虚空の鈴の音  鬼りんご


虚空の鈴の音

   或ひは現象としての唐突な転調


踏み迷ふ偽生物の森になびき いつせゐに七点八掛ける十のマイナス五十六億乗倍に凝縮されたれうらんの花花は明滅しつつわたくしの全脳細胞を蚕食してこれにとつて代はり 既にわたくしの口が吐くのはあらゆる花言葉または香り苦い花びら言葉の定常放電に過ぎないとは噂を俟たずよくみづからの知るところ いちづな愛 気品 秘めた想ひ 冬繭 自己愛 ゆきずりの情熱 私を忘れてください 舞ひ上がる願ひ 吹雪き散る過去

語るすべを君知らざれば我もただゑみかへしつつ過ぐる時はも

高くああ光よりも高く響き駈けるよ 色を抜かれた空の果てから さうかつてあをさも青かつた空の果ての奥までここにゐますかうしてここにゐるのですと君の振り鳴らす無辺の鈴の凛凛の無音 が 非存のわたくしをあるひはわたくしではない人人をその残響で打ち清め晒しつくさうとするかのやうに 振り払ひ鳴り響き谺してやまない 急いだ方が良いのかもしれない



(「こどもだま詩宣言」対応 原文縦書き)


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