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私と人生の1冊たち

自分の人生を振り返ると、何冊かの本から強い影響を受けていることに気づく。
こういう風になりたい、こんなことをしたい。こんな人生を過ごしたい。
そしてそれらとの出会いは、かなり偶然だったように思う。
私の人生の一冊目は、宗田理の「ぼくらシリーズ」以外にあり得ない。
出会ったのは小学生低学年くらい。表紙のイラストに惹かれて読み始めた。わかる人にはわかると思うが、図書館のラミネートされたハードカバーの児童書の中で、「ぼくらシリーズ」は洗練されていてパキっとした色が目を引くのだ。それにイラストも明らかに子供向け、の絵柄じゃなくてかっこいい。だから頑なに文庫版を読まなかった記憶がある。
ここで感想を書くのは何か違う気がするので、というかうまく文章にできないので書かないが、理不尽な大人に立ち向かう登場人物たちが、小学生の私にはとにかくかっこよく見えて仕方なかった。ドキドキわくわくが読んでいる間ずっと続く。読み終わった後も続く。彼らの感情が自分にも伝道しているのが読みながら実感できる。
書いてて思ったけど、これ、彼らを通してこんなやばい本を書ける宗田理に憧れている説ある。多分意識していなかっただけで実際そうで、小学生の頃は本気で小説家になりたかった。何度か雑誌に投稿したこともある。まあそう簡単に上手くはいかないし、中学の一つ上の先輩にその雑誌に2本も投稿作品が載っていた先輩がいて(見つけた時はびっくりした、本読んでたら知ってる名前があったから)、打ちひしがれてそこからあまり書かなくなった。
まあさておき。
次は、私の人生最大の番狂わせを起こした本を紹介しよう。
「神様のカルテシリーズ」だ。
こいつを読んだせいで、私の人生はとんでもないことになった。いい意味で。この本を読んだきっかけは何だったかな、と思い返すと、ベネッセの文庫本プレゼントだという記憶と、当時気になっていた子がおすすめしていた記憶が出てきた。両方違うかもしれなけど、多分両方正解だと思う。
ベネッセの文庫本プレゼント企画には本当に頭が上がらない。この企画でたぶん自分では買わなかっただろう作品に、5~6冊は出会っている(兄弟分もらえたので)。
小学生6年生のとき、当時好きだった子がいた。甘酸っぱい。彼は頭もよくて、運動もできて、趣味も似ていて(当時私の中で空前の戦国武将ブームだった)、笑いのツボが似ていた。気がする。正直あんまり覚えていない。
彼もなかなかの読書家で、彼を含めた同級生で面白かった本の話とかしてたんだと思う。覚えてない、笑。そこで多分この本を知ったんだよね。多分。
だから「神様のカルテ」を選んだ。すぐ読み終わった。多分一度も休憩せずに。そしてすぐに図書館に2作目を借りに行った。それもすぐに読み終わった。息継ぎせずに泳ぐように、夢中になって読んだ。し、号泣した。3冊目は刊行されたばかりでまだ図書館になかった。買いに行った。1作目は文庫でもっているのに、ハードカバーを躊躇ぜず買った。読んで、また1から読み返して、2冊目も文庫で買った。ここまでに多分1か月もたっていないだろう。今は全シリーズ文庫で所持しているが、ハードカバーの三巻も大事に取ってある。
この本の感想も例によって書かないが、この本のせいで、医者という職業に憧れた。主人公は決して凄腕の外科医でも、派手な処置をする救急医でもない。地方の市民病院のちょっと風変わりな内科医だ。でも、本当にかっこよくて、一時期本気で内科医になりたいと思った。受験勉強がつらくて諦めた。でも結局ド文系だったのに理転して、理系大学に進学して、今臨床医と一緒にがんの研究をしてる。誰がこの展開を予想できようか。私が一番してなかったよ。
今でも、良く読み返す。研究のモチベーションがなくなりそうなとき、進路に迷うとき、今が正解なのかわからなくなって立ち止まった時、必ずこの本が体を軽くしてくれる。余計なことが飛んで行って、自然と向かう道が見えてくる感じがする。
読書とは実に面白く、不思議で、楽しい。
ふと振り返ったととき、人生もそうであってほしい。


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