掌編怪談「すれ違い」

狭い道を息子と手を繋いで歩いていると、向こうから人が歩いてきた

すれ違うために息子を先導するように前を歩く

何事もなくすれ違い、隣に並んだ息子の顔をみる

見知らぬ少年が私と手を繋いで歩いていた

咄嗟に手を振り払い周囲を見渡すが、その少年以外に人がいない

一本道なのに数秒前にすれ違った人すらいなくなっていた

何より息子の手を放していない

訳も分からず我が子の名を叫ぶ

どうしたのママ

何故かその少年が返事をする

あなたは私の子じゃない

思わず声を荒げると不気味な笑みを浮かべ、少年は走り去った

そこで目が覚めた

どうやら私と息子はあの狭い道で通り魔に刺されたらしい

あれは夢だったのか

今では私も息子も傷が治り、日常生活を送っている

息子がたまに夢でみた少年と同じような不気味な笑みを浮かべる事があるが、考えすぎだろうか

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