連続テレビ短編ラブドラマ「峯山みどり」=節約の最前線=
「ラブストーリーは予告なく」
佐々木謙太、32歳、独身、月曜日、一日遅れの筋肉痛で目覚めました。なぜか皆勤の目標の事など微塵も考えず、会社に欠勤する旨の連絡をしました。
この痛みの原因は土曜日の引っ越しの手伝いではあるのですが、なぜかみどりさんの事が頭から離れません。今までだって彼女の事を考えることはありましたが、それよりも深く鮮明に彼女の顔が浮かぶのです。しかし、その彼女の顔は冷ややかで自分を疎ましく思っているように思えました。そして、彼女に対する恥ずかしい言動や行動の自己反省が始まったのです。
佐々木は、みどりさんに対してなれなれしすぎていたこと、下品だったりつまらないギャグだったりと彼女を困らせていたことを後悔しました。それが身体中で感じているこの痛みの原因だと思えるのです。
佐々木は自分を変えることを決意し、みどりさんへの想いをきちんと理解してもらうための計画を立てました。適度な距離感を保つ事、下品ではない言動、つまらないギャグをやめよう、と。そういえばみどりさんは、節約家だったなぁ、そのみどりさんから節約の基本を学ぼう。今更、教えてくれるかどうかわからないけど。
佐々木の 体の痛みは一日で消え、新たな気持ちで火曜日を迎えました。自分が男として一皮むけたことを感じ、鏡の前の自分が凛々しく見えました。
そして出勤、みどりさんに「峯山さん、おはようございます」とできるだけ上品な態度で声をかけました。佐々木は、彼女の家族と過ごした週末の経験について話し、それがとても素晴らしかったと感謝の気持ちを示しました。
「妹さんご夫婦、とてもよい雰囲気でしたね。峯山さんの家族関係がうらやましく思えました。あの日の夕食も、いただいた梅酒もとてもおいしくて、本当にありがとうございました。素敵な一日でした。」
それを聞いたみどりさんが驚いたような顔をした事で、佐々木の頭の中でいろんな思いが渦を巻きました。あまりうまく伝えられなかったかな、突然の変化だもんな、うまく気持ちを伝えるのは難しいな、瞬時にいろいろな思いが頭を巡るのです。
佐々木は、みどりさんの返事を待たずに席に座り、そそくさと仕事を始めました。どうしていいかわからなかったからです。
隣の席に居座り続けているのも、気まずいな、反省しても取返しつかないじゃないか、心機一転とおもったのもつかの間、落ち込む佐々木でした。