はじめてサウナで話しかけられた日
仕事で福島に来ている。
泊まった部屋のお風呂に元気が無くて萎える。
決して汚いわけではないし、古いわけでもない。
ビジネスホテルだからそこまで求めていたわけでもないのだが、入りたい気持ちにならない。
とにかく元気が感じられないのだ。
調べると向かいにサウナと大浴場があるホテルがあるらしい。お風呂だけ使うこともできるらしいので走って向かう。
入ってみると人もまばらなのでこれはゆっくりできるなと思った。シャワーを浴びてサウナに向かう。
一番上の熱いところに行き、あしたのジョースタイルで体を温めていた。すると隣から、
「熱いすか?」
と声をかけられた。
まゆげと目が細い同世代ぐらいの人だった。
少し訛りがあったから東京の人ではなさそう。
「え、あ、いやまだいけますね。」
「っすよね。上げていいですか?温度。」
「あ、はい。」
するとその人は水風呂から水を桶ですくってサウナの石にぶっかける。
熱風が充満する。かけすぎだろ!と思ったが
「熱いっすね、、!」
としか言えなかった。
これで終わりかと思ったら
「パーマかけてるんすか?」
と言われ、
「あ、はい。」
「じゃあタオル頭に被っておいた方がいいすよ。取れちゃうんで。」
と初対面のパーマ事情まで足を踏み入れてきた。
なんだこの人は。と思いながら熱さに耐えきれず外へ。水風呂に入った後も会話は続いた。
「いくつですか?」
「26です。」
「え、年下かと思ってました。自分24す。」
年下と思ってガンガン来てたのか。
「出身どこっすか?」
「自分は東京です、出張で来てて。」
「自分も出身福岡で、仕事場は茨城なんすけど今日福島で働いてたんすよ。」
自分も、にかかってる部分が少なすぎやしないか。全然共通点ないぞと思う中、自分でも驚くことに気づいた。
案外嫌じゃないな、この絡み。
私は友達が少ない。
厳密には同じコミュニティで暮らしている頃は友達だと思っているのだが、いざ大学を卒業してそのコミュニティから外れると、会う人が全然いなくてビックリする。その原因のひとつとして、私が人に開示することが極端に好きではないのが挙げられる。そんなやつに自分のことを開示したくないに決まっている。
でも今回はどうせこれっきりの関係だと思えて話しやすかった。流れで一緒にサウナに入った。入るや否や、
「俺、スパン短く入るのが好きなんすよ。だからもう熱いす。」
強がってる感じもかわいい。
年下と聞くと一気に茶目っけも感じられる。
するとサウナの下の段から、
「いや〜若いって良いっすね。」
と新しい人が会話に入ってきた。聞くところによると今年で30歳で、地元で塾を開いているらしい。
24の青年がニヤリと笑い、
「いや、30ってこれからっすよ。」
といい、また水をサウナの石にかける。
「かけすぎて床びちゃびちゃになっちゃいました笑」
「これ見つかったら怒られるって笑」
と高校生のような会話をした。なのに、
「自分もう限界っす。」
と、まだ2分ぐらいしか経ってないのに青年は外に出る。急に30歳塾講師とサシになった。
「東京ってどこら辺なんすか?」
「〇〇区です。」
「え、俺(近くの駅名)に住んでましたよ。大学生の頃。」
「ええ!」
聞くと私の最寄りから2つ離れたところに暮らしていたらしい。近くの美味しい定食屋さんを教えてもらった。まさか福島で最寄りの定食屋を知るとは。
この関係いいな。
今回は絶対ここで終わるけど、友達って本当はどこでも出来るものなのかもしれないと思った。話がしやすければもうそれって友達なのかも。
外に出て休みながら24の青年と話していると、サウナから中年男性が出てきて青年に、
「おう、サウナ入んねえのか?」
と話しかけた。すると青年は、
「いや〜もう5週目なんすよ〜」
といいながらおじさんと一緒にサウナに吸い込まれていった。
果たしてこの2人の関係は仕事仲間なのか?
それともここで知り合った友達なのか?
泊まったホテルのお風呂に元気が無くてよかったと初めて思えた日だった。
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