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流血の話

※怪我の話があります。

血が止まりにくい体質である。
別に病気ではないし、特に血液に異常があるわけでもないのだが、とても血が止まりにくい。
採血ではしっかり長く抑えないと大惨事だし、たいしたことのない怪我でも事故みたいになることがある。『動物のお医者さん』という漫画に血がとても止まりにくい女性キャラがいたので、割といる体質なのかもしれない。

大学生のときのこと。
サークル楝でおしゃべりしているうちにすっかり日が暮れてしまっていた。大学から私の家までは他の人に比べて遠く(ぼんやりしていて下宿争奪戦に出遅れた)、一人別れ二人別れ、最後は一人で夜道を歩いていた。
夜とはいえ京都の大通りなので、地元の田舎道とは比べ物にならないくらい明るい。すっかり油断して歩いていた私は、段差で見事にすっ転んだ。
大した痛みは感じなかったが、恥ずかしすぎてしばらく起き上がれなかった。しかし、いつまでも夜道にひとり倒れていては、なにかの妖怪になってしまう。しかも、あまり格好よくないタイプの妖怪である。
心の中で自分をはげましながら立ち上がると、膝から流血していたが、別に骨や筋に異常のある感じではなかったので、家の近くのコンビニで絆創膏を買って帰ることにした。
コンビニのキラキラしたドアが開いて中に入った瞬間、顔見知りの店員の営業スマイルが崩れた。
下宿最寄りのコンビニであるため、普段から「おやつ」と書かかれたTシャツでおやつを買いに現れたり、深夜に泣きながら殺虫剤を買いに来たり、完全にあだ名つけられるタイプの変な客がよりにもよって流血しながら現れたのだから無理もない。
「事故ですか!?」
「いやー、転んじゃって。絆創膏ありますか?」
「絆創膏の手に負えるでしょうか…」
店員の視線を追って膝を見ると、なるほど、膝が擦りむけたところから傷の大きさと合わない出血があり、ハイソックスが血染めになっていた。幸いにも固まりかけていて床に垂れる心配はなさそうであったが、完全にやばい人である。

また事態をおかしな方向に転がしてしまった。

幸いにも店内にはこちらを見てもいない立ち読み客がひとりふたりいるだけで客は少なかった。
私は絆創膏と登場愛飲していた一リットルの紙パックのリプトンミルクティーを買ってそそくさとコンビニをあとにした。
なお、帰ってから傷を洗うとやはりただの擦り傷であった。

余談だか、大学時代に浴びるように飲んだリプトンミルクティー。最近リニューアルとともに消滅してしまい、新商品ロイヤルミルクティーを飲んでは遠ざかる学生時代を思い出してものかなしい気持ちになっている。

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