初めて描いた記憶

初めて見た。見えたという記憶はなんとなくだけどはっきりあるのだが何かを描いた幼い記憶は見えた記憶よりもあまりに薄く曖昧となってしまっている。記憶を辿ってたどり着けるのは何歳の頃だったか覚えていないのだけど家にあった山の図鑑?を見てそれを写したくてスケッチブックだか画用紙?だかに鉛筆の線の強弱と鉛筆の濃淡でその本の中で2番目に好きだったエベレストを描いた。小学校の2年生くらいの時に年賀状になんとなく描いた置物のようなシルエットに色をつけたウサギの全身像。小学校の低学年の頃、写生大会がありそこで描いた畜産農家の放牧場?。子供の頃からもう時が経ちすぎてレイヤーを数多く重ねたようにのちに重ねたものの下にあるものほどどんどん薄まってしまい、当たり前だと思うが鉛筆やクレヨンでグルグル描きをした記憶は残っていない。

記憶があるのはハッキリとした形を写そうと描いていたこと。子供の頃の私にとって描くことは写すことだったのだと改めて感じた。記憶に残るあの頃の自分にとって描くことは理解での観察と同じようにしっかり見て写すということだった。特に絵を習ったこともなく、図鑑ばかり見ていた私にとって写すということ以上に何も感じられずそれが全てだった。、ただ一生懸命見てそれをそっくりになるように一生懸命写すということがそんなに簡単ではなく我を忘れて没入することによってようやく出来上がる。そんな没入する行為がその他のことを全て忘れられるような自分にとって迷うことはない素晴らしい時間だった。高校を出て絵を勉強し始めて初めて絵を描くということが写すのみではないことだということを知った。でもそんな我を忘れて夢中になれるという時間がとても気持ちよくてずっと描いていたくなったことは覚えている。


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