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【ライブ日記#14】三谷幸喜 『笑の大学』


大学時代、いつまで経っても2人しか出てこない映画に初めて出会った。
『笑の大学』である。
場所はテーブルと椅子だけがあるシンプルな部屋。
なのにめちゃくちゃ面白くて最初飲み込むのに時間がかかった。なぜここまで情報が少ないのに面白くなるんだ。ここまで面白いと思う理由が大学生の自分にはわからなかった。ただ今になって無駄なものを極限まで削った、いわばエンタメの最高峰だったと気づく。これからたくさんの映画を見るんだろうけど、『笑の大学』を超える衝撃はなかなか体験できないと思う。お笑いは松本人志の登場以前と以後に分けられる、と同じ感じ。

そこから社会人になって、あれはもともと演劇作品だったと先輩に教えてもらう。それで今までの疑問は一気に解消される。なるほどだからあそこまでシンプルだったのか。てかその舞台絶対面白いじゃん。絶対観たいとずっと思っていた。

そしてその公演がなんと今年再演されるではないか!これを観なかったら一生後悔すると告知を見た時思った。早速チケット販売の10時にスマホの前で待ち構える。ただびっくり。東京公演は3分で売り切れた。いやもっと早かったかも。その時とってもショックだった。てっきり見られるものだと思い込んでたから。しょんぼりしていると、地方公演の抽選がまだ残っていた。これしかない。そして無事長野の松本公演のチケットをゲットすることができた。舞台を観に初めて遠征をする。ダブルのワクワクが私の日常生活を支えてくれていた。

公演当日。松本に行く特急の電車に乗る前にチケットを発券する。なんと1列目!!舞台で一列目に座るのは初めてだ。東京公演外れてよかった。八百万の神様に感謝した。

楽しみすぎて予定より30分ほど前に松本に着いてしまう。
まだホテルのチェックインできないからどうしようかな〜と思っていたら、ご婦人に声をかけられた。泊まるホテルが見つからないとのこと。じゃあ私が案内しますよとグーグルマップを開いて一緒に歩く。聞くとご婦人も『笑の大学』観に来たとのこと!わかります!楽しみですよね!!と話し、後ほどまた会えたらとお別れした。さらにご婦人のおすすめのオペラも教えてもらった。今度行ってみますね。

会場はまつもと市民芸術館。中には今まで公演されてきたであろうポスターが飾ってあって圧巻だった。改めて松本のチケットを取ってよかったと思う。

舞台はもう最高最高最高。映画を観た時と同じかそれ以上の感動。言わずもがな演技が上手。特に検察官の向坂がだんだんと演劇に前のめりになっていく「不器用な人間さ」加減が至高すぎる。敵同士の関係がだんだんとより良くするためにはどうすべきか劇の台本を磨いていく。以前、演劇入門という本に「話を発展させるには第三者が必要」と書いてあった。第三者がいないと予想外の展開に持っていくのが不自然になってしまうからとのこと。でもこれを見ると全くそんなことなかった。多分「見せる→ダメ出し→直す」のフレームがあることで2人の人間性も浮かび上がってくるようになっているから。第三者ではなく「括るフレーム」の強さを感じた。

終わった後、お客さんはみんなスタンディングオベーションだった。自分も立った。こんな舞台自分も作ってみたいなあ。憧れの作品。

パンフレットも復刻版DVDも買った。取り急ぎ私はこの感動と感謝をお金という形でお伝えします。お金は落とせる時に落とした方がいい。


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