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アスペルガーの娘に生まれて7

気候がいい時には、父の車でアウトバーンを飛ばし、フランクフルトまで行った。片道2時間の小旅行である。アウトバーンは、速度制限のない高速道路である。日本ではあまりとばさない父だが、120キロ、130キロで走った。

当時、フォードに乗っていた。アメ車は日本と違って、ただ大きいだけで燃費も悪いという理由でドイツでは人気がない。それで安価で手に入れたものらしかった。

私たち姉弟は、広い車内とはじめての外車にウキウキしながら、車窓を眺めるのだった。
飛ぶように景色が変わっていく。

弟が

あ、ポルシェだ。

と言った。後ろに黒のポルシェが近づいてくるのが見える。

私が

ただいまポルシェ接近中、ただいまポルシェ接近中

とリポーターの真似事をしていると、ポルシェが
あっいう間に横にならぶ。抜きさる。先の方で見えなくなる。
その間10秒とかからない。
姉弟で

ポルシェ早いぜ!かっこいいー!

ときゃーきゃー騒いだ。

ドイツではベンツやポルシェは国産だが、やはり高級車である。フォルクスワーゲンやBMWに乗るのが一般的だ。ちなみにドイツではトヨタが1番の高級車だ。性能、燃費ともにいいトヨタはドイツ人に高く評価されていた。

フランクフルトは、ビルやマンションが立ち並ぶ大都会である。
毎週土曜日に、フリーマーケットが開かれる。大規模なフリーマーケットで、かなりの歴史もあるらしい。

こんなの売り物になるの?というガラクタから、マイセンの磁器や銀食器などの高級品まで種々雑多なものが売られていた。

両親はそこで掘り出しものを見つけて、店主と値段交渉するのを楽しみにしていた。

その後、フランクフルトにひとつだけあった日本食の店に行った。そこでは、味噌や醤油などドイツではなかなか手に入りづらい調味料を買った。1か月前の納豆も冷凍で売られていたのには驚いた。
私は、2か月おくれの”小学校3年生”という雑誌を買ってもらった。まだ、Amazonなどない時代である。

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