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連続テレビ短編ドラマ「峯山みどり」=節約の最前線=

「ジグソーパズルの深い味わい」

峯山みどり、26歳、独身。彼女の趣味はジグソーパズル。

みどりさんのジグソーパズル趣味を説明するのは、少し面倒だ。ジグソーパズルなんてくみ上げたら、飾るか、二、三度くみ上げて、程度のものだろう。
ところがだ、みどりさんは一風いや、七風くらい変わっている。

まぁ、まずは普通にくみ上げるのだが、その次の瞬間から普通じゃない。
テーブルの上でくみ上げたジグソーパズルをスライドさせテーブルの端に至ってもとめない。ジグソーパズルは、ぱらぱらとテーブルの下に少しづつ落ちていく。
パーツが一つ一つばらけて落ちるその様を見ているとき、みどりさんはニヤニヤする。もう、たまらなくニヤニヤする。すべてが落ちてしまうと、その灌漑をもう一度味わいたくて、またくみあげる。
そしてまた、ぱらぱら、ニヤニヤ。

もちろん、だんだんなれていくと、ぱらぱらまでの時間が短くなる。すると、ニヤニヤの味わいが浅くなる。
で、裏返すのだ。裏返すと、今までのパズルはなんだたんだろうというくらい難しくなる。難しくなるがゆえに、ぱらぱらがたまらなく待ち遠しくなり、そしてニヤニヤの味わいが深く深く深~くなる。

もはやパーツにGPSがついているような、その位置にきっかりに置かれていく手さばきは、見事としかいいようがない。
みどりさんは、このパズルを究めたと判断し、ぱらぱらニヤニヤをせずに飾ることにした。十分もとはとれている。みどりさんのような客ばかりなら、パズルメーカーは商売あがったりだろう。

裏返しなのて、そのままのりをつけ、コルクボードを上から押さえつけるだけ。のりが乾いて、持ち上げるとそこには、妹・かほり夫妻の写真が。かほりさんの結婚式の引き出物にもらったジグソーパズルだったのです。

「たくさん包ませられたのよ。値段分、遊び倒してやったわよ!」
妹に結婚は先を越されても、ここでは勝ち誇るみどりさんなのでした。