#7 クリスピードーナッツ(2月エッセイ)
「自分の機嫌は自分で取る」
そんなのわかっちゃいるけど、難しいことだ。
この前、仕事の帰りに、クリスピードーナッツに寄った。
断っておくが、私は”まだ”社長夫人でもなければ石油を掘り当てたわけでも、宝くじを当てたではないので「ふと、ドーナツでも買うかぁ」と安易な気持ちでお店に入ることを決めたわけではない。
ここ最近クリスピードーナッツが食べたいいい!!!衝動(名前はまだない)に駆られることが多々あったが、営業時間が過ぎていたり、近くにお店がなかったりで食べられないことが続いた。
さらに、その日はかわいそうなことに仕事で上手くいかないことがあって若干落ち込んでいたのだ。そんな時に視界にはクリスピードーナッツ屋さんが入ってきた。私から探していたわけではない。クリスピードーナツ側が視界に入ってきた。「僕はここにいるよ」と言わんばかりに。いやむしろちょっと言っていたかもしれない。落ち込んだ時に、下を向いたばかりいたらダメだよと言われる意味が分かった。もし今回私が落ち込んで下を向いていたらクリスピードーナツを見つけることができなかった。危ないところだった。
私はドーナツが好きだ。ドーナツには夢があると思う。
想像してみてほしい。でもまだ生後20数年なので、ドーナッツの感動を上手く言語化できていないことは多めに見てほしい。(エッセイ#100を達成することには、もう少し言語化能力が発達していることを願って)
店に一歩入ると、あたたかさの中に優しい甘さが潜む空気に包まれる。
それぞれに魅力溢れるキラキラしたドーナツたちに囲まれて、
悩んだ挙句「君に決めた!」と好きなドーナツを選ぶ。
心に決めた瞬間そのドーナッツはもう我が子のように愛おしく思える。
嗅覚的にも視覚的にも幸せ空間で、社会人になった今も余裕で心が躍る。
同じ要領でもちろんパン屋さんも大好きだ。
クリスピードーナッツに入った弁解が長くなったが、そんなこんなで
心の中は、ホップステップジャンプ♪という気分であったが、
顔は真顔(ドーナッツ屋さんに入ることなんて別になんとも思っていませんよという表情)で店に入った。
扉を開け、いや自動ドアだったので、扉が開き、
至極の空気を存分に肺に取り込もうとすると
「えぇ!!もうないじゃん!」とまぁまぁ大きめの声が聞こえた。
店が閉まる30分前くらいだったためドーナッツも残りわずかだったのだ。
それで私の前に店に入った2人組の20代サラリーマンが若干ぶー垂れていた。1人は口をでて抑え、驚きが隠せないという表情でクリアケースの中のチョコがかかったドーナツ(4個)を指しながら「え、もうこれだけしかないの、、?」と言って、もう一人は「オリジナル(お砂糖だけがかかったドーナッツ)が食べたかったんだけどなー」とブツクサ言って、店員さんは終始頭を下げていた。1人が「もうこれでいいから2人で2個ずつ買う?」と相談してたけど、もう1人が「いやオリジナルじゃないならいい」と言って帰って行った。
待っている間、イヤホンをして、携帯をみていたけど神経は完全にぶー垂れサラリーマンに持ってかれていた。
私の番になって、チョコがかかったドーナッツを1つ買った。
さっきまで頭を下げていた店員さんは、すみません。もう数が少ないのですが、、と前置きをしながらも笑顔で接客してくれた。逆にこっちがぶー垂れてもいいのに。プロやなって思った。
別に意味も効力もないけど、私もなるべく笑顔で注文した。
ドーナッツを買えたことは嬉しかった。
でもそういう場面に遭遇すると考えてもどうしようもないことをつい考えてしまうのだ。
もう遅い時間だから、ドーナッツが少ないことなんて当たり前に想像できることだ。買いたかったのに買えなかった客がいることは、客の需要を見通せてない店側の落ち度だ!ってことなのかな。でもどれくらい売るかなんてもーっと偉い人が決めてるだろうし、店が閉まる直前にあと少しってことはその計算はきっと間違っていないだろう。これで店側がもっと作成量を増やして、廃棄が増えていったらSDGsは一生進まないし地球温暖化も解決しないじゃないか。そうなったらちゃんとちょっとでも責任を感じてくれるんだろうなぁ!
でもふと、手元にあるドーナッツを見た。
そうだ、私はこの子を自分のご機嫌のために買ったのだ。
お兄さんたちが4個全部買っちゃったは、私はこの子を買うことはできなかった。お兄さんたちも仕事で疲れてご機嫌のためにドーナッツ屋さんに入ったのだろうか。そう思うと、ご機嫌になれずに可哀想だ。
ご機嫌のハードルは低いほうがいい。私だって実は、オリジナルドーナッツが良かったけど、オリジナルとチョコドーナッツのご機嫌のハードルはそこまで変わらないだろう。
チョコドーナッツもすんごい美味しかった。うますぎて泣くかと思った。
お兄さんたちを食べていたらうますぎて泣きそうになってたかも。
一緒に「うますぎて泣きそう」を体験したかったな。
クリスピードーナッツ、私はおかげさまでご機嫌になれた。
そんな感じで自分の機嫌を取るものをたくさん見つけられたらいいな。
出来ればハードルはずっと低くして。そのためには感度を高めなきゃだけど。今度はオリジナルドーナッツを食べることを楽しみにもう少しご機嫌でいられそう。
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