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Webアクセシビリティに未対応だと訴訟される時がくるかもしれない話。

突然ですが、覚えてますか?

今年、2019年初めにこのニュースがあったの、覚えていらっしゃるでしょうか?

ざっと説明すると、ビヨンセの公式サイトが「視覚障害者対応をしてない!」と視覚障害者ファンから訴えられた、というニュースです。

「そんなおおげさな」と思う方が大半だと思いますが、その感想だけで終わらせるのは問題があると私は思ってます。

アメリカでは訴訟が増えている模様。

実は、以前より、アクセシビリティの情報を聞いていると、アメリカでは訴訟が年々増えているようなのです。

上サイト「Webアクセシビリティ提訴件数、米国では昨年の2.8倍に。法律で義務づけられる海外の現状[CSUNレポート]【第2回】 | イベント・セミナー | Web担当者Forum」の記事を元に見ていくと…

アメリカには、障害を持つ人がアメリカ社会に完全に参加できることを保証したADA(Americans with Disabilities Act 障害を持つアメリカ人法)という法律があります。

このADAに基づいたWebアクセシビリティ提訴の件数が、2017年には814件だったのが2018年には2,285件となり281%も増加しています。

この件数だけでもびっくりはしますが、この後の文も重要で…。

提訴された企業の11%はアメリカ以外の国に本社を置く企業であり、ここには日本も含まれているそうです

アメリカでの提訴はグローバルに影響しており、アメリカだけに留まらない流れになっています。

日本も含まれているって…。これは心中穏やかではいられない。

もし苦情を受けたり、訴訟を起こされるとどうなるか。

これも、先ほどの「Web担当者フォーラム」の記事から引用します。

Greg氏は、「1年あたり100件の苦情に対応するための活動を試算すると994,950ドル(約1億円)もの金額がかかる」と言います。

一方提訴や訴訟には、苦情よりもより長い時間とコストが必要となります。弁護士の手配や証拠開示手続き、交渉などを含めると、訴訟1件あたりの費用の試算は356,775ドル(約4,000万円)にものぼるとのことです。

かなりの痛手ですね…(・・;

なお、この事例はアメリカのものなので、日本国内で訴訟、となると金額や対応事情が変わってくるとは思いますが、なんにせよ「リスク」になることは間違いないと思います。

グローバル化が進んできている現代だからこそ必要な対策を。

現在、どんどんグローバル化が進んで来ている影響で、私のサイト制作依頼においても多言語サイト制作のご依頼が増えてきています。

また、日本でも「ウェブアクセシビリティ方針策定」だけでなく、「障害者差別解消法(2016年4月1日施行)」が制定されています。もしかすると、将来的に、この法を元に国内で訴訟が起こる可能性も否定はできません

とはいえ、アクセシビリティの対応に関して私が良く耳にするのは

「いちいちalt属性入れるのに文章を考えるのめんどくさいし、そんな時間ない」
「工数(制作時間)がかかる」
「料金が通常よりもかかるので、カットされることが多い」

という声。

しかし、法律・訴訟まで絡んでくるとなれば、さすがに無視はできなくなるのではないでしょうか。下手をすると依頼者、制作者(元請け・下請け)関わらず、制作に関わった関係者全員が被害を被る可能性もなくはありません。

Greg氏は、「私たちにできることは、苦情を減らし、苦情が訴訟になることを防ぐこと。提訴されてから対応するのではなく、日ごろから苦情にきちんと対処して提訴されるリスクを回避するのが良い。さらには、デジタルでの情報発信をアクセシブルな状態に保つこと(読み上げソフトでも同等の情報が得られるようにするなど)が苦情や提訴・訴訟のコスト回避のための最善の戦略となります」と述べます。

依頼される側としては、なるべく費用と抑えたい、対応しなくてもいいものはカットして節約したい…と考えている方が多いと思いますが、訴訟されて、依頼側・制作側双方が損失を受けて節約どころか会社の危機に立たされてしまった…なんてことにもなりかねない時代は目の前に来ているのかも知れません。

制作側も依頼側も、ひとつの「リスクマネジメント(守りの)対策」として、できるところから知識を得ておくべきではないかとひしひしと思うのです。

…と書きましたが、本来、アクセシビリティは「どんな条件があっても使いやすくするという概念(私の意訳)」だと思うので、「法律があるから守らないと」と考えるのではなく「対応することが当たり前のこと」として一人ひとり全員が意識してアクセシビリティ対応ができれば一番望ましいのですけどね。

この記事を書く上で参考にしたサイト&資料。

以下の内容を参考にして、まとめさせていただきました。

Webアクセシビリティ提訴件数、米国では昨年の2.8倍に。法律で義務づけられる海外の現状[CSUNレポート]【第2回】 | イベント・セミナー | Web担当者Forum

アメリカで増加するWebアクセシビリティ関連訴訟(ミツエーリンクス)

Webアクセシビリティ 海外の気になる動きと日本国内の最新動向(PDF)


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