エオランデ:外伝 - 最深部の闘い
闇が広がるダンジョンの最深部。壁から滲む湿気と、遠くで聞こえる水滴の音が、緊迫した空気を一層高めていた。エオランデは弓を構え、弦はキキリと音を立て張り詰めていた。その隣にはダンが立っていた、剣を握りしめ、目を細めて前方の闇を凝視していた。
「来るぞ、エオランデ。」
ダンの声は低く、しかし確信に満ちていた。エオランデは頷き、心の中で狩猟の神に祈りを捧げた。神々の加護など求めない、ただ一矢、敵の心臓に届けと。
闇が動き、その中から巨大な影が現れた。このダンジョンの主、その名もゴルガス。恐ろしいほどの大きさ、鱼のような目、そして鋭い爪。それは多くの冒険者たちの命を奪ってきた存在だった。
ダンは一歩前へと踏み出し、剣を振り下ろした。その刹那、ゴルガスの爪がダンの剣と交錯する。火花が散り、闇が一瞬明るく照らされた。
エオランデはその瞬間を逃さなかった。矢を限界まで引き、放った。矢は闇を切り裂き、ゴルガスの体に突き刺さった。しかし、それだけでは倒れない。ゴルガスは怒りに満ちた唸り声を上げ、ダンに襲いかかった。
「今だ、エオランデ!」
ダンの声に応え、エオランデは再び矢を放った。今度は矢はゴルガスの目に命中した。怒りと苦痛でうなるゴルガスがよろめいた瞬間、ダンは全てを賭けた一撃を放った。
剣が闇を切り裂き、ゴルガスの体を貫いた。重々しい音と共に、ゴルガスは倒れ、闇が静まり返った。
「やったぞ、エオランデ。」
ダンは笑顔で言ったが、その笑顔はどこか寂しげだった。エオランデは弓をしまい、ダンの方へと歩み寄った。
「ありがとう、ダン。けりはついたわ。でも、これは終わりじゃない。新たな冒険が待っているわ。」
「そうだが、エオランデ。なぜ君はエルフなのにそれほど生き急ぐ?その前に一息つこう。」
二人は笑い合い、ダンジョンの出口へと向かった。しかし、その胸の中には、これから先の未知への期待と、過去の重みが共存していた。それでも、エオランデとダンは前を向き、新たな冒険へと足を踏み出した。
闇の閉じる音が背に聞こえたが、二人の心には明るい光が灯っていた。それは冒険という名の光、未来へと続く道を照らす希望の光だった。