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水槽の彼女〜カバー小説【10】|#しめじ様

この小説は、しめじ様のnoteからインスパイアされてカバー小説にさせて頂きました。


もとのお話はこちら。

↓ ↓ ↓


🌿これまでのお話🌿


▶9話(【1】〜【8】話収録)



《登場人物》




・僕…34歳。ひとり暮らし


優愛ゆあ…ハイティーン。崩壊星collapserの瞳をしている。異国のpapaから離れたがっている。


・異国のpapa…世界的な画家。


・りら…彼女の齢の離れた父親の違う妹。

「彼女」を母親だと思っている。



―――


《9話ハイライトシーン》



優愛は立ち止まって、僕に向き合って立った。視線は、僕を通り越してあらぬ方を眺めていた。



彼女は言うのを躊躇ためらっているように、唇を少し開いたり閉じたりした。



「―――優愛?」



声を掛けると、優愛はぐっと焦点を合わせて僕を見つめた。



「―――警察が来たの。家に。

“ふたりはどんな関係ですか”って・・

旅行前のことよ」

「水槽の彼女〜カバー小説【9】」




「―――警察?」

僕は虚を突かれて、立ち止まった。
ポケットから携帯の灰皿ケースを出して、吸い殻になりかけた煙草をそこにじ込んだ。


「そう。未成年淫行いんこうの罪が無いかって」


非道ひどいな・・・」


優愛ゆあも立ち止まり、また僕を見た。そして夜空を仰ぎ、腕を開いて深呼吸した。


「papaが追い返したの。馬鹿なことを言うな、何の証拠があるんだ、二度と顔を見せるな―――


って、英語混じりで。

・・・珍しく、大きな声だったわ」


「・・・・・」


僕は、喋っている優愛を、少し離れた場所で黙って見ていた。


「多分、近所の人が通報したのよ」


疎水から風が吹いて、柳の枝が一斉に揺れ始めた。優愛の様子から、僕は追い詰められる義理の父と娘の気配を感じていた。





「優愛は・・・それで、家を出たのか?」

夜空から視線を移して、腕を下ろし、こちらを見た。僕の表情を確かめるようにしばらく眺めたあと、優愛は言った。

「そうね・・・

ちょっと息苦しくなって、離れたほうが良いんじゃないかと思った。


りらは昼間は保育園だし、帰ったらpapaが面倒を見られるしね。


りらはpapaになついてるの」


僕に微笑みかけたが、その笑みは失敗して、ほとんど泣き顔に見えた。
彼女は身体をくるりと回し、静かに流れる疎水のほうを向いて、僕に背中を見せた。


「・・・あの街には居場所が無いわ。
papaはこれから、仕事で海外に飛ぶことも考えてるけど・・・」


僕は、2本目の煙草を取り出していた。


「一緒に行くのか?」


優愛は後ろ姿のまま、首を振って否定した。


「じゃあ、妹のために、家へ戻らなくちゃ・・・」


「・・・そうね・・・」


煙草をくわえたとき、優愛はくるりとまたこちらに振り返った。
優愛の瞳を見て、一瞬寒気がした。


ホテルで会った時のように、彼女の瞳は崩壊星コラプサーごとく、くらいくらい闇の色を宿していたのだ。


「・・家から、離れられないわね」




【 continue 】


▶Que Song

花束/Dios




はい、短いですが今日は此処まで。
あと2話くらいで終わる予定です😊



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また、次の記事でお会いしましょう!



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