見出し画像

【R6年診療報酬改定】【生活習慣病管理料(Ⅱ)】まず内容を理解するところから


1.生活習慣病の疾病管理の見直し

 R6年診療報酬改定において、三大生活習慣病(脂質異常症、高血圧症、糖尿病)について、「特定疾患療養管理料の対象疾病」から外され、「生活習慣病管理料(Ⅱ)」での算定が推奨されています。この改定は、内科の医療機関には少なからぬ影響が出ると思われます。なぜなら、「特定疾患管理料」は口頭の指示だけで良く算定が簡易でしたが、「生活習慣病管理(Ⅱ)は、診察時に患者さんとお話して、達成目標・行動目標及び指導事項について文書に明記した上で、初回は患者さんの署名をもらう必要があります。
面倒になるという印象が医療機関側に生まれても不思議はありません。
 そこで、今回の生活慣習病の疾病管理の見直しの目的・狙いをまずしっかり理解する事が重要と考えます。

2.生活習慣病の疾病管理における療養計画書とは?

 生活習慣病の定義は、「食習慣・運動習慣・休養・喫煙・飲酒等の生活習慣が、その発症や進行に関与する疾患」であり、日常の生活習慣に注意し、節制することや適度な運動をすること、ストレスを抑制することなどがポイントとなります。
 ここで重要なのは、疾病管理の見直しは、患者さんの意識や視点に重きをおいているということです。
 今回の生活習慣病に係る疾病管理の見直しにおいては、「療養計画書」は非常に重要な役割を担っています。「療養計画書」は、重度化防止や管理に大事な、食事や運動、嗜好品等の生活習慣を、患者本人が自覚し改善していくために、主体である患者さん自身で検査結果を理解し、目標設定して行動するためのツールの位置づけです。

①療養計画書(初回)の狙いと患者署名の意味

 療養計画書(初回)の狙いは、「検査結果を理解すること」と「自分の生活上の問題点を理解し、目標を設定すること」です。
 患者さん自身が、「生活習慣病と付き合っていくために、何をすればよいのか考える」にああたって、医師がサポートし一緒に考えていく、という姿をあるべき姿と想定しています。
 初回用は、患者さん本人が「検査結果を理解」し、「自分自身の問題点を把握」した上で「実施可能な目標を設定する」ことに意味があります。
 患者さんの署名は、「医師から説明を受け、納得の上で目標に向かって頑張ります。」という「意思表示」になります。

②療養計画書(継続)の狙いと診察・指導

 継続用の療養計画書の狙いは「重点目標の達成状況を理解できること」「目標再設定と指導された生活習慣改善に取り組めること」になります。こ  
 勿論、主体は患者さんなので、目標に対する達成状況はどうなのか、患者さんは医師と十分に話をして、達成目標・行動目標の見直しをするのか、検討することになります。
 初回以降、2回目以降の生活慣習病の疾病管理での診察の目的は、「目標の達成状況の確認」と、「目標再設定」や「生活習慣改善への取組みの実施」ができているかどうか確認して、目標を修正していくことにあります。  
 コントロールが良好で安定している場合などは、全く同じものを指導の都度交付する必要はなく、省略できますが少なくとも4ヶ月に1回は交付することが義務付けられています。これは、達成状況の確認と目標の修正を忘れてしまわないための取り決めです。
 医療機関が注意すべきは、算定する以上疾病管理に対する指導が前提で、計画書の発行の如何を問わず、指導を行い、指導の要点はカルテに書くということがベースであるということです。4か月は発行をしなくて良い=4か月は指導をしなくてよい、というわけではないのでご留意ください。

3.すっきりした多職種連携による治療管理モデル

 生活習慣病管理料(Ⅱ)において、「治療計画に基づく総合的な治療管理は、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士等の多職種と連携して実施することが望ましい」となっています。
「診断・指導して患者さんとともに計画を立てるのは医師、そしてそれを治療管理していくのは多職種でやりましょう」と言うことです。
 これに関しては、 生活習慣病管理料(Ⅰ)では、検査も内包されており、計画の段階で多職種が計画書に署名する形で関わっていました。療養計画書の作成において、看護師、栄養士、医療クラークが協力して、情報収集、書類の下書きを行い、医師に最終確認を受け、医師が患者の同意・署名を得る流れでした。入院診療計画書に近いイメージです。
 生活習慣病管理料(Ⅱ)は、「診断・指導して患者さんとともに計画を立てるのは医師、そしてそれを治療管理していくのは多職種でやりましょう」ということで、これより軽量化されたモデルだと理解できます。
 従って、医師は継続的な指導と計画書発行において、定期的な検査を指示するの勿論、適切なオーダー発行して、多職種の連携に繋げる必要があります。

4.今回の疾病管理の見直しの本当の意義

 特定疾患管理料の際には、医師のそれぞれの流儀に任されていたサイクルが、生活慣習病三疾患に関しては、ある程度ルール化されたとも言えます。
 この機会に、サイクルの確立を目指すのが、患者さんの疾病管理においても、病院経営にとっても重要な事だと考えます。
 医師それぞれの流儀を重んじる傾向がどうしてもありますので、同じ方向性にコントロールすることがなか大変でした。今まで、答えはわかっているのに、答えを出さない事に、忸怩たる思いを持っていました。この疾病管理の見直しは、千載一遇の機会と考えています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?