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アスペルガーの娘に生まれて6

ドイツの小学校では、毎週火曜日に宗教の時間があった。クラス全員で村にひとつだけある教会に行って司教さまのお話を聞く。司教さまのお話は面白くて、私はこの時間が好きだった。最後に両手をくんで、アーメンと祈る。私は、大人になったら級長のアンドルアスと結婚できますように、と祈った。

女の子は、小学生の時からピアスをしている。私もピアスをしたいと母に言ったら、日本に帰って困るから、と許してくれなかった。私はどうしてもピアスがしたいとただをこねたが、母はガンとして許してくれなかった。

私たち一家は、毎週土曜日になるとヴィルツブルクまで車を走らせ、大型スーパーに買い出しに出かけた。
びっくりしたのは、肉のコーナーだ。日本みたいにスライスしたものでなく、塊で肉が売られている。
ガラスを通して中の作業場には、頭と足を落とした大きな牛の肉が整然とぶら下がっている。そんな光景は日本では見たことがなかった。最初は牛さんかわいそう、と思っていたのだが、次第に慣れてなんとも思わなくなった。
生の魚は売られていない。瓶詰めしたニシンの酢漬けか、缶詰のオイルサーディンくらいのものである。

スーパーの出口に小さなお店があった。硬い白パンに焼いたソーセージとピクルスが挟んであって、マスタードとケチャップがかかっている。ドイツではよくあるパンだ。それを買ってもらって、歩きながらほうばる。日本では、行儀が悪いと怒られるのだが、ここはドイツである。みんな歩き食べをしているから、親も怒るに怒れない。私は解放感を感じながら、一層パンが美味しく感じた。

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