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マンデラ小説「M.e」EPISODE2 第7話 「ヨハネの黙示録/前編」

【「兄」インディ・ホワイト編】

∶前回までのM.e∶
インディ(Dr./ドク)とエース達はロンドン動物園にてトカゲを撃退。保護要請した女はレプリティアン・ヒューマノイドであった。トカゲ女は日本にトカゲ親玉の「オリジン」が居ると告白する。

■201☓年 7月 「Qアノン」アジト■

夏の昼下がり。

窓から覗く太陽は、カンカン照りで見ているだけでも汗が吹き出そうだ。

この国の夏の気候は半端ないな。

湿度が高いからだ。

しかし、此処は対照的にエアコンが効いていて快適だった。

天井には、古い大型のシーリングファンがゆっくり回っている。

デカい観葉植物が窓際によく似合う。

調度品も含め、ドラマでよく見る探偵事務所の様な設えだった。

俺はバカでかいソファにどっしり座っている。

これまたデカいテーブルに置かれた珈琲を飲んだ。

鼻を擦ってニヤついた。

「この珈琲は美味いな」

珈琲カップを持ち直して改めて思った。

そして…俺の

この眼の前で起っている、不思議な状況に頭を抱えていた。

「どうしてこうなった?」


■201☓年6月ソールズベリー■

ロンドン動物園から、トカゲ女をロンドンのソーホー街にある「J」のアジトに送り届けた。

表向きは「衣類のセレクトショップ」だ。

俺の頭にエースが、子供用の白いハットを被せた場所だ。

鼻を擦って笑った。

店の奥のヤードでは、パソコンやら変梃な機械やらがあり、映画のセットのようで「秘密基地」みたいだ。

「Qアノン」の緑の2階建てロンドンバス。

トカゲ女と俺達を乗せて、此処までやってきた。

ショップのある建物の裏通りは、バスが通れる道幅がある。

アジトの裏側に横付けした。

飛行機の搭乗のような蛇腹がバスから出て、アジトの扉まで繋がった。

これで、外からバスからの人の出入りは完全に見られない。

蛇腹を出す前に、俺とエースはバスの外に出て周囲の警戒に当たった。

人通りは殆どない。

「SmartGlass」の性能を使って赤外線モードにする。

これで周囲を見るとカメラでの盗撮がチェックできた。

ま、アナログカメラならすり抜けられるけどな。

2人別々の通りを検索しながら歩くんだ。

本当はそんな事をしなくても、アジトのビルには無数のカメラと、センサー、そして偽装できる周波数装着があり、出歯亀が居ても排除はできるらしい。

月の衛星からも空撮してチェックしてある。

それらを後で聞いて「俺達は要らないじゃやないか」とエースに愚痴った。

「俺達の五感に勝るものはないんですよ」

愛嬌のある英語と、変なジェスチャーで俺を笑わせた。

トカゲ女をアジトに送り届けてから、俺達は「J」に頼んで鍛えて貰うべく「フロリダ米軍ブートキャンプ」に志願したんだ。

別働隊が、ファーストトカゲを簡単に制圧する様を見た。

俺達も、彼等のように戦えるトレーニングをしなければいけなかったからだ。

俺は実際に、バカでかいトカゲとやり合って痛感したんだ。

コイツ等を倒さないと前に進めない、と。

フロリダ州の米軍キャンプでは、俺達のチーム「ホワイト・ハット」はさらに強くなった。

確信があるんだ。

他にも5人の仲間がメンバーとして一緒に訓練をしたんだ。

初合流した「K」。

癖のある訛りの英語を話す男だ。

彼は「Qアノン」の主要メンバーで、エースと同じく驚くべき体力と技術があり刺激になった。

またソウルの帝王の「JB」の名前をもじった若い奴は面白かったな。

何故か俺によく絡んでくるんだ。

弟のジャックを思い出したよ。

余興で「JB」にソウルステップを良くやらせた。

ファンのくせに、ステップの下手さ加減には大ウケだったよ。

エースの英語と、変なジェスチャーといい勝負だったよな。

実りのあるキャンプだったよ。

キャンプ中にエースには、聞きたい事が山ほどあった。

トカゲ女の事も、他にいろいろ聞きたかったんだが…話す時期がきたらヤツから話してくれるだろう。

大切な仲間だからな。

とにかくキャンプではトレーニングに集中したんだ。

1ヶ月間のハードキャンプも終わり、俺達「ホワイト・ハット」はトカゲ討伐の力を身に付けた。

そして、俺達はこちらの世界線のロンドンに「スライド」して戻ってきた。

それは「J」の持つテクノロジー。

平行世界に移動できるオーバーテクノロジーだ。

知らなければバカバカしい戯言だが、実際に体験した身としては笑うしかない。

「ナントカの杖」

と、その平行世界にスライドする技術の名前だ。

杖は使ってなかったけどな。

ただの愛称のようだ。

鼻を擦って笑うよ。

トカゲ女も言っていた「オリジン」が隠した「セブンズ達」の技術らしいんだが「ナントカの杖」は3つあるらしいが…俺はあまり興味が無い。

「J」が俺達に説明した平行世界への移動の技術の話。

彼の御高説が悦に入ると「何を言っているのか」サッパリ分からない事になるんだ。

尊敬する男なんだが、これだけは頂けない。

ランディはトイレにも行かせてもらえなかったんだ。

俺は睡魔と戦っている時に「ナントカの杖」と言ったのを耳の端で聞き取った程度だ。

杖なんて使わないのに、いい加減だな。

まぁ、名前なんてどうでもいい。

肝心なのはトカゲ人間の討伐だからだ。

当時の状況を思い出して鼻を擦って笑った。

………



ロンドンのソーホー街から、車で2時間程にあるソールズベリーの「遺跡群」

デカい石を四方に囲んだ、有名な「ストーン・ヘンジ」だ。

エースと俺達「ホワイトハット」のメンバーは、あの緑のロンドンバスで、その遺跡の駐車場まで来た。

時間は夜中だ。

夜風が気持ちいい。

月夜もあってか、幻想的な場所だった。

当然、人はいないし遺跡見学の営業も終わっている。

エースを先頭に俺達は歩いていた。

「J」に貰った周波数装置の「ブレスレットとペンダント」を身に着け作動させてある。

これで、この世界の人間には認識できないそうだ。

透明人間か?

馬鹿馬鹿しい。

子どもの遊びだな。

心の中で毒づいてニヤついて鼻を擦る。

「SmartGlass」を装着しているから、真っ暗な夜道も明るく見える。

俺達は迷いなく歩けた。

ゲートの前で人影が見えた。

エースが、SmartRingで交信してきた。

「Hey! ゲート前の人物は「Qアノン」のメンバーだ。心配するな」

エースは、英文だとイケてるんだけどな…笑ってしまったよ。

ゲート前で待つ人物を見て俺達は驚いたんだ。

ロンドン動物園のスタッフ出入り口で「つまらなそうな顔をしていた老人」が立っていたからだ。

昼間は分からなかったが、かなり背が高い。

あきれたよ。

全く「Qアノン」には驚かされるよ。

老人が俺達に移動の指示を出す。

目の前にある「ストーン・ヘンジ」の石組み。

この場所が平行世界へ「スライド」移動するのに適した所らしい。

詳しくは「J」にでも聞いてくれ。

眠らない自信があるならな。

このイギリスにある「ストーン・ヘンジ」から繋がる平行世界は固定されているようだ。

「なんとかゲート」と話していた覚えがある。

「ゲート」が双方で固定された場所は、フロリダ州に存在しているようだ。

マイアミにある「コーラル城」と言う場所に移動するそうだ。

何でも馬鹿デカい石を積上げた摩訶不思議な所だそうだ。

「デカい石が好きなんだな」

独り言で毒づいた。

老人曰く

「JAPANだと、こんな不便な手間はいらない。

そして「Torii」があるから何処の街からでも移動できるんだ。

地場のEnergyが豊富なんだ。

それでJAPANでは照射装置が使えるからな。

移動は簡単なんだよ」

俺は困惑した。

「Tori?」

「地場のEnergy?」

「照射装置?」

やはり日本には何かあるようだ。

オリジンも日本の何某にいるようだしな。

考えるのは面倒くさい。

「ちゃっちゃっと移動させてくれ」

説明途中の老人に向かって言った。

エースと老人は、顔を見合わせて、変なジェスチャーを交わした。

俺は変わり者らしいな。

ファーストトカゲにぶっ飛ばされてから何かが変化した気はする。

どうでもいい話だ。

老人は、手のひらサイズの金属性の黒い「CUBE」のようなモノを手に持っていた。

そのまま、真っ暗な「ストーンヘンジ」の手前の石組みまで歩いて行く。

石組み隙間にCUBEを入れたように見えた。

「Good Luck」

老人は顎で合図をした。

そのままストーン・ヘンジの石の間を通れと言う事だ。

俺は先頭で歩いた。

石の間を通る時に、頭痛が襲ってきた。

鼻もきな臭い匂いがした。

耳にも圧力を感じ耳鳴りがした。

事前にエースから「立ち止まるな」と言われていたので、気にせずに歩み続ける。

SmartGlassはポケットに仕舞ってある。

歩きながら薄目になった。

暗い靄がかかったように見えにくい。

スタートから20歩も歩いていない。

ストーン・ヘンジの「円の真ん中」までは来ていないはずだ。

頭の重さも頭痛も、鼻腔のきな臭さもキレイに無くなった。

新鮮な優しい匂いが、急に鼻腔を突いた。

確認しなくても理解した。

これは別の土地の匂いだ。

暖かい所だ。

足元が、土から芝生に変わっていた。

暗闇が晴れたように視界が開ける。

夜空の星が綺麗に見える。

時間経過は変わらないようだ。

星明かりで周囲が割と見える。

後ろを振り返ると、デカい石が多数組まれていた。

神秘的で驚いた。

周りを見渡しても、ストーン・ヘンジの歯抜けのデカい石は見当たらない。

全く別の場所だ。

ホワイトハットのメンバーも左右に並んで立っていた。

皆、無言で周りを確認する。

「Hey! 月は、恥ずかしくて隠れてるようですね。代わりまして星明りが綺麗です」

不意にエースの声が掛かる。

彼は、何時の間にか前方の暗闇から現れた。

格好を付けた台詞を言ったつもりなのだろうが…おかしくて笑ってしまったよ。

俺達はアメリカのマイアミに来た。

■201☓年 6月 ロンドン■

1ヶ月に渡るキャンプも終わり、逞しくなった俺達は、ロンドンのソーホー街のアジトに戻ってきた。

「ホワイト・ハット」の、これからの活動の作戦会議だった。

既にキャンプ基地ではエースと共に、これからの活動の目的やらは話が通っていたが、改めて情報共有をしたかったからだ。

「J」の主導で会議は進み、俺達は予定通り日本に向かう事になったんだ。

俺達「ホワイトハット」チームの目標は、全世界を牛耳っているトカゲ達の親玉の「オリジン」。

ヤツを始末する事だった。

他の「Qアノン」のチーム達も別のトカゲ人間達の討伐だ。

このロンドンでも討伐が開始される。

イギリス王室の闇が一掃されるだろう。

俺達は、準備万端で日本に飛んだ。


■ 201☓年 7月 東京 ■

俺は珈琲を飲みながら、目の前の光景に困惑していた。

東京の六本木にある、細長いビルの一階にある賃貸オフィス。

「Qアノン」のアジトの1つだ。

表向きは海外の衣類買い付けを生業とする会社らしい。

衣類が全く置かれてないのは笑ったよ。

内装は探偵事務所のようで、センスがいい。

「あら?貴方、なかなか腕前がいいのね。とても気に入ったわ」

30代くらいの女性。

顔立ちは華やかだ。背も高く手足も長い。

赤毛のロングヘアのフランス人だ。

手鏡を合わせて、自分のヘアスタイルの仕上がりを見て嬉しそうだ。

ストレートヘアーを下ろしていただけのスタイルが、ふんわりとしたアップスタイルに様変わりしていた。

「それは大変ありがたいですね。お手の物でしたよ」

エースが例の愛嬌のある英語で返していた。

それにしても、エースは何でもできるな。

珈琲の淹れ方もスペシャルだし、ヘアスタイルのセットまで出来る器用さまである。

「エースは何でもできるんだな。珈琲美味かったよ」

エースは、良く分からないジェスチャーをして笑顔で返した。

声に出して笑ったよ。

まったく愛すべき男だな。

俺は珈琲カップを持ったまま

「どうしてこうなった?」

頭を振った。

ソーホーのアジトで東京行きが決まったが、俺達チームはバラバラで入国する事になった。

日本では「シュウキョウ」グループの攻撃的な工作員が至る所に居るそうだ。

勿論、こいつ等はトカゲ側の人間だ。

俺達「Qアノン」は狙われている存在らしい。

諸外国とは違い、トカゲ達は「日本抹殺」を計画しているそうだ。

国ごと滅ぼそうとしているらしい。

トカゲ達が「日本」を非常に恐れているからだ。

日本人が「覚醒」するとトカゲが世界中から消滅させられるそうだ。

トカゲの親分の「オリジン」も日本に潜伏しているし、この国には何がある…大きな危険がある国だった。

「Qアノン」の日本での活動は警戒されている。

なので、俺達はバラバラで入国する事になったのだが…

俺達は3人のチームになってしまった。

俺とエースとフランス女。

ソーホーのアジトで「J」が決めた事だった。

フランス女を「アドバイザー」として紹介された時に「なんだコイツ?」くらいにしか思わなかった。

場違いなモデルのような女なんて足手纏だからだ。

しかし、女の中身を知って腰を抜かしたよ。

ロンドン動物園で助けた「トカゲ女」だったからだ。

「ギレーネ・マックウェル」

トカゲパーティーをやっているエプスタイン島。

エプスタインの相方だった女だ。

しかもレプリティアン・ヒューマノイドのトカゲ女だ。

コロナワクチン/COVID-19 ワクチン/を本当に打たれたマヌケ女でもある。

劣化ワクチンで、トカゲのDNAが破壊され呪縛から解放されたトカゲ。

危険人物だとしてトカゲ組織から追われ、保護要請をしてきた、おかしな女だった。

俺は信用していない。

日本にいる「オリジン」を退治するのに必要な情報や対応を買って出たそうだ。

俺は一応反対した。

ま、「J」を信頼しているから、本当は反対せずに指示に従うつもりだが、トカゲ女の出方を見たかった。

トカゲ女と他のメンバーとのやり取りを見ていると「J」の意向が見えた。

「J」としては情報は貴重らしいが…こちらの情報が満載の「Qアノン」アジトや他の拠点に置いておく訳にもいかない。

DNAが切れたとて、いつ寝返るかもわからない。

エースと俺が「監視と制圧」として帯同していれば問題なし、という感じは理解した。

そしてチームとして東京にやって来たんだ。

俺は、ソーホー街のアジトでの出来事を思い出していた。

コップの中身を飲み干してソーサーに置いた。

俺的には、何と言うか…3人が、ギスギスして…腹の探り合いなぞをして…緊張感を持ってのチームのイメージで来たんだが…。

「なんだこれは?」

アットホーム過ぎて気が抜けたよ。

エースとトカゲ女なんて、既にあんな調子だし。

トカゲ女の名前は「マックス」と呼ぶ事に決めた。

俺が、公共の場所で「トカゲ女」と言っていては面倒が増えそうだからだ。

マックスは「好きに呼んでいいわよ」と意に介さずケラケラと笑う。

ポジティブと言うかやたらと明るい。

調子が狂う。

そうなんだ。

この女といると調子が狂うんだ。

エースは英語がアレだから、この女といいコンビになってしまってるし…。

2人の数々のやり取りを思い出して、鼻を擦って笑ってしまったよ。

オリジンを倒す緊張感が吹っ飛んだよ。

「J」のオーバーテクノロジーでマックスの顔と肌は、その辺にいるフランス人女性になっていた。

年齢は30代前半に見える。

髪の毛には驚いた。

試しに引っ張っても、人間の髪の毛のように頭皮が動くんだ。

精巧な作り物だった。

「痛いわよ」とケラケラ笑う。

不思議に思っていると

「周波数で物質の形を変えただけ」

と「J」は言うが…詳しい話は面倒になりそうだから聞かないことにしたよ。

しかしヤツの情報は大きい。

来日初日の空港で

「アイツとアイツはトカゲだわね」

事務所でネットの報道番組やテレビのタレントを指して

「トカゲだわよ」

と初見で的確に言い当てた。

エースが驚いていたんだから本当なのだろう。

俺達の目標の「オリジン退治」もはかどるのは間違いない。

「J」の説得は大したものだと感心する。

そしてマックスも、俺達と居るほうが安全だと認識しているんだろうな。

「ねぇ、もうちょっとセクシーなセットにできないかしら」

想い耽っていた俺は、マックスの声でちょっとビックリした。

マックスが、エースに科を作ってアピールする。

セットの変更をお強請りしていた。

エースに、変なジェスチャーで断られているのを見て俺は吹き出した。

………

「何故日本人がトカゲ達の脅威になっているか?…そうねぇ…。」

エースにヘアセットを直して貰ったマックスが思案した。

1度目のセットと何が変わったか、サッパリ分からないが、その辺のモデルよりも顔立ちがいいのは判る。

きっと「J」に加工して貰った顔と髪質が気に入ったんだろう。

ご機嫌なのは理解した。

自分の元仲間を「トカゲ」と呼び捨てにするのがおかしくて、鼻を擦って笑ったよ。

エースが淹れた珈琲を飲みながら、俺の最大の疑問をぶつけたんだ。

「簡単に言うと日本と言う国と日本人は、異質な存在なのよね」

セットした髪の端を手でクルクルさせて話した。

「人間ではなく宇宙人とかか?」

冗談で茶化してみた。

俺の質問に目を輝かせたこちらを見た。

「あら!鋭いわね。

そうなのよ。

日本人達は別世界の人間なのよ。

宇宙人とかでは無くてセブンズ達の魂と繋がっているのが日本人なのよ」

セブンズ達が日本人?

「セブンズ達は、オリジンに地球から追放されたんじゃなかったのか?」

魂とはどう言う意味だ?

SOUL?

SPIRIT?

俺の後ろで珈琲を飲んで突っ立っているエースを振り返った。

「エースはジャパニーズんだよな?意味を教えてくれないか?」

困惑顔をしたエースは他所を向いて日本語で話した。

『俺の英語だとドクはいつも笑うから、君が代わりに答えてくれないか?』

パソコン作業をしていた日本人の女性に話したようだ。

『いいわよ。その代わり美味しい珈琲を淹れてね』

日本語で答えると、彼女はチェアから立ち上がり、ポニーテールを揺らしてマックスの隣に座った。

どうやら、彼女がエースに代わって説明をしてくれるようだ。

日本人にしては、背が高くて手足が長く、髪は栗色のロングヘアだった。

マックスと遜色ないモデルのような容姿をしていた。

「うーん…「J」の受け売りなんだけれど、彼が話しているそのままを話すわね」

彼女はマックスの横で足を組み直した。

綺麗な英語で話した。

マックスは、エースが珈琲を淹れなおすのに興味があるようで立ち上がり、キッチンに付いて行った。

「トカゲが恐れているのは日本人の覚醒なのよ。

覚醒されると、彼等トカゲ達は、この世界から消えて無くなるのよ。

それでね、過去に日本に向けて戦争を仕掛けたんだけれど…返り討ちにあったのよ。

第0次世界大戦があったらしいのよ。

学校では、習った事は無いのだけれど「J」に教えて貰ってビックリしたわ。

だって、鬼とか天狗とか出てきて、まるでお伽噺だったんだから。

あ、ごめんなさい。

関係ない話だったわね。

トカゲ達が日本に戦争を仕掛けて惨敗したのよ。

それでね、作戦を変更して日本人の魂の繋がりを切る事にしたの。

時間を掛けて攻撃を続けているのよ。

それが今の日本の衰退にも繋がっているの。

日本のトップをすり替え、政府を脅かして日本人そのものを消しにかかっているのよ」

覚醒?

何だ?日本人は寝てるのか?

「魂の繋がりとは?なんだ?トカゲは何を恐れている?」

「そうねぇ…日本人にしか分からない概念なのよね。

霊魂と言うか魂と言うのは、自分のご先祖様と繋がって生きている、と言う概念なのよ。

うん、そうね…表現が難しいわね。

後ね、日本人は沢山の神様達と共に生きているのよ。

海外だと神様は「お一人様」じゃない?

イエスキリストさんとか。

でも、日本人は八百万の神様がいるのよ」

「Yaorozu Gods?」

「Eight million Godsよ。沢山居るのよ」

「Really !? 」

俺は本当に驚いたよ。

「トカゲ達が恐れているのは、自分達の生みの親「セブン達」よ。

彼等の意向で簡単にトカゲ達は消されちゃうのよ。

セブン達は、肉体を持たない精神の生き物と言われているわ。

トカゲを作った時にも自分達のアバターを作ったわよね?

牛の顔の人間とか鳥顔の人間とか。

ちょっと気持ち悪いわよね。

でね、そのセブンズアバターが、ファーストトカゲ達を下僕として使ってたのよ。

でもね、ファーストの1人が覚醒して知恵を持ってしまったの。

「オリジン」と呼ばれる個体だわ。

そのオリジンが、ファーストトカゲと謀反を起こしてセブンズアバター達を地球から追放したとされているんだけれど。

実は、日本人がセブン達のアバターなのよ。

今の日本人の先祖になるのかしら。

東方の島国に逃げてきたらしいの。

そして「日本」として建国し沢山の日本人が生またのよ。

その、生まれた日本人達は、セブン魂と魂の繋がりを持てるアバターみたいな者なのよ。

不思議よね。

それとね、島国の特性で、他の国々と交流出来なかったのも良かったみたいね。

他の国々とは「トカゲに支配された」国の事よ。

見つからなかった?と言うのも正しい解釈らしわね。

そして、とても大事な事。

セブン達は追放されてなくて、地球の向こう側で生活しているらしいのよ。

びっくりするわよね。

だから日本人の霊はセブン達の霊魂と繋がってるんだって。

でも、私も日本人だけど、そんな感じもしないし母からも、そんな聞いたことはないわ。

変な話だわね」

クスクス笑って珈琲に口をつけた。

「エースの淹れる珈琲は本当に美味しいわ」

彼女は、幸せそうな顔で窓の外を眺めていた。

俺は言葉を失った。 

直感で理解したからだ。 

セブンズアバターが逃げ延びて日本人になった事。

日本人と日本の国がセブンズ達が繋がっている事。

八百万の神様とは、セブンズ達の事だろう…。

鳥肌が立つ。

【莫大な金を産出し宮殿や民家は黄金で出来て財宝に溢れている】黄金の国のジパング。

DNAの配列に日本人にしか無いと言われる意味不明な【Yap遺伝子】を持つ。

鎖国をし諸外国との交流を避けてきた世界一古いエンペラーが居る不思議の国…ニッポン。

そして宗教感が世界でまるで異なる日本人。

無限の神様と共に生きている日本人。

他国の宗教を尊重できる日本人達。

敗戦国から世界一の豊かな国になった日本。

ロンドンで「Qアノン」の老人から聞かされた「平行世界へのスライド」は日本なら簡単だと言う台詞。

そして「Qアノン」の「J」と「エース」は…日本人だった。

俺は、両足の膝の上で両手の指同士をクロスさせ、目をつぶり思案した。

おかしな日本人の生態…符号が合う。

思案している俺に、構わず彼女は話しだした。

「それでね…その日本人達が覚醒すると、地球の向こう側にいるセブン達と交信し合えるらしいのよ。

具体的な事は良く分からないのだけれども、セブン達がこちら側に降臨するらしいのよ」

彼女は珈琲を啜りながら話しを続ける。

「セブン達が降臨すると、ほら?何て言うんだっけ?

聖書とか預言書とかに書かれていた「天使がラッパを吹いて大変な事態になる」ってヤツよ。

パッパラって吹くヤツよ。

それでね、パッパラ吹かれるとトカゲ達の作った世界が消されるらしいのよ。

でもラッパなんて吹いてる暇なんてあるのかしらね。

変なお話よね」

クスクス笑う彼女。

俺はハッとして聞き直す。

「ヨハネの黙示録のラッパ吹きの事か?」

「そうそう、そんな感じだわ。ちょっと待ってて検索するわね」

彼女は立ち上がりデスクからノートパソコンを手に持った。

此方に歩きながらKeyboardを叩いて英語の画面をこちらに向けた。

「これみたいだわね」


【新約聖書より】

∶ヨハネの見た啓示は、次のようなものでした。

天の玉座に神がいて、周囲を24人の長老と、ライオン、雄牛、人間、鷲(わし)にそれぞれ似ている4つの生き物が取り囲んでいました。

神の手には巻物があり、7つの封印で封じられていましたが、7つの角と7つの目をもつ小羊が一つひとつ封印を解いていきます。

小羊が封印を解くごとに禍が地上を襲います。

小羊が第7の封印を解くと、世界が沈黙で包まれた後、7人の天使が現れて、一人ひとりにラッパが与えられました。

今度は天使が一人ずつラッパを吹くたびに禍が地上を襲います。

第7の天使が最後のラッパが吹くと、最後の審判が行われることが予告されます∶


画面を読み返して俺は戦慄した。

思わず立ち上がってしまった。

マックスがロンドンで話していたセブンズのアバターの種類の話を思い出した。

確か

蛇を改良したアバターは、後に人間に神と呼ばれた「Enki」

力強い牛を改良したアバターも神と呼ばれた「Enlil」

鳥と人型のアバターは「Manu」と呼ばれたり、他にもアバターは存在したそうだ。

「おい、マックス!」

俺の後ろで立って珈琲を飲んでいるマックスに振り返った。

「天の王座の神はセブンズの事か?

蛇や牛や鳥の4つの生き物とは、セブンズのアバターの事か?

小羊とは日本人の事か?

日本人が覚醒すると、天使がラッパを持って降臨しセブンズ達が世界に災害をもたらすのか?」

顔を真赤にし、一気に問いただした。

マックスはキョトンとした顔をしていた。

「あらあら、嫌ね。

そんな、誰が書いたか判らない変な予言書みたいなのを本気で信じてるの?」

マックスはケラケラ笑った。

俺は、かなり興奮したみたいだった。

焦って馬鹿みたいな質問をした事を後悔した。

頭を掻いて呼吸を整えた。

座り直そうとしたらマックスが後ろから声をかけた。

「でも7つ目のラッパは、まだ吹かれてないわよ」

マックスは振り返った俺の目を真顔で見ていた。

不意を突かれ言葉が出ない。

そんな俺を見て、マックスはケラケラ笑いだした。


【Epilogue/エピローグ】

ロンドンからジャパンの成田空港に到着した。

俺達3人は東京に降り立った。

午前中の10時過ぎだ。

搭乗口から暑かった。

太陽の光から逃げ出したくなる暑さだ。

エースの地元だから、彼の案内で駐車場まで歩いて来られた。

俺達の荷物は、バッグが1つくらいだから身軽に動けた。

立体駐車場の3階の奥。

ここはヒンヤリして気持ちいい。

薄暗く人気が全く無い駐車場。

グリーンの【VOLVO240Estate】が停まっている。

古い車なのにピカピカで目を引いた。

どうやらその車に乗るようだ。

マックスが

「キュート!趣味が良いわ」

まんざらでもない顔をしていた。

こいつも元セレブだからか、変わったものが好きらしい。

鼻を擦って笑った。

VOLVOから1人の女性が出てきた。

お迎え運転手らしい。

日本人か?

背が高く手脚が長い。

栗色の髪が上品で、まるでモデルのようだ。

「貴方がドグなのね。

会うのは初めましてよね?

私は「Q」よ。

ようこそ日本へ」

綺麗な英語を話した。

握手を求めて来たが「Q」と聞いて心底驚いた。

「うそだろ?君がQなのか!?」

クスクス笑いながらQは

「貴方達に、素敵な名前の「Qアノン」を押し付けられる所だったわ。

ホワイトハットのインディさん」

彼女は握手をしながらクスクス笑った。

子供用の帽子を被った俺に「ホワイトハット」と言うチーム名を付けたのは彼女だった。

意外な出合いに、驚きが止まらないかった。

「いやいや、参ったよ。

【Qアノン】と言う凄い組織のQが、君のような素敵な女性だなんて驚きだよ。

君が組織のBOSSなんだね」

「Qアノン」「Q」の名前は、世界中に衝撃を持って知られている。

世界の本当の真実を指摘し、トカゲが支配している混沌とした世界の情勢。 

戦争も薬害も全てはトカゲの仕業…それらを暴露し戦いを宣言した強固な組織。

オーバーテクノロジーを持つ「J」がリーダー。

そして彼女はその組織のトップだ。

世界的に有名な「Q」

俺の目の前にいるキュートな女性が組織のボスなのだ。

俺はオーバージェスチャーでソレを表現した。

しかし、彼女は驚いた顔をした。

「違うわよ!

やめてよね。

私は、ただのアルバイトなんだからね!」

顔を真赤にして笑いながら大きく否定した。

俺は頓珍漢なアホ面を晒していたに違いない。

矢面で指揮を取っていた「Q」

現場でも的確な指示で俺達を活かしてくれたスペシャリストの「Q」

「Q」がまさか「Part-Time Job」だと?

俺は人目も気にせずに両膝を床についていた。

「あの「Q」が、ア…アルバイト?」

腹筋が震える。

堪えていたモノが吹き出す。

シンとした薄暗い人気の無い駐車場。

俺の大きな笑い声が響いた。

本当に久しぶりに、大きな声で俺は腹を抱えて笑ったんだ。

■■■■next

ヨハネの黙示録/後編

https://note.com/bright_quince204/n/nbe6c7441f3d1

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