愛の活断層   鬼りんご

(各行末を明示するため、最終行を除く全ての行末に、原文に無いスラッシュを施しています。)

愛の活断層

或ひは主題音節群による再離陸の試みと挫折


ああこの街ごと朝ごとおほきなリボンをかけて贈りたい/
ひとりひとりのゆきずりの満ち足りて新しい疲れの足どり/
踏切 坂道 鈴懸並木 自転車少女の制服吐息 かつは/
香り発つキリマンジエロの出窓 また屋根屋根の諧調破調/
風を奏でてリボンはふるへましぐらに愛は逆流する/

まちがへて目を覚ますとアラビアの濃く硬い空から次次に/
滴り落ちては宙に翻へる瑠璃駒鳥を乱れ舞ふ粉雪が打つ/
叫びなさい こゑ鋭く瞼りりしく瞳けはしく瑠璃駒鳥よ/
全物理界を却下し無であるおのれを嚥み下しなさい さても/
時こそ今 踏み入るは焦がれあくがれ色情の巷/

ふた言三言久闊を叙する背景の街角は見る見る崩落し/
いよいよ我ら鳥類龍類繚乱時代の到来ですな と/
鉛色に昂まる海の悦びを無花果氏は隠さうとしない/
惑星きつての非存在との呼び声を恣にする虎のリリヲンは/
この時も虚無僧姿で黙黙と苛立ち時に重たく頭を振り/
非情の眼差もうはの空で前肢と牙と強靭な舌とに弄ぶのは/
遠のくざはめきの森の大空に浮かぶ 輪廻流転の冬手毬



(「こどもだま詩宣言」対応  原文は縦書き・スラッシュ無し)


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