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私はよくかわいいといわれる〈17〉合唱コンクール (3)

 秋山達が真面目に参加するようになってから合唱の練習は捗り、日に日に完成度は上がった。そして里奈と高岡の息も徐々に合うようになっていった。音楽の素養がない里奈も何回も高岡と合わせるうちになんとなくだが今のはよかったあるいは悪かったの区別がだんだんとつくようになっていった。
 
 そして合唱コンクール当日。
 
くじで順番が決められ最初は山下のC組、次に相沢美玖のB組。最後が里奈と美琴のA組だった。C組の合唱が終わり、次にB組の合唱が始まった。合唱が始まると里奈は意外なことに気づく。あれ?全然たいしたことない…むしろ下手じゃない…里奈は少し拍子抜けした。朝練の時はあれだけ完成度が高かったのにやはり本番は違うのか…それにしても…ただこれで美琴の恋を成就させられる。沸々と喜びが湧いてくる。心の中で美琴やったよ!と叫ぶ。そしてB組の合唱が終わりいよいよA組の番が回ってきた。 
 A組が舞台に上がる。里奈は指揮者台に立った。高岡が譜面を広げている。A組生徒が整列して合唱の姿勢を取る。美琴が秋山達がA組のみんなが里奈を見る。みんないい顔をしている。すでに勝利を確信した里奈は高岡の顔を見る。高岡は里奈を見て初めて微笑んでからうなずく。里奈もそれに微笑んで返す。これまでの練習の中で高岡とずっと息を合わせていた里奈は、高岡といると居心地のよさのようなものを感じ始めていた。常に静かに里奈を支え続けてくれた高岡に里奈の方にも何かが芽生え始めていた。秋山達と約束した高岡と付き合うというのももう今ではでまかせではなくなった。
 里奈も譜面台に譜面を広げる。広げながら里奈は思った。なんか怖いくらいうまく行ったな…美琴ために頑張ったら私の方が幸せになっちゃうかも。でもそれにしてもB組のあの合唱は何だったんだろう。まるでわざと下手に歌ってるみたいだったな…ん?ちょっと待ってわざと…?
 里奈は指揮者台の上で固まる。その瞬間里奈の脳裏にある可能性が浮かび上がる。
 そもそもなんで美琴と相沢美玖が同時に山下に告白するのかしら…そんな偶然ある?その場所に美琴はわざと私を連れてきたとしたら?それに恋愛になんで合唱コンクールの勝敗が関係するのかしら…だとしたらC組の山下、そして相沢美玖やB組全員、そして美琴や秋山たち私以外のA組全員が…指揮者を私にやらせて私と高岡君をくっつけるつもりでそもそもこの状況を仕組んだとしたら…!すべての点が繋がり里奈は驚愕する。
 固まる里奈にA組の生徒が不審な目を向け始める。  
 里奈はなおも考え続ける。
 そうだ!私が指揮をめちゃくちゃに振ればA組を最下位にすることができるそうすれば計画は失敗に終わるはず!でももしすべてが本当だったら?彼らが私をだましてるという確たる証拠はどこにもない…高岡との練習の日々を思い出す。二人で真剣に取り組んだことは紛れもない事実だ…

 だがしかし…そして里奈は何かを決心したように指揮棒を上げた。 了

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