にならって当時使われていた漢語の順位をつけたものだが(明治9年版はここをクリック)、この9年版を大きくすると例えば「改正」のところに次のような説明がくずし字で載っている(下は著作権もあり、筆者が真似て書いたもので、かなり下手である)。

「改正」の説明

で、これが読めないという問題が発生した。上の文字は実際には「あらためただす」と書いてある。しかし、読めない。・・・。少し躊躇したが、最後にはやはり自分で読んでみたい!と思ったため、くずし字を学ぶことにした。またくずし字を書いてメモすればあっという間に自分にしか分からない(かもしれない)暗号のできあがりである。しばらくいい本はないか探していたが(キクタンみたいな)、ようやく探し当てたのが今回の本というわけである。

で、上の部分の「た」の部分は現在のひらがなの「太」から変化した「た」ではなく、「多」から変化したいわゆる変体仮名である。明治33年(1900年)の『小学令施行規則』により、現在の使用しているひらがなを使用するよう定められたが、それまでに使っていた他の漢字から発達した文字は変体仮名として現在も扱われている。

で、くずし字ではこの変体仮名も扱う。著者の齋藤さんはかなり親切な方で、現在のひらがなについても、今となっては使用されない変体仮名についても、元の漢字が何かという点から覚えるように指導してくれている。実はくずし字ではいろいろな文字の形があり、元の漢字を覚えていると判別がしやすいことが多い。そのため、元の漢字から全部覚えられるように、また少しずつ学べるように配慮してあって(例文も例えば水戸黄門の有名なフレーズ等が使われており、楽しい)、これだったら覚えられると感じた。

アプリもある。

この本を使って覚えれば良いが、実はくずし字に関するアプリもあり、そのアプリもかなり優秀である。

上記のサイトにいくと、一番下に「くずし字学習支援アプリKuLA」がある。このアプリは「Android版iOS版。」と書いてあるところをクリックするとダウンロードできる(最初はどこをクリックすればいいのか分からず困った)。

結構このアプリは優秀で、元の漢字ごとに幾つかの例(文字のみと、単語等の2つ)を示してくれており、覚えやすくなっている。実際、テスト機能もついており、一所懸命覚えようかなという気にもなる。

実際には、この本とアプリの両方を使いながら、半年ぐらいで書くことまでマスターしたいと思っている。

ラインのスタンプもある

調べてみたら、ラインのスタンプを作っているおかしな人がいた(褒めている)。おかしすぎるので、購入したおかしな人となった。

星の数

この本はくずし字を学びたい一般の人にとっては、とてもいい本だと思われる。例文もユニークで分かりやすい。なので、星レベルは★★★★★。習得に時間がかかるため、図書館で借りるのではなく、購入して使いたい実用書といえるだろう。

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