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「大きな砂時計をみたい!」小学校の頃の夢を、大人になって寝台列車で叶えに行った



ここじゃないどこかへ、遠くへ、行きたかった

週2〜3程度のアルバイト勤務から、転職して4ヵ月が経った頃、私の体力と心は限界を迎えていた。
8年ぶりのフルタイム勤務、慣れない満員電車での1時間以上の通勤、未経験での事務職は、楽ではなかった。

帰宅後や、休日は何もする気が起きず、ただ横になるだけの状態。
大好きだったはずのアイドルや趣味の読書、ドラマ鑑賞もつまらなくて、楽しいと思える余裕などは全くなかった。職場のトイレでは嗚咽することも増えていた。

そんな状態が続いていた私は、まずい!と感じ、ネットで調べて出てきた「オンラインカウンセリング」のトライアルを始めることにした。
顔も名前も言わなくていい空間で、素直に不安や悩みを相談して1週間がたった頃、なぜか猛烈に「寝台列車に乗って島根県に行きたい!!!!」という気持ちが湧き上がってきた。

今でもあの時、なぜそう強く思ったのかはわからない。
ただ、小学生の頃に観た昼ドラマ『砂時計』の影響で、島根県にある「仁摩サンドミュージアム」に長年興味を持っており、島根県に行くには「寝台列車のサンライズ出雲」が最適だと以前に調べていたことは関係するだろう。
ここじゃないどこかへ、できれば遠くへ、行きたかったのかもしれない。

なんにせよ、その欲望を、その時の私には、無視することは出来なかった。ちょうど1年前の7月の終わり頃の出来事だ。

そこからの行動力は自分でも驚くほど早かった。
サンライズ出雲のチケットを、キャンセル待ちを狙い、無事ゲット!
上司にお願いをし、休みを取ることにも無事成功!
次いでホテルの予約と、荷物の準備をした。思いついてから、乗車日までは1週間程度だったと思う。

心ときめくサンライズ出雲の個室空間

定時で仕事を終え、向かった平日の東京駅。
東京駅に着くなり、朝ごはんのための駅弁を購入。シャワーの使用券をゲットする為、早めにホームに着き、列車の到着を待った。

楽しみにしていたサンライズ出雲の個室空間は、子供の頃に憧れた秘密基地のようで、ときめきを感じた。
不眠気味だったこともあり、慣れない列車の中、眠れるか心配だったが、そんな心配をよそに、ぐっすりと眠れ、岡山駅に到着するアナウンスとともに目が覚める。外はすっかり明るくなっていた。

起きてすぐ、シャワー室に向かう。揺れる電車の中で、頭や体を時間内の中で洗うのは少々難しかったが、貴重な経験が出来た。シャワーを終え、個室に戻り、外の景色を眺めながら駅弁を食べる。

終点出雲市駅へ到着したのは、朝の10時頃。
まる半日近く、乗っていたことになるが、寝台列車での移動は、移動時間も含め旅になる。
外へ出て、きれいな空気を吸いながら、遠くへ来たな、と感じた。

16年越しの願いが叶う、世界最大級の砂時計

今回の旅のはじまりである、「仁摩サンドミュージアム」にも無事行くことができた。16年越しの願いが叶った瞬間である。

世界最大級の砂時計は圧巻で、ずっと眺めていたかった。
私と同じように、漫画、ドラマ、映画の『砂時計』のファンであろう、人たちがちらほら見受けられた。興奮したように、語る人の声を聴きながら、心の中で話に共感する。

『砂時計』にまつわる展示ブースもあり、出演者のサインや台本などの展示物をじっくり見る。

砂時計はひっくり返せば、過去が未来に変わる。
砂が一粒一粒落ちていく大きな砂時計を眺めながら、過去のこと、現在のこと、未来のこと考える。

帰りに、杏ちゃんとお揃いの砂時計をお土産に購入し、「また必ず来ます」と誓い、仁摩サンドミュージアムをあとにあする。

誰もいない砂浜で1時間、海をただ眺めた

「仁摩サンドミュージアム」と「寝台列車」が目的の旅行だったが、時間の許す限り、行きたい場所へと向かった。

出雲大社も参拝でき、パワーをもらえた気がした。
参拝後は、出雲大社近くのカフェで、ぜんざい餅を食べる。

カフェのテーブルにあったノートは、見知らぬ人の旅の記録や感じていることを読めて面白かった。

「出雲日御碕灯台」は、灯台が思ったよりも大きくて、とても綺麗な場所だった。

また、「仁摩サンドミュージアム」に行こうとして、間違えて降りてしまった駅で、次の電車が来るまで1時間、誰もいない砂浜で海を眺めたりもした。東京の満員電車の中、1分電車が遅れただけで、不安になっていた私にとって、心が休まる1時間だった。

間違って降りてしまい出会った「波根駅」
ひたすらひとりで海を眺めてた

想定外なことが起きることも、それすらも全てが愛おしかった。

ホテルは、ドーミイン出雲。安定のドーミインでゆっくり晩餐をする。
お風呂上がりのアイスと、ホテルにあった「砂時計」の漫画を読む。
(芦原妃名子さんの漫画、大好きでした、本当に。心の底からありがとうございました。)

松江では、ぐるっと松江堀川めぐりを体験した。
おじいさんの船頭さんの案内は面白く、低い橋を潜る際に身をかがめたり、テーマ―パークのようで楽しかった。

忘れられない旅

思う存分、島根県を旅した私は、新幹線で帰路につく。

次の日は、朝から仕事で、また日常に戻った。
特に何かが変わったわけでもないし、日常に戻れば、また疲労が溜まり始めた。今、私は仕事を休職中だ。

でも、あの日、仕事から一時離れて、旅をした2泊3日の夏のひとり旅は、本当に楽しかった。
あの日以来、「どこの旅先がよかった?」と聞かれるたび、島根県と必ず答えている。

あのときの行動力と、幸せだと感じた気持ち、小さい頃の小さな夢を叶えた達成感を大切にしたら、また踏み出せる気がしている。

島根県も寝台列車も、私は大いにおすすめしたい。
そして、また行きたい。
今度はちゃんと計画を立てて、家族でも連れて、あるいはパワーが欲しいと言っていたあの子と一緒に。

あの日、駅で話しかけてくれたおばあちゃん、分からなくてあたふたしてるときに優しく説明してくれた駅員さん、堀川遊覧船のおじいさん、人の温かさが、泣いてばかりの私にはすごくあたたかくて優しかった。ありがとうございました。


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