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期待外れのオッペンハイマーのテーマは陳腐?


以下引用
『彼は、完成した原爆がもたらす影響の大きさに気づき、深い罪悪感に苦しんでいた。

つまりこの物語は、オッペンハイマーとプロメテウスを重ね合わせて表現しているのです。プロメテウスが引用される瞬間、「科学者が直面する創造と破壊のジレンマ」や、「知識の追求がもたらす恩恵と危険」を意味していると考えると、作品がわかりやすくなります。

ちなみに、本作の原作書籍のタイトル「American Prometheus: The Triumph and Tragedy of J. Robert Oppenheimer(原題)」は、オッペンハイマーを「アメリカのプロメテウス」と表現しています。

本作は、世界滅亡の可能性についても描いています。そこで、劇中に何度も登場する“大気引火”という言葉がとても重要です。これは原爆の極めて強力なエネルギーにより、地球上のすべての空気が燃えてしまうことです。

マンハッタン計画の初期に議論され、科学者たちが計算した結果、「大気引火が発生する確率は非常に低い」と結論づけられましたが、オッペンハイマーは悩み続けます。それはなぜか? 発生の確率は「非常に低い」だけであり、「ゼロではない」からです。  

つまり自分たちの計算が間違っている、もしくは人知を超えた最悪の奇跡が起きれば、地球を滅亡させるかもしれないという状況で、実際に原爆実験=トリニティ実験は敢行されたのです。この事実をノーラン監督は「恐ろしい恐怖」と名付け、次のように語っています。

「トリニティ実験の下準備中に、オッペンハイマーとそのチームは、非常に小さな可能性を目にしていた。彼らがこの最初の爆弾のボタンを押して起動させたら、連鎖反応が起きて地球の大気を焼き、地球を破壊するかもしれない。いかに小さくても、その可能性を完全に排除することができる数学的、理論的根拠は存在しない。それでも彼らはボタンを押した。私は観客をその部屋に連れ込み、その会話が交わされる時に、ボタンが押される時に、立ち会ってもらいたかった。考えてみれば、実に信じがたい瞬間なんだ。それがどれほど危険なことだったか」

このように「原爆実験は世界を滅亡させる可能性がある」「オッペンハイマーは悩み続けていた」と踏まえると、該当シーンの“感じ方”が変化するでしょう。』





参考文献
https://eiga.com/movie/99887/special/3/

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