見出し画像

彼は、ネプチューンズ・エッジの暗部に生きる男だった。幸運にも「入城」の機会を得たものの、運命は彼を「忘却区」と呼ばれる放棄された区画へと導いた。ネプチューンズ・エッジでは金がすべてを決める。彼は人生を賭けてその大勝負に出たが、結果は空回り。何の憎しみもなく、何の主張も持たず、虫も殺さぬ臆病者なのにも関わらず、彼はテロ組織の自治区に流れ着いただのだ。

テロ組織の中でも、彼には一つだけ心の救いがあった。それは、新鮮な食料の存在だ。テロ組織は、ネプチューンズ・エッジの豊富なエネルギーを利用し、「忘却区」に農園を作っていた。農作業は、彼にとって天職そのものだった。

「明日も静かな一日でありますように」と、彼は収穫の手際を見せつける。組織の中でも彼の収穫の腕前は随一だ。彼は、自分が育てたトマトを頬張りながら、穏やかな日々を願った。何も変えることができない、何も訴えることもない。しかし、彼には土を耕し、作物を育てる、その小さな世界があった。

「明日も静かな一日でありますように」と彼は今日もつぶやく。その言葉は、彼の内なる平和と、外界の混沌との間の線引きだった。彼は、忘却区の一角で、自らの世界を守り続けている。