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実行委員会の紹介

1・実行委員会の構成

 今回の演奏会を企画・運営するのは道内在住の自営業者、演奏家などで構成する実行委員会です。アイヌ音楽と伊福部昭をはじめとする北海道に根ざしたクラシック音楽の共演をムジカ北海道が過去、全道各地、または東京でも企画しました。そのムジカ北海道メンバーの一部にアイヌ文化、伊福部音楽を愛好する道内在住の一般人が集まり実行委員会を結成しました。

2・大平まゆみさんを迎えた豊平館コンサート

 今回の実行委員会は2019年2月に札幌交響楽団コンサートマスター(当時)大平まゆみさんを迎えた『伊福部昭の世界』演奏会とほぼ同一です。

 伊福部昭氏ご長女の玲さんと大平さんの対談、伊福部作品の演奏を行いました。やや高額なチケットにもかかわらず満員札止めの大盛況で幕を閉じました。不慣れな運営で一部のお客様に御迷惑をおかけしたこと、この場でも深くお詫び申し上げます。
 大平さんはこの演奏会で披露された伊福部昭作品である『土俗的三連画』(ヴァイオリン独奏版・田中修一編作)と『ヴァイオリン・ソナタ』を自らのソロリサイタルのメインに入れてくださいました。もっともっと伊福部音楽を深めていきたいという思いがあられる中、大平さんはご病気のため札幌交響楽団を退団することになりました。その時の悔しい思い、誰よりも大平さんが悔しかったであろう思いは忘れられません。

3・コロナ禍から「アイヌ音楽と伊福部昭」へ

 2020年に第二回「伊福部昭の世界」を企画。作家・寮美千子さんが伊福部昭氏逝去の時に捧げた詩を歌曲、または詩朗読の伴奏曲を作りたいという伊福部玲さんの願いを受けて、会場の確保、演奏家の参加など様々なことが決まりかけた矢先、新型コロナウィルスが猛威をふるい出しました。会の運営とお客様を感染から守ることの両立は実力的に難しいと判断し、演奏会を中止ということになりました。
 コロナ禍の中で実行委員会のメンバーでもあるスズサップノ良子が様々な地域で感染対策をしっかりしながら歌いに行き、また本人が全道各地のウポポ、ヤイサマを歌い学んでいる姿を見て、ふと東京音楽大学民族音楽研究所公開講座の思い出が蘇ります。スズサップノと筆者の共通の師匠である千歳アイヌ民族文化伝承保存会元会長・中本ムツ子さん(1928-2011)とその有志という形で2002年に公開講座に呼ばれたときのことです。予定されていた伊福部氏と中本ムツ子さんの対談は伊福部氏の体調不良のため中止になりましたが、伊福部音楽とアイヌ音楽が共演できた一夜でした。
 北海道において伊福部音楽とアイヌ音楽の共演の先駆者であるムジカ北海道に学び、また、鳥取において伊福部昭記念館が設立するということで、ストレートにアイヌ音楽と伊福部作品の共演をやってみようと考えました。その辺りは主催者挨拶に書いた通りです。

4・大地に根ざす音楽を届けるために

 伊福部昭氏は借り物ではない、そこの住む人々の大地に根ざした、自分でなければ書けない音楽を目指して実践した方と思っております。「伊福部昭が音更で聴いたアイヌ音楽と今のアイヌ音楽は違うんじゃないの?」という方もおられるかもしれません。基本的なことはきちんと伝承されていることを確認した上で、それらの疑問すべてを否定はしません。伝承の中で失われたものもありますし、違う方向にいったものもあるでしょう。同時に当時のまましっかり残っている文化もあります。それらを含めて民族文化なのだと考えます。「伝統芸能」ではなく今を生きる喜び、悲しみをダイレクトに表現するのがアイヌ音楽なのだと思います。今のアイヌ音楽の担い手たちが試行錯誤しながらも自分自身を偽らず歌を踊りを担っています。そこに伊福部昭氏の創作姿勢と共通のものがあると筆者は信じております。
 演奏会の最後にアイヌ民族の輪踊りがあります。見るのではなくどうぞ、輪の中に入ってご参加ください。
(文責:山田雄司)