全然怖くない話

 私はホラー映画、特にJホラーが好きで、小説もホラーものを好んで読んでる。小学生のころに映画「学校の怪談」シリーズを見た影響かもしれない。ちなみに第一作は家で見たのだが、見た後に体調が悪くなって、その後のクラブ活動をサボった記憶がある。
 高校生の頃には京極夏彦作品にハマり、大学では全然関係ない学部に所属していたにも関わらず、図書館で民俗学の研究書、しかも論集みたいなやつを読んで講義をサボったりしていた。
 最近は三津田信三作品を愛読している。家シリーズと刀城言耶シリーズが特に面白いと思う。

 とはいえ、基本的にいわゆる幽霊のたぐいは信じていない。信じていないが一方で暗いところは苦手である。これは可能性の問題であって、現在幽霊を信じていないのは、いままで見たことがないという経験的な見解であり、ロジカルに導き出した結論ではないからである。
 象については存在を信じていない人はほぼいないだろうし(知らないひとはいるかも知れないが)、多数の映像や画像、証言があるので存在していると信じている。しかし、幽霊については証言が一致しないし、証拠もあるようなないようなだし、私自身も見たことがないから信じていない。

 ただ、ときどき幽霊話(あるいは怪談)にあるような体験に類似することを経験しないでもない。しかし、大抵は睡眠と関連するなかで起きているため、夢かそれに類するものではないかという気がしている。

 前置きが長くなってしまったが、上海に来てからあった3つのうっすい「幽霊話(あるいは怪談)にあるような体験」を書いておこうと思う。

①夜中交差点に夜中ずっと立っている人

 上海に来て割りとすぐのこと。その日は自分の部屋で一人で寝ていたのだが、なかなか寝付けずに本を読んでいるうちに0時になってしまった。流石に次の日も早いのでもう寝なければと横になった。
 せっかく寝付けたのに、2時間ほどでトイレに行きたくて目が醒めてしまった。部屋に戻るとまた目が冴えてきている。もう寝ないでこのまま起きていようかと思ってふと外を見た(私はいつもカーテンを開けたまま寝ている)。
 我が家はマンションの14階にあって、私の部屋のベッドの横にある窓からは、近所の交差点(正確には1方向は集合住宅の入り口になっている)が見下ろせる。そこは夜でも照明がついている。
 その交差点の歩道に、人影が見えた。暗いので詳細は不明だが、大人の男性のように見えた。信号待ちかと思ったが、深夜である。律儀に信号を守るっているというのはちょっと違和感があった。もしかしたらなにかの事情で人か車を待っているのかもしれないし、それ以上気にしても仕方がないので、横になってスマホで本を読むことにした。
 1時間ほどして眠くなってきたので、もう大して睡眠時間は取れないが、少し寝ようと思って何気なく外を見たら、人影がまだあった。さっきと同じところに、同じように立っているように見えた。気にはなったが、降りて行って話を聞くわけにもいかないので、そのまま寝てしまった。
 翌日、朝起きて外を見るともう人影はなかった。
 もしかしたらなにかの影だったのかもしれない、そう思って次の夜に外を見てみたが、そこには何もいなかった。

②呼びかけ1

 今年の春くらいのこと。その頃私は体調を崩していて、眠れない日が多かった。そのせいか眠りが浅く、疲れがたまっていた。
 その日も前日は10時くらいにはベッドに入ったのに、なかなか寝付けずに本を読んでいて、結局寝たのは1時を過ぎた頃だったと思う。
 明け方、不意に「あのー」という呼びかけで目が醒めた。最初は、自分が寝坊をして、出社する前に妻が声をかけたのかと思ったが、外からの光でうっすら明るくなった部屋の中には誰もいない。
 スマホで時間を確認すると、4時半を少し回ったくらいで、出社時間にはまだほど遠い。なにかあってマンションの管理人が入ってきたのかとも思ったが、毎晩ロックをかけているので入ってこられないはずだ。
 念のため玄関を見に行ったが、ロックはちゃんとかかった状態だった。声は少し高い男の声だった。 

③チャイムの音

 これはごく最近のこと。私がぐっすり眠っていると急にチャイムが鳴った、気がして目が醒めた。我が家はサービスアパートメントなので毎日10時くらいになると係の人がゴミの回収に来る。寝過ごしてそこまで寝てしまったのかと慌てたが、部屋が暗い。
 私は①で書いた通り、カーテンを開けて寝ているので、よほど天気が悪くない限り、10時にもなれば部屋は明るくなっているはずだ。しかし部屋の中は電気がなければ足元もおぼつかないくらい暗い。
 なんだろうと思い枕元のスマートフォンを見ると、午前4時を表示していた。流石に4時にゴミの回収には来ない。
 あるとすれば、水漏れなどで下の階に何かが起きてということもあるだろうが、その場合はフロントからまずは電話があるだろう。もしかしたら電話の音では起きられず、人が来たのかもしれないと思った。同時に頭に浮かんだのは、これはあくまで日本の話だが、警察が家に来るのは朝一というのを聞いたことがあった。もしかして何かに抵触してしまったのか?と少し焦った。
 とりあえず出るべきかと思ったが、もしかしたら寝ぼけているだけかもしれない。重要な話だったらまたチャイムが鳴るだろうと、再度鳴るのを待ったが2度めは鳴らなかった。
 とはいえちょっと怖かったので、二度寝してから8時位に玄関を見に行ったが何も置いていなかったので、多分いたずらか夢だったのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?