願ひ純白   鬼りんご


願ひ純白

          或ひは裸形の意味の愚直相


無色の願ひはたちまち濃く つひに真つ白に実在し
不可視の高みで虚空化した ときもあつた
樹々は幽かな白い憂ひを背景に冷えてゐた

ひとの世には願ひといふ大空がひとつだけある だらうか

さう 非人称の願ひは時空の果てを知らない とか
それはもと 鮫膚の児が吹き曝された悲哀であつた とか
抽象である願ひは祈りといふ具象に化身できない とか

背後では結晶が内への激しい凝縮で破損した らしい
彼岸の香を失つたその欠片はそこここに 濃い恥ぢらひを以て
(わたくしの肩などにも)微笑んでゐるはずなのだつた




(「こどもだま詩宣言」対応  原文縦書き)

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