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連続テレビ短編ドラマ「峯山みどり」=節約の最前線=

「謙太、皆勤ヲ断念ス」

純名かほり、24歳、既婚。さっさと結婚したものの、夫のワンルームに転がり込んで、しばらく新居を決めかねていました。この度やっと気に入ったマンションを探し、引っ越すことになったのです。引っ越し先は、なんと真向い。引っ越し業者を頼むまでもないと、姉の峯山みどりさんに白羽の矢をたてました。
みどりさんは、かほりさんのために金曜日に有休をとりました。週末3日間を妹の引っ越しに使うことにしたのです。職場の隣の席のさ佐々木が「どうして有休をとるのか」としつこく聞いてきます。みどりさんは、妹の引っ越しの手伝いであることを話してしまいました。すると佐々木は、「大きな荷物は俺に任せてよ。」と力こぶを見せつけてくるのです。みどりさんは、こいつに土曜日の力仕事はすべて任せようと、「佐々木さん、ぜひお願いします。」と頼むことにしました。

そうして今、佐々木は、かほり夫妻の新居の玄関の前で、チェストを抱えているのです。
「みどりさん、これはどこに置きますか?」
「それはここに一旦置いといて」

みどりさんは、かほりさんに、家の家具の配置を一任されています。こういった時の姉みどりさんの能力はピカ一であることを知っているかほりさんは、夫にも「姉さんに口出し無用」ときつくお達しをしていますした。
ところが、今日のみどりさんはいつものように、シャキッとしていません。
その理由は、かほりさんの夫の職業にあります。彼は、建築デザイナー。「私の家具の配置が気に入るかしら」とああでもないこうでもないと、逡巡しているのです。

「僕に任せて」と言ってしまった以上、佐々木はみどりさんの右往左往にお付き合いするしかありません。はぁはぁ、ぜぃぜい。みどりさんは気づいていませんが、かほり夫妻は苦笑い。

「あのチェスト、やっぱりこっちがいいわ。」
「それで決定ですか?」
「置いてみないと、わからないわ。とりあえず、こっちに置いてみて」
「・・・はい」

"節約スペース活用法"
限られた空間を最大限に活用し、住み心地と機能性を向上させるための工夫。
壁面収納の活用: 高さを活かした壁面収納を取り入れることで、フロアスペースを広く使うことができます。壁面収納は、本棚やキャビネット、壁掛けフックなど様々な形で活用可能です。
上手な間仕切り: 一部屋で複数の機能を持たせるために、間仕切りを上手く活用します。例えば、カーテンやパーテーションでリビングと寝室を分けたり、棚を間仕切り代わりにすることで部屋を見た目に広く見せる効果もあります。
コンパクトな家電の選択: 家電も一つのスペースを占めるため、コンパクトな家電を選ぶことで省スペース化を図ります。例えば、2口の小型IHクッキングヒーターや、洗濯機と乾燥機が一体型のものなどです。
マルチファンクション家具の活用: ソファベッドや収納付きテーブルなど、一つの家具が複数の機能を果たすマルチファンクション家具を選びます。これにより、物の数を減らしてスペースを節約し、必要に応じて家具の機能を切り替えることができます。

「あ、やっぱり、この向きの方がいいわ。佐々木さん、ベッドの向きを変えて」
「ベッドですか?そうするとこのテレビも動かさないとむりじゃないですか?」
「佐々木さん、呑み込みが早いのね。そう、そのテレビの配置を変えることが重要なのよ。佐々木さんも"節約スペース活用法"の達人ね。というわけで、お願いします。」
「・・・・は、はい」

みどりさんが巧みに家具を配置し、新居が一気にスタイリッシュで機能的な空間になりました。かほり夫妻は、みどりさんをほめたたえます。佐々木は、柱をささえに立っているのがやっとのようです。
引っ越しが終わりました。みどりさんとかほり夫妻と、へとへとの佐々木が一緒に新居のリビングでくつろいています。みどりさんが自家製の節約ディナーを振る舞います。その美味しさと、みどりさんのエプロン姿に佐々木は大感激。

佐々木が帰宅をするとなったとき、みどりさんが紙袋を渡しました。「家に帰ってから開けてね」と意味ありげ。
佐々木は、疲れた体でありながら、スキップするように軽やかに笑顔で帰っていきました。

佐々木は律儀にも家に帰ってから早速紙袋の中身を確認しました。
そこには、箱が二つはいっていました。
一つは、みどりさんお手製の梅酒でした。グラスに氷をいれ注ぐと、それはきれいな琥珀色。そして一口、甘酸っぱい、そうまるでそれは「恋の味」。
佐々木は、感動しきりです。
そしてもう一つを開けてみました。それは、かほり夫妻のジグソーパズル。引き出物は、まだ余っていたようです。
「これを俺にどうしろと・・・」
それでも、幸せいっぱいの佐々木なのでした。

その佐々木のおかげもあって、引っ越し作業は、日曜日を残して終わってしまいました。
みどりさんは、日曜日をのんびりと過ごし、週明け元気に出社しました。
佐々木が欠勤するという知らせがありました。「どうしたんだろう」と思っていたところ、課長が「佐々木は筋肉痛で体中が痛いから休ませてくれだと。あいつのことだから週末どこかで遊びまわっていたんだろう。」と少し不機嫌そう。
佐々木は、欠勤なんてほぼしないのに、一日休んでこの言われ様。普段の行いの賜物です。

みどりさんは、少し悪いかなと思いつつも、言い出せませんでした。ランチのころには、その事はすっかり忘れてしまいました、とさ。めでたしめでたし、くわばら、くわばら。