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猫の日(大遅刻)

 こんにちは。昨日の投稿に、なんかめちゃくちゃいいねを押してもらえてとても嬉しいです。ありがとうございます! 定期的に更新していこうと思うのでよろしくお願いしますm(__)m
 遅刻ですが、前に猫の日に書いた短編を投稿します。獣化や何でも許せる方でお願いいたします。

 リビングでうとうとしてふと目を覚ますと、大きな毛玉が隣にいた。
 ⁈ 何だこれ──と思ったら、ソレが
「うーん」
と伸びをしてゴロンとこちらを向く。
 え…… これはネコ? しかも、人ぐらいの大きさって⁈
「でかっっ!!」
 思わず大きな声を上げると、うっすら目を開けた。
「……ん? 何ニャ……」
 猫がしゃべった───!!
 何だこれは、ドッキリか? こんな大きい品種なんて普通いないよな、というか何でこんな所に動物が……どこから入ってきた⁇
 俺の頭上にクエスチョンマークがいくつも浮かんでは消える。

「どうしたんですニャ。生田(いくた)さん」
 猫が前足で目をこすりながら聞いた。
「何で俺の名前を知ってんだ⁈」
「当たり前ニャないですか。上司だし」
「はぁっ⁈」
「もしかして寝ぼけてます?」
と、首をかしげる。

 え、嘘。かわいい…… いや、それよりまずこの事態を把握(はあく)しなくては。
「俺の顔を忘れたんですニャ」
「猫に知り合いなんかいない」
「何言ってんですニャ。成瀬(にゃるせ)ですよ」
 猫は、会社の同僚の名を名乗った。
「はあ⁈」
 そういや、こいつは彼の髪と同じ赤い毛並みをしている。声も似ている気はするが──
「ちゃんと起きてますニャ?」

 いやいやまず自分の姿を見てみろと、手鏡を渡した。奴は前足で器用につかんで覗(のぞ)き込むと、全身の毛をギャッと逆立てる。
「ニャッッ⁈ これが俺ニャ!?」
とショックを受けていた。
「あ……手が肉球でできてる。え、オレ毛だらけニャ?
わー、いい年の男が猫耳てマジかニャ……尻尾もあるって、どうニャってんニャ!!」
 奴はようやく自分がどんな状態なのか理解し、取り乱している。毛並みで見えないが青ざめているようだ。どうやら、しゃべり方も変な事に気づかなかったらしい。
 俺は落ち着きを取り戻すため眉間を手で押さえ、ふうと息をついた。

「まあ、そう気を落とすな」
 そう言って奴の背中をなでる。と、その感触に驚いた。
 とても触り心地がいい。毛艶(けづや)がよくてすべすべしている。気持ちよくて、つい何度もなでてしまう。
 見ると、奴も目をつぶってなでやすいように心持ち身を寄せていた。喉を小さくゴロゴロと鳴らしている。こいつも気持ちがいいのか……
 ふと、ある事を思いついた。
「なあ、ちょっとお願いがあるんだが」
「何ですニャ」
「その――抱きしめてもいいか」
「ニャッ⁈」
「いや……一回だけでいいから」
 我慢できなくなって両腕をその体に回す。

「あ、ちょっと」
 彼は身を引こうとするが、そのまま顔を寄せた。
 うわー、めちゃくちゃ気持ちいい……体にもふもふの毛皮が当たっている。あったかい──
 息を吸うとお日様の匂いがした。ここは極楽か、それとも桃源郷(とうげんきょう)か。たまらず、頭を毛の中に埋め込む。

 夢見心地でいる俺に、
「そろそろ離してくださいニャ……」
と遠慮がちに声がかかった。
「あ、すまん」
 慌てて手を離す。はぁ……気持ちよかった。

 彼は相変わらずしょんぼりしている。
「原因は何だろうな」
「分かんニャいっす」
「何か変なものでも食ったか」
「いや、そんな事はニャいと……」
 思案しながら猫成瀬? が言う。耳を伏せて背中を丸め、しっぽをくるりと体に巻きつけていた。分かりやすいと心の中で思う。

「仕方ないな。これから元に戻る方法を探そう。俺も協力するから」
と背中をなでた。その感触がよくて、またうっとりする。これは依存性があるな……たまらない……
 しだいに意識が遠くなっていき、ふと我に返った。

「……」
 俺は自宅のソファに座っていた。どうやらうたた寝をしていたようだ。
 右手を見ると、毛足の長い上掛けを触っている。
「夢か──」

 しかし、いい夢だった。できればもうしばらく醒(さ)めたくなかったが。
 猫成瀬……よかったな。冬は暖かそうだし、癒(いや)しにもなりそうだ。しゃべり方もかわいかったし。可能なら飼ってみたいなどと、寝起きの頭でぼんやり考えた。
              了

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