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春の日差しは、森を優しく照らしていた。エオランデは樫の木の下で立ち止まり、地図に描かれた指紋が示す場所を見つめた。土の上には石が並べられていた。それは一見すると自然に転がっているように見えたが、よく見ると何か意味を持って配置されているようだった。

「ここね。」彼女の手は土を掘り始めた。やがて、小さな箱が姿を現した。その箱を開けると、簡素ながらも美しいリングが収められていた。リングの内側には、細い文字で「僕は君を永遠に愛す」と刻まれていた。

エオランデの目に涙が浮かんだ。「今更、何よ。命まで賭けてもったいぶって。」と、彼女はつぶやいた。その言葉と共に、涙がほほを伝い、リングに落ちた。

心の中で何かが解き放たれたように感じた。まるでダンの腕の中にいるかのような、心地よい暖かさが彼女を包んだ。

「私もよ、ダン。」エオランデはそっとリングを指にはめ、空を見上げた。春の日差しは、彼女の心にも優しく温もりを届けた。

「それでも春は来るね。」と、彼女は微笑んだ。その笑顔は、長い冬を越えて訪れた春のように、新しい始まりを感じさせた。そしてエオランデは、再び旅の道を歩き始めた。新たな出会いと未来に向かって。