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【病院事務長の悩み】経営コンサルタントとの付き合い方 第一章 出会い

 この時代の病院経営はなかなか大変です。コロナ禍により、病院は重要な社会インフラだと再認識されたと言われています。しかし、収益の6割以上を人件費が占める労働集約型事業で、賃金構造は医師を頂点とした病院ヒエラルキーに沿っているため、医師以外の職員はここ10年間は定期昇給の上げ幅も小さく、充分な処遇を得ているのはごく一部です。その上、コロナ禍により患者の病院に来る頻度が減り、医師や病棟は患者受け入れに過剰に慎重になり、おまけに厚労省は早く退院することを施設基準に定めているので、多くの民間病院が赤字に喘いでいる状況です。
 ”患者を増やし収益を上げ労働環境を改善し職員に賃金として還元する。“という目標はわかっているが、目先の課題から手をつけても、あっちこっちで引っかかって、目標に近づいた感じがしない。そんな状況で悪戦苦闘の事務長のもとに、理事長が、「知り合いの病院院長から、いいコンサルがいると聞いたぞ、一度会ってみることにしたので、事務長も同席してくれ。」と声がかかります。
 疑心暗鬼で同席すると、件のコンサルは、まず医師会や大学医局や業界雑誌に掲載された有名病院とどれだけ関係が深いか、自己PR炸裂です。
まあ、コンサルも半分以上は営業活動だからな、と軽く聞き流してると、次には、戦略だの戦術だのプライオリティだの言い出します。話しの流れで、貴院の経営目標と課題は?と尋ねられます。案の定、理事長は経営理念をいつもの調子で語って、「運営と課題解決は事務長がくわしいので」とこちらに振ってきます。いつものことなので、事務長も病院運営課題について、かいつまんで話しをします。と、コンサルはすかさず、手元のクリアファイルから提案メニュー資料を出して提示します。 
 現状分析、コスト削減案、マーケティング戦略、内部プロセス改善、教育・意識改革、人事制度、地域連携強化、IT・DX提案、新規事業展開
・・・・
事務長は、なるほど、コンサルの持続可能性と収益最大化を目的とすれば、このメニューが妥当だろうな、子会社や連携企業のパンフもあのカバンにあるんだろうな、と黙って感心するふりをします。理事長の反応を伺うと、よく読めない表情をしている。悪い予感がした途端、止める間もなく、理事長はさして興味もないくせに「どんな事例があるか」を尋ねています。
案の定、コンサルはここぞとばかり、
患者の収容能力を増やす目的で新しい病棟やサテライト診療所を建設し、待機時間の短縮や受診の利便性の向上が実現した。職員の働きやすさを向上させるために、休憩室やトレーニング施設の整備を行い、職員のストレス軽減やスキルアップが実現した。地域の特定の需要に合わせた診療科の強化や、保険適用範囲の拡大などのマーケティング戦略により売上を拡大した。フレキシブルな勤務制度を導入し、職員のワークライフバランスを考慮した働き方を可能にし、職員の労働環境を改善した。などと早口で捲し立てます。
 事務長は、(そもそも体力のある病院の話ばかじゃないか)(ここは、変に興味を示すと、現状分析を売り込んでくるな)と、慎重に言葉を選んで、のらりくらりの会話でお茶を濁そうとします。が、理事長がもう飽きたのでしょう、「そういうことなら、事務長に当院の課題を聞いて、うちの病院にあった提案プランを立ててみてよ」と言って、唖然とする事務長を残して、退席してしまいました。コンサルは、早速カバンからいつの間にか取り出したラップトップPCを開いてなにやら準備しています。

こうして、※※な邂逅を果たした、事務長とコンサルの●●な付き合いが始まります。(続く)

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