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猫にホステス・・・ちょっちょこちょい

昔むかしらしからぬところに
おじいさんとおばあさんが暮らしていました。
ふたりとも激ヤバのおっちょこちょい癖があり
よくここまで生きてこられたものだと
食後のティータイムはその話題で持ちきりです。

ふたりは爪に火をともすような年金暮らし。
時間はたっぷりある、とはいえ
いつ人生の終わりを迎えるのか
わかったものではありません。

そこで、ヒマの過ごし方を手探りし
考えをこねくりまわした結果
おじいさんは趣味の園芸をフルに生かし
家庭菜園で季節の野菜を育てることにしました。

おばあさんは植物に触れると
それらすべてが枯れてしまうという
えげつない呪いがかかっているので
おじいさんのお手伝いはできません。
という言い訳めいたことを述べたのち
猫と音楽とお笑いがあれば
それでいいです。。と自己肯定しました。

そんなある日
おじいさんは いつものように
庭で草刈りや摘心をし
おばあさんも いつものように推し活で
新宿ルミネに向かいました。

ほんの少し甘い香りがする
そんな風がおじいさんの頬をなでました。
15年前にオンリーワン植樹した桃の木。
果実の重みで枝がたわむほど
特大のソレが風に揺れていました。
バーミヤンの看板がこんなところにまで
昨夜の強風で飛んできたのかしら?と
おじいさんは何度もまばたきをしましたが
それは本物の桃、本桃でした。

おばあさんの帰宅を待ちながら
本桃を眺めていると
おじいさんはあることに気がつきました。

「猫のご飯をあげていなかった」

これは死活問題です。
おばあさんの分身ともいえる6頭の猫。
桃がどうこうのくだりで言い逃れなど到底無理です。
あたふたしているとおばあさんからLINEがきました。

「蘇我で内房線に乗り間違えた。遅くなるぜよ」

いったん心をおちつかせ
おじいさんは猫のごはんを用意しました。
追加で御不浄の清掃にも とりかかりました。
結局、おじいさんは眠気に耐え切れず布団に潜り込み
帰宅したおばあさんは
玄関に置いてあった桃をまたぎながら
コントの小道具かしら?と
微塵も驚愕せず、床につきました。

翌朝、ふたりがかりで桃を真っ二つに割り
中から出てきたのは
特大の皺くちゃな種でした。
生まれたての桃太郎ってこんな感じよね~
赤ちゃんってこんな感じよね~
と、テンションをむりやり高めに押し上げて
名前を 種太郎 と名付けました。

種太郎はアボカドにジョブチェンジし
今も がんばってま~す。
おしまいおしまい。

著者 じゃむのアレ

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