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【事務長業務実践書作成してみる】⑥病院経営コンサルをうまく使いこなす


 他の記事で、病院経営コンサルには厳しい意見を述べていますが、良いコンサルも多数います。また、コンサルを使ったけどうまくいかないという話の多くは、病院側が目的と要件を正しく示せていないからです。

 まず、目的を明確にして、それからどれが可能なコンサルを探すという、あたりまえの手順が大事です。具体的な目的別課題の方向性と注意点を記してみます。


1.課題はほぼ把握しているが、今後の取組のの為に、正当な手法で課題を抽出し優先付けを行っておきたい

 病院の現状分析を行い、問題点や改善ポイントを見つけることで、病院運営を合理的に改善することは正当な手法です。しかし、多くの手間と時間を要するため、日々の課題に追われる事務長には、荷が重い業務です。経営者が許可するなら、ここをコンサルに任せたいところ。
 具体的には、病院の業績や収支、患者の満足度などのデータを分析し、改善が必要な領域を特定します。それに基づき、コンサルの手法や戦略を用いて、病院運営改革の具体的な進め方を、コストと期間をものさしに、複数の提案を求めます。
 しかし、病院組織の特異性/特性を理解しているコンサルは希少です。病院はかなり特異な事業体(価格は国が決め、半数を占める看護要員数は施設基準で最低確保数があり、医師が頂点のヒエラルキーが法的に定められた、労働集約化型の公共事業)です。営業を含むホワイトカラー中心の企業は得意分野でも、そこで培ったノウハウを病院組織に適用しようとしてもまずうまくいきません。病院も実験台になるだけで、なんのメリットもありません。
 病院の課題に取り組んだ経験が豊富なコンサルを探しましょう。

2.課題の抽出と優先付けはわかっているが、日々の医業と並行して行える、解決への道筋をあきらかにしたい

 何が優先順位の高い「今やるべき課題」かはわかっている場合には、
テーマを絞って改善策とその進め方をコンサルに提案させます。
病院は要件として、病院の考える「ゴール」と「予算」を示して、
成果物に、「体制」・「ロードマップ」・「費用対効果」を、求めます。
 人事制度や教育カリキュラムまたはIT導入等の”単発メニュー”を勧めるコンサルが多いですが、このテーマの提案能力が無いと判断しましょう。
 医療のプロ集団である病院がどうしても進め方で迷うのは、大きくは「①病院内の人と組織に関わる事」と、「②収益に直結する患者の継続的集患の実現」についてです。建て替えや事業拡大などの大きな投資なら経営者が外部のプロに相談しながら決断できますが、このような課題は組織内の体制と知恵がどうしても必要です。

①組織改革・人材育成

 病院は医師を頂点にした多職種の集まりですから、体制や組織の課題が避けられません。従って、病院内の組織改革や人材育成の視点からのアイデア提案をコンサルに依頼します。
 具体的には、組織の構造や職務分担の最適化を図り、業務効率化やコミュニケーションの改善および給与制度と連動した人事考課制度等導入などの、対策を検討させます。ここで大事なことは、業務効率化やコミュニケーションの改善および人事制度の導入がゴールではありません。
 また、職員満足度をただ向上させる事でもありません。それが最終目的なら給与・賞与を上げるとか人員を増価させればいいのですが、それでは経営が成り立ちません。
 最終目的は、組織力を高めて、医療の質と量を向上させることです。
 また、改革の実現と継続を目的に、今の病院にとって最も必要な、従業員のスキルアップや教育プログラムの導入による病院内の人材育成プラン作成などをコンサルに依頼します。
 これも同様に、教育プログラムや人材育成プランがゴールではありません。病院の業務に係るスキルやリテラシーの現状を踏まえたプランでなければ、絵に書いた餅です。形を整えたり、新規に導入しただけでは、効果が出ないばかりか、業務遂行に支障が出ます。
 目的は、改革によって向上させた医療の質と量を継続することです。

②患者サービス向上

 病院もサービス事業ですから、患者さんやご家族に選んでいただくことが重要です。患者さんやご家族の視点からのアイデアを提案を具体的には、患者のニーズや要望を把握し、それに応じたサービスや施策を開発します。例えば、待ち時間の短縮や診療プロセスの改善、患者さんやご家族向け情報の提供など、患者さんの満足度を向上させる取り組みを行います。
 ここで大事なことは、待ち時間の短縮や診療プロセスの改善、患者さんや向け情報の提供がゴールではありません。また、患者さんとご家族の満足度の向上だけが最終目的でもありません。病院に限らずどんな業態でもそうですが、特に人件費率や材料費が収益に対して比率の高い病院に置いては、コストをかけすぎて運営しては。とても経営が成り立ちません。
 限られた体制と設備をうまく運営し、質の高い医療を継続的に安定して提供することで、療患者さんとご家族が「患者さんの病状をよくするために、病院を信用し治療を受けていただくこと」が最終目的です。

 このように、テーマ名が必ずしも最終目的ではありません。コンサルに依頼したり院内体制を組んだりする際に、何が最終目的なのか明確に決めた上で進めてください。その上で、コンサルや院内体制が手段をゴールと見誤っていないか、事務長は常に注意を払わないといけません。

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