見出し画像

ALSは20代、30代でも発症する疾患です

今回のポイントは、ALSは決して高齢者に限った病気ではない、ということです。

これは、アメリカのALS団体の一つである「Her ALS Story」 の3名がそれぞれの体験と活動紹介をするビデオです。ビデオの司会者のサンドラさんは、I AM ALSという有力な支援団体の共同設立者でもあり、一昨年の米議会でAMX0035 (リリブリオ)の早期承認の必要性と新薬アクセスの必要性を精力的に政府に訴えた方です。この方のおかげで、その後アメリカ政府はALS法を立法しましたし、FDAもリリブリオを承認させています。

この女性3名は26才、32才、35才、という年齢で発症したそうです。彼女たちは「ALSは高齢者の病気ではありません。年齢、性別、または人種も関係ありません」といいます。ビデオで話す女性3人は構音障害もみられ、同じ患者として切ない気持ちになります。ビデオはリンクされています、是非見てみてください。

アメリカのALS協会のウエブをみても、次のように伝えています。

ALS can affect anyone, anywhere, at any time
訳)ALSは誰にでも、どこにいても、いつでも起こりえますhttps://www.als.org/understanding-als/what-is-als


第2の患者団体、I AM ALSのサイトでも同じく:

ALS Can Affect Anyone, Any Time, at Any Age
訳)ALSはだれにでも起こりえます。いつでも、どんな年齢でも。https://iamals.org/ 


ALSは決して高齢者に限った病気ではないのです。

ですが、日本のALSに関する情報サイトを見ると、ALSは「高齢者がなる病気」と印象づけてしまう表現や説明が目立ちます。また発症原因について「神経の老化と関連」とするサイトもあり、ALSは高齢者の病気だと誤って認識されることを危惧します。

日本のウエブサイトでは、次のような表現が目立ちます:

「発症年齢は60歳〜70歳の高齢者に多く、年齢が上がるにつれて発症リスクが高くなります」。https://www.minnanokaigo.com/guide/disease/als/

「神経の老化と関連しているとされています」。https://www.neurology-jp.org/public/disease/als_detail.html

「ALSは、運動神経系が少しずつ老化し使いにくくなっていく病気です」https://alsjapan.org/diagnosis-what_you_have_to_do/


これをみたら、多くは「そうか、ALSは老人がなる病気か」、と間違った認識を持ってしまうのではないでしょうか?

海外のサイトではそのような説明はありません。たとえばパーキンソン病や、癌疾患と同じように、一般に若い人がなる病気ではないと説明する例はありますが、「年寄りがなる病気」という表現はありません。「年を取るほどなる病気」ともいわれていません。「神経の老化」との関連性を説明するサイトも見当たりません。原因が「神経が老化」とする説明はアメリカのサイト、世界のサイトでは見当たりません。それをサポートする研究結果がなければ、誤解を招くので、改めるべきです。また日々研究が進んでいるので、情報提供者は情報をアップデートすることも求められます。


ALS は決して「年寄りだけがなる病気ではない」し、原因が「神経の老化」??それが正しいか、間違いかという議論ではなく、何を根拠にそう書けるのか?という点が大事です。

日本語のALSに関するインターネット上の情報は、英語の文献に比べ情報量が圧倒的に少ないです。少ないのは当たり前で問題ではありません。問題は、情報の数ではなく、質に難があります。日本の情報は古いものが多く、多くが更新していないことも問題です。


一般的にALS発症の平均年齢は55才です。

一方で「高齢者」の定義は一般的に65才以上です。

1月の厚労省との会議でも「ALSは決して年寄りだけの病気ではありませんよ」と発言させていただいています。当方の発言の背景は、政府からすると、年寄りはそんなに長く生きてもしょうがない、国の医療保険費負担が増えるだけ、という考えが根底にあるはずと思っているからです。たしかに日本は世界と比べると寝たきり老人が多い国です、世界ではあまり例がない日本特有です。よって、その点指摘をした次第です。我々からすると、ALS=年寄りの病気で片付けられたら困るというのがポイントでした。

続けます。ALSは高齢になるほど発症する病気ではありません。正確には平均年齢ではなく、人口動態をベースに調べるべきです。ようは40代が何人、50代が何人、60代、70代それぞれ何人かという年齢別の人口分布のデータを分母にしたうえで、発症年齢のデータを同じように年代別で見る必要があります。その結果70代、さらに80代の発症率がより高ければ、年を取るほど、発症しやすいということが証明できますが、日本の人口動態をみても、どうもそうではないようです。


ブログでも38歳で発症したといわれる方や、20代、40代の発症の方も少なくないことがわかります。わたしも発症は50才です。これはアメリカのデータですが、40歳未満の患者は全体の10%です。これだけみても、ALSの原因が神経の老化で説明がつくものだとは考えにくいです。まして55才は「高齢」と表現されるできではありません。驚きましたが、3歳の発症事例もあるようです。


「そうか、ALSは高齢者の病気か」等、と誤った認識がないようにしていただきたいです。若い患者が多くいるのです。アメリカや他の先進国は、現在の患者を救おうと新薬の早期アクセスを実現しています。日本も政府の速やかな対応が求められます。

以上です、


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?